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今年は全国的に春の訪れがゆっくりのようですが、東京では木々に小さな新芽が出始めています。

 

まだ桜の便りを待つ日々なのに、なんだか気持ちが先走って、5月の新緑の森が心に浮かんできました。

 

少し季節を先取りして、こんな絵本はいかがでしょう。

 

 

「ようこそ森へ」

村上康成 

徳間書店 2001年

 

 

 

 

 

お父さん、お母さん、男の子の家族らしき3人が森にキャンプにきて帰っていくまでを描いた絵本です。

 

1泊2日のキャンプの、平穏なお話。

 

なのに、読み始めるとぐっとお話に引き込まれます。

 

理由の一つは、絵の色彩と構図です。

 

表紙から最後まで美しいグリーンがいっぱい。

 

それは、細やかに塗り分けられたものではなく、むしろ子供が色紙を貼ったように、ぺったりと平板に塗り尽くされています。

 

その平板な色の中から、草原の草いきれ、森の木々の葉ずれの音、木漏れ日の煌めきが感じられて、なんだか魔法のよう。

 

途中で黒を基調とした夜の場面があることも、グリーンの場面の瑞瑞しさを一層引き立てています。

 

(夜の場面で描かれる満天の星空も、それはそれは美しいのです。)

 

加えて、構図が面白い。

 

この絵本には、3人のほかに重要な登場人物(もしかしたら主人公?)としてカケスが出てきます。

 

3人のキャンプのようすを、近くから、遠くから見守っているカケス。

 

カケスの視点から見た場面も多く、構図の変化が読者を飽きさせません。

 

短いお話ですが、森はなんて豊かなんだろう!なんて爽やかなんだろう!という気持ちが湧き上がります。

 

カケスが繰り返す

 

「どうだい、いいところだろ」

 

「どうだい、いいところだろう」

 

ということばに、本当にそうだね!と頷きたくなります。

 

自然の中で一日を過ごし、すっかりリフレッシュされる感覚から、シュルヴィッツの名作「よあけ」を思い出しました。

 

 

 

「ようこそ森へ」は、イタリア・ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。


アウトドア体験から自然の美しさ、大きさを感じ、大人も子どもも楽しめる一冊です。

 

作者は「水際族」を自称する自然派アーティスト村上康成さん(1955年生まれ)。

 

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