お久しぶりです。

気づいたら、前回の更新から

ほぼ二ヶ月たっていて、びっくりです。


現在、群馬県吉井町一帯に伝わる民間伝承

謎の豪族『羊太夫(ひつじだゆう)について

まとめの文章を書いています。

その分、ブログの更新が滞ってしまいました。





縄文信仰にあたる『諸(もろ)について

書き終わりました。「諸(もろ)」は「室(むろ)

に通じるのですが、群馬県の吉井町に土着して

川内村の名主を務めた、私の先祖は

初代が、(もろよし)という名前でした。





5代目(もろやす)、6代目(もろとも)

といった具合に、代々受け継がれる

通字(とおりじ)とまではいきませんが

一族として、「諸」の字を大切にしていました。



  

『諸(もろ)』の文字がもつ本当の意味とは?


この「諸」にいったい、どのような

意味があるのか、考察してみました。





その書いた文章の中で
「三輪(ミワ)という言葉は
(個人的な考えとなりますが)

永劫的な「輪廻」「よみがえり」と

規定しました。


「よみがえり」とは「黄泉帰り」。

黄泉の国(あの世)より、帰還することですが


現在の私たちがもつ「あの世」のイメージは

いわゆる地獄など、少なからず仏教的な影響が

あると思います。





  

古代、『蛇』『祖霊であった』という驚き!


対して、民俗学者の吉野裕子氏は
著書『日本人の死生観』(河出書房新社)の中で

(みなさんとても驚かれると思いますが…)

古代人の他界観について、古代の人びとは

あの世の主を、巨大な「蛇」認識していた

であろうとします


古代のエジプトにおいて、蛇は神でしたが

吉野氏は、世界の各民族に共通する

祖霊としての蛇神を指摘し


縄文土器にあふれる蛇の文様などからも

古代の日本人も蛇を深く信仰しており





身の回りのさまざまなものの中に

蛇の姿を見て(科学以前の古代人の話です)

樹木・山・川などを、崇(あが)め信仰し


現世はまさに、であふれるばかりに

なっていたと記します。


そのあふれる蛇信仰の痕跡は

現在も私たちの周りに、見ることができると

思います。私たちが水を飲むときに使う

蛇口という名称、土俵の上に存在する

そして、しめ縄など…


(吉野氏は、しめ縄を交尾するの姿としています)



現世は他界の投影であり、他界の主が

巨大な蛇であるから、現世に蛇があふれる

のだろうと、古代人は考えたというのです。

(『日本人の死生観』吉野裕子著 河出書房新社 引用参考)



考古学季刊誌どるめんの編集を務められた 

田中基氏も、中世諏訪神社上社の神事について


ご神体の「蛇体(ミジャグジ)

当時龍穴と考えられた、諏訪湖の穴の

むこう側の他界から、訪れてきた小蛇であり

「死者が昇華して祖霊となって他界で

生きている姿が蛇体というのである。」

と記しています。

(『縄文のメドゥーサ』田中基著 現代書館)


とくに田中氏は、この著書の冒頭で

「ミジャグジ」研究に、大きな足跡を残した

今井野菊氏もとを訪ねたときのことを記し


 


「たいへん面喰らったのは、いままで考えて

 いた神社神事に対する知識がほとんど

 通用しないことであった。いままで

 もっていた先入見を捨てて、サラの形で

 対応しなければならなかった。」


と述べられています。世界中の遺物が

かつて蛇は祖先神であったことを伝えて

いますが、この一文は衝撃を受けました。


伏羲(ふくぎ)女媧(じょか)は中国神話に

おける伝説上の帝王ですが、夫婦あるいは兄妹

ともいわれ、下半身は螺旋上に絡まる体で

描かれることがあります。中国の祖神もです。





他界のといえば、長野県から関東にかけて

「ちかた」「ちかつ」「ちかと」「ちかとう」

という名称の社が、多く存在します。


名前のブレもさることながら

(この点から非常に古い起源をもつことがわかります。

 スサノオなど、神名の漢字表記の多様さは

 その起源の古さをはかるバロメーターになります。)


祭神も多様で、これらの社の実態が

何なのかという謎が生じるのですが

私は、社名に含まれる「ちか」という部分から


地底(他界)に棲まう巨大なを祀る社が

その起源ではないかと考えています。





長野県を中心に関東や近畿にかけて分布する

民間信仰の神が「ミジャグジ」さまですが


現在は廃絶しましたが、かつて諏訪社に

「御(おむろ神事」という

特殊な祭祀が存在しました。


半地下式の住居、御室に

大祝(おおほうり)・神官が、蛇の形状をした

ご神体「ミジャグジ神」とともに籠(こ)もりを

行うという神事で「室(むろ)」に籠もる

行為は、妊娠の比喩ではないかと考えています)





この祭祀において、「ミジャグジ」神と

「ソソウ神(白蛇の姿をしているとも)との婚姻が

行われるとも、いわれています。





□古代の『性についてはこちら』□

古代の性について書くにあたり、わいせつと

思われることは、本意ではないとご理解下さい。





  

『ミジャグジ』神と『ソソウ』神の関係とは?


「そそ」には、女性の陰部の意があり

ソソウ神は、女性神との説があります。


よく「そそうする」といいますが

「そそう(粗相・麁相)」は、失敗的な意のほかに

飾らない、ありのままという意にも通じ


「ソソウ」という神名には

籠もり(妊娠)・出産という

きわめて重要な、古代生殖祭祀の痕跡が

残されていると考えています。




現代の私たちは、妊娠・出産という

一連の科学的な原理を知っていますが

科学以前の古代において、人の生誕ほど

不思議なことはないでしょう。


女性のお腹に生命が宿り、無から有を生じる

奇跡を、神事と見立てても不思議ではなく





この新たな命を迎え入れる

(黄泉帰りを完成させる)ための祭祀…

その祭具や行う場所が、おそらくは

「石棒」や「ストーンサークル」であり


その前提を成す思想として

女性のお腹が、蛇的な世界(他界)

つながっている(と信じられた)ことが

挙げられると個人的に考えています。





「ちかた」「ちかつ」「ちかと」「ちかとう」

という、名のつく神社の謎を解く鍵は


かつて存在した、「御輪(ミワ)という

女性が導く輪廻・循環の生殖祭祀にあると

考えています。





さらに古層の蛇信仰には

「酒」が関係すると考えています。


奈良県桜井市にある、日本最古ともいわれる

『大神神社(おおみわじんじゃ)の祭神は

毎夜、「ヤマトトトヒモモソヒメ」のもとに通う

の姿を取る「大物主神(オオモノヌシ)」ですが





同時に大神神社は、「酒」の社としても

有名で、同社の神体山を三輪山(みわやま)


別名を「三諸山(みもろやま)

「三室山(みむろやま)」といいますが

「みむろ」とは「酒のもと」ともいわれています。





『諸』の文字には、「蛇」「酒」「女性」「三輪」

そして「月」「水」といった、古代人のもった

世界観が反映されていると、考えています。


ドイツ日本歴史学者、ネリー・ナウマン氏

世界中で散見できる、「月」「水」「蛇」といった

先史時代から続く象徴関係が、日本でも

見ることができると、著書『生の緒(いきのお)

の中で記しています。





この文字使用以前のきわめて古い

プリミティブ(原始的)な水平循環型世界観


『記紀』が記す、「天」「地上」「地下」

という垂直型の世界観の下に、隠されて

しまった(超克された)のではないか…

そんなことを書きました。





そしてそれは、同様に『記紀』が語る

大地母神的な存在である、イザナミが

黄泉の国に隠れ、黄泉の主宰神となり

黄泉津大神・道敷大神と呼ばれるように

なったことと、リンクしていると思います。

   

  

『アワ』の意味と『アワシマ信仰』とは?


次は、最難関(と思っているのですが)

『安房(アワ)について、文章作成に

取りかかろうと思っています。先祖は

安房守(アワノカミ)を私称していました。




 


・『アワ』という言葉のもつ意味

・『淡島(アワシマ)信仰』の本質とは何か


ということなのですが…


「アワ」「安房」「阿波」「粟」などと表記

されますが、全国に存在するアワシマ神社の

本社が、和歌山県和歌山市の加太(かだ)にある

『淡嶋神社(あわしまじんじゃ)です。





『淡嶋神社』(和歌山県和歌山市加太116)


 Awashima-jinja, haiden.jpg「wikipedia」


祭神 少彦名命(すくなひこなのみこと)

   大己貴命(おおあなむちのみこと)

   息長足姫命(おきながたらしひめのみこと)






全国に多数、存在するアワシマ神社の祭神は

一般的には、海の彼方常世(とこよのくに)」

(沖縄でいうニライカナイのような国)から

寄り来る『スクナヒコナ』とされています。



その一方で、アワシマ社の中には

祭神をスクナヒコではなく

「淡島神」とするものも一定数存在します。


この淡島神は、住吉大神の妃(きさき)

妻との説があり、アワシマ社そのものが

社子授け、安産、婦人病など、女性に関する

あらゆることに、霊験あらたかな社で

あることから、「淡島神は女神である」

との説も存在します。





この「淡島神=女神」説は

俗説とされていますが、私は必ずしも

そうではないだろうと思っています。


前回、少し書きましたが

(個人的な考えとなりますが)

住吉信仰には、「蛇神」の痕跡があり


大阪市住吉区にある、本社・住吉大社の

三つの社殿の一列の並びは、蛇神の表現だと




その基層には、「女神」(そして「月」という

原始信仰が横たわっていると考えています。


全国のアワシマ神社の総本社、淡嶋神社では

3月3日に、「雛(ひな)流し神事」が行われます。

全国から供養のために奉納された人形たちを

3隻の白木舟に乗せて海に流すという行事で





罪や穢れを流す禊(みそぎ)が、その原形に

あると考えられています。そしてこの禊の神事が

「ひな祭り」の起源ともされていて

この神事に飲むのが、甘や白です。


この世の罪や穢れを流すという点からは

早川の瀬に坐(ま)し、罪や穢れを流し去る

瀬織津姫(せおりつひめ)が思い浮かびます。





「記紀」には、「淡島(アワシマ)」とは

イザナギイザナミ国生みの際に生まれ

子の例に入れず…国土として認められない

ような記述がなされています。



しかしながら、その記述の一方で

全国の海辺にある、こんもりとした小島は

「アワ島」と名のつくことが多く

『殯(もがり)の場ともされていました。


モガリとは、死者を特定の場所に安置して

遺体が白骨化するまで、家族や友人が見守る

古代の葬送儀礼のことです。





ちなみに、「アワ」

「大(オオ)」「青(アオ)などに転訛します。


海辺の小島で、さほど大きくないのに

「大島」という名称がついているのは

本来は、「アワシマ」という名であった

ことが考えられます。


続きます。