前回からの続きです。






前回は、以下の2点について書きました。






『鉄の道(アイアンロード)について




 一般的な説として、「鉄鍛冶」技術は

西アジア(現在のトルコ)で発祥し

ユーラシア大陸を渡り


朝鮮半島などを経由して

日本に伝わりました。



また



②私の先祖が暮らした群馬県高崎市吉井町


ユネスコ世界の記憶に登録された

吉井町の歴史を記した80文字を刻んだ

『多胡碑(たごひ)のそばにある






『大宮神社(おおみやじんじゃ)

ついて書きました。





地元の方々は

当地で活躍し、郡司を務め活躍したとされる

『羊太夫(ひつじだゆう・ようだゆう)』にちなみ


「羊さま」と呼んでいるそうです。






安中市にある『羊神社(ひつじじんじゃ)』
多胡羊太夫を祀るとされます。



(「羊太夫」の正体について
 藤原姓を授かった説、藤原不比等説など
 様々な説があります。)




 「羊太夫」(実在したかどうかも含めて)
 謎の人物で、不可解な理由で朝廷に
 討伐され滅んだと伝えられています。




 史書には当地で大規模な反乱が
 起こったとの記載はなく
「羊太夫」とはいったい何者だったのか?
 吉井町の歴史の謎とされています。



 この「羊さま」と呼ばれる

 『大宮神社』の祭神は

  女性神『天鈿女命(アメノウズメ)




『アメノウズメ』 「wikipedia」より



『アメノウズメ』とは




アマテラスが岩戸に隠れ、世界が闇に
つつまれた「天岩戸(あめのいわと)神話の
場面で、岩戸の前で半裸の踊りをして


『天岩戸』神話


『天岩戸』 天岩戸神話の天照大御神
(春斎年昌画、明治20年(1887年))「wikipedia」


アマテラスが、岩戸から出るきっかけを
作った日本最古の踊り子といわれる
神さまです。


半裸の踊りで、神々を笑わせたことから
現在は芸能の神として信仰されています。






なぜ、芸能の神とされる
『アメノウズメ』

「羊さま」と呼ばれる神社に
祀られているのか?


その関係性を調べることが

吉井町の歴史の謎を解く鍵になると
考えています。




今回も引き続き


『大宮神社』
・祭神『アメノウズメ』



について、書いていこうと思います。


ところが
 この群馬県高崎市吉井町にある
 『大宮神社』(高崎市吉井町池1226)


神社の由来・由緒などは、一切不明で
境内には案内板などもなく


かつての別当寺「蓮勝寺(れんしょうじ)
明治初期に火災で焼失、廃寺となり


「現在は上池公民館が建ち、住宅街となり
往時を想像するのはむつかしいです」



由緒・古文書などはすべて失われて
しまったと推察されます。



 私の先祖は
この「蓮勝寺の末寺


いわば弟子寺として、江戸時代に
「八塚山弥勒院」を開基しています。



 


※ちなみに「別当寺(べっとうじ)とは




かつて「仏教」と「神社」が習合し「一つ」

あった時代に、神社を管理するために置かれた

寺院のことです。「神宮寺」とも。


明治以前は神前で読経がおこなわれたりしました。

明治になり、仏教と神道の分離がおこなわれ

現在に至ります。現在でも、神社のすぐ隣に

寺院があるケースが多く、このような場合


かつては「一つ」であった可能性があります。




 



なぜ、この「大宮神社」


芸能の神とされる「アメノウズメ」

祀られているのか?



その関係性がわかれば

吉井町の歴史の「謎」
「羊」とは何者だったのか?

その謎を解くヒントになると
考えています。


さて、吉井町(いけ)にある

『大宮神社』をみてみましょう。






『吉井町誌』には

神社名の由来として




「五社を合併祀し、鎮座地の地名をとりて

大宮神社と名称した





と記載され


「上野国神名帳」の記述から

この五社の合併祀は




明治1111月頃と推察されます。


以下の五社が合祀され

境内社となっています。




絹笠社 祭神 不詳

・熊野社 祭神 伊弉冉命

・諏訪社 祭神 健御名方命

・八坂社 祭神 素戔嗚命

・石神社 祭神 猿田彦命






そしてこの町誌の記述から



当地は『大宮』という地名(「小字(こあざ)」)

であったということがわかります。

 


『大宮神社』

全国に多数ありますが



この『大宮』という名称由来は



「大いなる宮」の意味で

祭神は一定していないようです。





さいたま市『大宮』の地名由来は
武蔵国一宮、本社『氷川神社』が鎮座する
「大いなる宮居」に由来するとされます。






ですが、その一方で

吉井町「大宮神社」と同様に



『アメノウズメ』を祀る

 『大宮神社』が多数存在し

  (特に千葉県に多いです)




・千葉県内 アメノウズメ』を祀る『大宮神社』


『Google Map』より





さらに他府県の「大宮神社」をながめると


『(大)宮』を名前にする『女性神』

  多数、存在します。




 『大宮姫命(おおみやひめのみこと)』

 『大宮賣神(おおみやひめのかみ)』

 『大宮能売大神(おおみやひめのおおかみ)』

 『宮比神(みやびのかみ)』





私たちは『大宮神社』と聞いて


 ・単純に「大きな神社なのだな」


このような認識を持ちがちですが



じつは

「大宮神社」




『アメノウズメ』

『(大)宮』系の名を持つ『女性神』





と強い結びつきがあるのでは

ないでしょうか。





(ここからは『大宮』をキーワードに)


全国にある




『大宮神社』

『アメノウズメ』

『(大)宮』系・女神





この組み合わせを

少し俯瞰して、ながめてみたいと思います。



それは群馬県吉井町『大宮神社』になぜ

『アメノウズメ』が祀られているのか?



吉井町の歴史の謎を解く

ヒントになると思っています。



そしてこれは

(あくまで個人的な想像となりますが)

古来、女性が祭祀において主導的な立場を務める

・『大宮こそが女神である』

そんな痕跡の一端と考えています。


そう考えると、以下の事例の①~④

『混乱』理解を助けるように思います。



以下の①~④は

とても細かいので、良ければ





『(大)宮系・女性神』『アメノウズメ』

入り乱れて祀られ、時に同神とされている

ご理解下さい。






まず

①京都の京丹後市にあるのが

『大宮売神社(おおみやのめじんじゃ)です。






祭神は、

『大宮賣神(おおみやのめのかみ)です。




祭神の「大宮賣神」
・天皇を守護する、宮中八神殿に祀られる一柱
・『古事記』『日本書紀』に記されず
 『古語拾遺』によれば
 「天太玉命(あめのふどだまのみこと)」の子
 と記されます。
・アマテラスに侍女として仕えた
 宮殿の人格化とも女官の神格化とも
・神社側では
 大宮賣神」について「アメノウズメ」と
 同神としています。






また

②千葉県市原市草刈(くさかり)にある


「大宮神社」には


『大宮姫命(おおみやひめのみこと)

祀られています。






この草刈一帯にある

「市原市草刈遺跡群」からは


3万年前の石器も発見され

かなり古くから人びとが居住したことが

わかっています。



貝塚、古墳も密集した重層的な遺跡群で

東日本最大規模の遺物が発見され

小銅鐸も出土しています。





その遺跡群の中心の高台に

『大宮姫命(おおみやひめのみこと)』

祀られています。



①の祭神

「大宮賣神(おおみやめのかみ)と同神とされます。


また

・(全国稲荷神社の本社である)

 「伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)」

 に祀られる


 「大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)

  の別名(同神)ともされます。




Fushimiinari-taisha, gehaiden-1.jpg「wikipedia」より




『稲荷神』
「稲」を象徴する穀物神で
五穀豊穣のご利益を持ち




『御饌津神(みけつがみ)』の神格を有し

①と②の祭神
大宮賣神『大宮姫命』(『大宮能売大神』)には
食物神としての性格も見ることが
できます。





また千葉県には、前述したように

(千葉市・君津市・流山市・銚子市・佐倉市

鎌ケ谷市・長生郡など、かなり広範囲に)



(次回以降テーマとして取り上げる)

女性神「天鈿女命(アメノウズメ)を祀る

「大宮神社」が、11社あります。






江戸時代の国学者・平田篤胤は


『宮比神御伝記』

伊勢神宮内宮に祀られる

『宮比神(みやびのかみ)』


『オオミヤノメ』またはアメノウズメ』

 別名であるとし


祐徳稲荷神社、志和稲荷神社でも

『オオミヤノメ』を『アメノウズメ』の別名として

 技芸上達の神としている。


『オオミヤノメ』 (参考「wikipedia」)





ちなみに「宮比神」

伊勢神宮・内宮(ないくう)の所管社で


社殿を持たない神社とされ

御垣内の西北隅にある


石畳の上に北向きに鎮座しています。





『北向き神社』について
神社は通常、「東・南」向きで
これは「太陽」信仰とリンクします。
(日本は太陽信仰の国です)
ですがその一方で、少数ですが
北を向く神社が存在します。
この理由は不明です。



これはまったくの個人的想像(妄想)ですが
日本では、満月は深夜0時に南中します。
(真南にきます)

深夜0時、社殿に正体すれば
北向き神社の拝殿の背後に満月を見ることが
できます。北向き神社の信仰の対象は『月』だった
のではないか、そんな疑いを持っています






さて、①~④とながめてきましたが

それにしても





・『大宮姫命(おおみやひめのみこと)』

・『大宮賣神(おおみやひめのかみ)』

・『大宮能売大神(おおみやひめのおおかみ)』

・『宮比神(みやびのかみ)』





 

似たような神名が、次々と出てきて

本当に混乱しますね。



しかもこれらの神々は

 



「稲荷神」としての性格

アメノウズメと「同神」であるなど



 


本来、異なる物が入り交じるような

『アメノウズメ』との混淆(こんこう)

みられます。

 


なぜこのような事が起こるのでしょう?





「アメノウズメ」について

これらの説や由緒をまとめると

以下のようになります。






・芸能の神である「アメノウズメ」

「天岩戸(あめのいわと)」神話で

半裸で踊り、アマテラスが岩戸から出る

きっかけをつくり、世界に光を取り戻す。

『シャーマン』としての神格


 

・その後、アマテラスに侍女として仕え

君臣の間をやわらげる働きをして

宮中の人格化した神とも言われる。

『和合・融和』を司る神としての神格

 


・宮中の八神殿には「大宮賣神」の名前で

天皇守護の神として祀られる。

→宮殿できわめて重視される

天皇『守護神』としての神格


 

稲荷神たる食物神の神格も持ち

全国稲荷神社の総本社「伏見稲荷大社」では

「大宮能売大神」という名前で祀られる。

 →天皇に食を提供する

『御饌津(みけつ)神』としての神格

 





これらが「アメノウズメ」について

    ~ ④説をまとめた結果です。



さらに、これらの神格に加え

天孫降臨の段において



「猿田彦(さるたひこ)の名前を(うつ)

彼と神婚したとされ

 

 

『wikipedia』より



これらをすべて

「アメノウズメ」の事績として

良いものでしょうか?

 




そもそも「大宮姫命」など、神名にある

『大宮』~「大いなる宮」の意は

通称的な代名詞であり、固有名詞とは

言い難いのではないでしょうか。

 



私は、結論から言うと


 ・これら『(大)宮系』の女神

  『アメノウズメ』

 


この二者は「別神」と考えています。




続きます。