僕は口笛が吹けない…… | 榊邦彦 OFFICIAL BLOG new

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けれど一方で、言葉や愛がまったく立ち向かうことのできない不安や困難も、
また、存在しないのではないか……僕は、今そう思っている。
『100万分の1の恋人』榊邦彦(新潮社)

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 今日、ひょんなことから、「口笛」の話になった。

 僕は口笛が吹けない。
 小さい頃、ずいぶん練習したが、結局、吹けるようにならなかった。
 
 その代わりにといっては変だが、舌を利用して「カエル」の声のような変な音は出せる。
 〈全然「代わりに」なっていない……〉

 小さいころ通っていた床屋さんのオジサンが、飽きないように僕に教えてくれた。
 
 幼稚園のころ、この「カエルもどき音」を出していたところ、そのころ一番、仲の良かった友人が、
「僕もできる」
 と言い出した。
 なるほど、確かに、おんなじ音だ。

 なんだか、二人して、運命の出会いのような気がして、それ以降、いよいよ大親友になってしまった。
 
 お互い何かピンチになったら、この「カエル音」を出して、相手に連絡しようと約束した。
 約束しながらも、「聞こえるかなあ」と心配になったりもしていたが……。

 今は、別にピンチというわけではないが、久しぶりに「カエル音」を出してみる。

 あいつに、聞こえたかなあ。
 聞こえるはずないか。

 いい気になって続けていたら、ベロが疲れた。