「あくたれラルフ」ジャック・ガントス作 ニコール・ルーベル絵 石井桃子訳 童話館出版 1976年 定価1500

 

 

絵本専門士2人のユニット、sakaguraです。働く大人にもぜひ絵本を届けたいと願い、活動をしています。

 

仕事をする中で、相手に合わせて感情を抑制したり、コントロールしなければならない働き方のことを、社会学では「感情労働」と言っています。


例えば学校の先生、保育士、看護師や介護士、客室乗務員など様々な職業があげられているのですが、先日、保育者に向けて書かれたテキスト(保護者への対応が場面ごとに解説されているもの)を読んでいたら、最後はものすごく疲れてしまい、疲れている自分に驚いてしまいました。

 

やっぱり、時には思い切り感情を爆発(?)させた方がいいのかな、と思うところがあって、この「あくたれラルフ」を手にとりました。




ネコのラルフは「あくたれ」で、飼い主のセイラや家族の嫌がることばかりしています。セイラの人形をひきちぎったり、ブランコの枝を切ったり、サーカスに行けば芸人を突きとばしたり・・・

次は何をしでかすか心配で、ページをめくるのが不安になるほど。


とうとう、ラルフはサーカスに置き去りにされてしまいます。後半はこれでもかというほど、ラルフの苦労話が続き(笑)、セイラに再会することができて「もう2どと あくたれは しまい」と思うのですが、最後はやっぱりあくたれてしまうのです。

 

原題のrotten ralph(堕落した、呆れたラルフというような意味)を「あくたれラルフ」と訳した石井桃子さんのセンス。ほんとうに素敵です。


そして、あくたれの限りを尽くすラルフとそれを受け入れるセイラの姿を見ていると、なんだかスッキリしました。大人の私たちはそうそう「あくたれ」るわけにはいかないのですが、自分の感情を解放するって気持ちがいいものだと思います。


作者のジャック・ガントスは1951年、アメリカに生まれ、現在は大学で児童文学を教えながら絵本を発表しています。見るからに「あくたれ」で、けれど愛すべきラルフを描きだしたニコール・ルーベルは1953年、アメリカ生まれの画家。二人は大学時代に出会い、この絵本が生まれました。