前回からの続きです。





前回は


『アワ(カハ)『赤土』





そして『鉄』





一見すると、まったく

つながりの見えない

三つの言葉について


考えてみました。



岡山県津山市の『阿波(あば)

には、たたら製鉄の歴史が残り



一方、茨城県稲敷市にある

『阿波(あば)


古代(現在より海水面が高い時代)

台地と水が接する『島』

ような地形をしていました。



『古代の安婆島(あばしま)』


❊『国土地理院』ホームページより

(現在より海水面を上げて表示しています)


前回の記事の最後に



『アワ』という言葉には
 『水辺』と『鉄』をめぐる

 古代の記憶が隠されて

 いるのではないか?



そんなことを書きました。







さて、今回のテーマは…


『消された女神』についてです。

 

  

・『鉄』と関係する『女神』たち




以前の記事でも書きましたが…



 私は、古代の『鉄』
『女神』との関係について

 とても興味があります。




たとえば


 


鍛冶屋に信仰される

 『金屋子神(かなやこがみ)には

  一部、女神説が存在すること


『石凝姥命(いしこりどめのみこと)

 鏡作りと金属加工を司る女神とされる

 


『媛蹈鞴五十鈴媛』

 (ひめたたらいすずひめ)

 神名に「製鉄」を意味する
 「たたら」が含まれている



などなど…


このように、古代の金属や

鍛冶製鉄をめぐる世界には

ときおり、女性が登場する

ことがあります。





そして、この「鉄」の世界に

新たにもう一人…


私が以前から気になって

仕方がない、女性神が存在します。




『瀬織津姫(せおりつひめ)


です。







彼女は、祭祀の際に神職が

声に出して奏上する祝詞(のりと)…


「大祓詞(おおはらえのことば)

に記載されている、とくに

『水に関係する女神』

として、よく知られています。



この世の罪や穢れを、水の力によって

川から海へと流して浄化する

「祓(はらえ)の神」とされています。






じっさいに、彼女が
「滝」と名のつく社に
祀られるケースは多く


 


『瀧川神社(たきがわじんじゃ)』 
 (静岡県三島市川原谷755-1) 
 祭神 瀬織津姫 
 箱根山からの湧水が流れる滝・川があります。 
 別名「瀧不動」とよばれています。


 


『瀧神社(たきじんじゃ)』

 (岐阜県美濃市乙狩2218)

 《主》瀬織津比売 罔象女命

 創建年代不詳、古い神明帳に「赤瀧明神」とある




急流に坐(いま)
『水の神』という

イメージが強いです。



しかしながら、彼女は

この『水』以外の神格も

有していたのではないか?



今回は、とくに そのような

ことを説く、あるお二方の説を

紹介したいと思います。



二つの『瀬織津姫』像ですね!!




  

・二つの『瀬織津姫』像とは



まずは、神道・古代史研究家

作家である、戸矢学氏の説です。



戸矢氏は、著書

『アラハバキ まつろわぬ神の中で




・『アラハバキ まつろわぬ神』
(古代東国王権は消されたか) 
戸矢学 著 河出書房新社




群馬県の富岡市に鎮座する

上野国一之宮

(こうずけのくにいちのみや)

『貫前神社(ぬきさきじんじゃ)祀られる

『姫大神(ひめおおかみ)の実態は



海人族が奉斎した

「瀬織津姫」である

という可能性を指摘しています。





『貫前神社(ぬきさきじんじゃ)』
(群馬県富岡市一ノ宮1535)




また、武蔵国一宮である

『氷川神社(ひかわじんじゃ)のそばにも



同社と関係性が深いとされる

『氷川女體神社(ひかわにょたいじんじゃ)

が鎮座し、現在の祭神は

「稲田姫命(いなだひめのみこと)」ですが







じつは、同社の背後にも


海人族が奉斎した

『港湾(津)・航海の守護神』

としての「瀬織津姫」の姿

見ることができるのでは

ないかと、書かれています。




❊ 青い記しが『氷川女體神社の鎮座地』です
かつては、埼玉県の奥まで東京湾が
入り込み、舟での到達が可能でした





同社は、『巫女人形』が奉納されています





戸矢氏の考察は、とても鋭く

私自身、驚くと同時に

非常に心惹かれる説です。




  『鉄の女神』という説



そして、もう一説

(以前にも当ブログで紹介させて頂きましたが!)


私が非常に興味深く

感じている説があります。



古代史研究家

安井歓夫(よしお)氏による

『鉄の女神』という考察です。





安井氏は、その著書
『鉄と神社とカモ・ハクチョウ』
(「音読み」の古代史)の中で




『鉄と神社とカモハクチョウ』
(「音読み」の古代史)
安井歓夫 中央公論事業出版





古代の神々の名や地名に残る


『ショウ』


という音に注目されています。




『ショウ』という

「音(音読み)」は


 


『向』『小』『少』『星』『咲』『笑』『照』

『聖』『性』『勝』『正』『昌』『松』『沼』



といった具合に、様々な

漢字に残されていますが






・武蔵国一之宮野神社(おのじんじゃ)』
(東京都多摩市一ノ宮1-18-8)



祭神 
「天下春命(あめのしたはるのみこと)」
「瀬織津比咩命(せおりつひめのみこと)」






安井氏は、この『ショウ』

 という音の背景に



土壌から染み出す

『錆(さび)などの


古代人が重要視した

『鉄』の存在があったのでは

ないかと、記されています。




・土中から染み出した『赤錆』
河川などに流入することがあります







そして、瀬織津姫についても


古くから同神説のある

『向津姫(むかつひめ)との関係や



宮崎県西都(さいと)市の

速川神社に祀られる瀬織津姫を



同社では、昔から

『ショウリツヒメ』

と読んでいる ことなどから




『速川神社(はやかわじんじゃ)』

(宮崎県西都市南方鳥巣183-2)



出典:Wikimedia Commons



『瀬織津姫』=『ショウリツヒメ』


という、古い音の記憶をたどります。



安井氏は、この

『ショウ』=『鉄』という解釈から


瀬織津姫もまた
単なる水の女神にとどまらない


『ショウ(鉄)の姫…すなわち


『鉄の女神』という

古代、彼女が鉄と関わった

可能性が見えてきます。




出典:写真AC



ちなみに


「瀬織津姫」の「瀬織(セオ)」は

「松尾芭蕉(マツオバショウ)」が


その昔

「マツオバセヲ」とも書いたように



『ショウ』=『セヲ』であり



この『セヲ』に『瀬尾』の漢字を

当てたのが、「瀬織津姫」であり



すなわち、『ショウリツヒメ』は

『セオ(ヲ)リツヒメ』であると



安井氏は、解説しています。




  

・『水』と『鉄』 二つの女神像


戸矢学氏が記した

・海人族が奉斎した

『港湾・航海の守護神』



安井歓夫氏が記した

・『鉄の女神』



お二方の考察した

「瀬織津姫」像は


一見、別物のように見えますが






『舟によって水辺を行き交い

 鉄をも運んだ可能性のある海人族』



という視点で、ながめてみると


個人的な見解となりますが…

二つは、必ずしも別物では

ないような気がしてきます。



じつは、私の先祖が暮らした

群馬県多胡(たご)郡川内(かわうち)

の丘陵地の館跡の裏手には

(当ブログで、以前にもふれていますが!)



現在も

『滝の宮(たきのみや)

という、小字が存在しています。






現在は、宅地化されて

かつての『宮』を感じさせるものは

何も残っていないのですが…







『水』『海人(あま)『港』


『鉄』、そして『赤土』



これらを、手がかりにして


いったい『滝の宮』

どのような『宮』だったのか?


探ってみたいと思います。



続きます。