大東亜戦争の終結から80年目となる今年(2025年)の終戦記念日(8月15日)に、映画「雪風YUKIKAZE」が封切られた。監督は山田敏久、出演は竹野内豊、玉木宏、田中麗奈、石丸幹二、中井貴一 他と豪華な顔ぶれで、日本を代表するコンテンツメーカーのSONYとバンダイナムコが配給している。


私は、昨年この“奇跡の駆逐艦”「雪風」のプラモデルを大小2艦製作したこともあり(*1)、是非とも観なければと思っていた。私が観たのは平日でお盆休みも終わった月曜日(8/18)の昼間、新宿ピカデリーのスクリーン7(約120席)で客入りは3~4割。果たしてこれは多いのか少ないのか、分からない。

   【↑映画のポスター from オフィシャルサイト

「雪風」は太平洋戦争が始まる3年前(1938年)に竣工した新鋭艦であり、帝国海軍のほぼすべての作戦に参加し戦果を上げた。そして主力駆逐艦のなかで唯一沈没しなかった“奇跡の駆逐艦”である。戦後は引揚船として1万人以上の日本人を本土に帰還させた後、補償艦として連合国側に引き渡された。

「雪風」の映画化は1964年に続いて2度目だが、2023年の映画「ゴジラー1.0」でも船腹に「YUKIKAZE」とローマ字表記された引揚船時代の“雪風”が海神(わだつみ)作戦で活躍した。今回の映画では海戦上の戦果よりも、多くの人々を救って帰還させた艦という点にスポットが当てられている。

本作品はドキュメンタリーではないので、史実を踏まえながらも架空の登場人物を軸としたドラマとして描かれている。物語はミッドウエー海戦から始まる。沈没した巡洋艦から若い水兵の井上(奥平大兼)が救われる。後に「雪風」の水雷員となる彼は「雪風」に救われた人々の象徴である。

また“幸運艦”とも呼ばれた「雪風」は、単に運に恵まれただけではなく、乗員の練度も士気も整備状況も常に他艦を上回り、様々な訓練においても常にトップだったいう。先任伍長の早瀬(玉木宏)という人物の存在や振舞いは「雪風」を支えた優秀な乗員や彼等の弛まぬ鍛錬の象徴である。

そして艦を統率する艦長は建艦時から引揚船まで計10人居り(主に中佐クラスの将校)、いずれも優れたリーダーだったという。映画では魅力的な人物として描かれている寺澤艦長(竹野内豊)は優れたリーダーの象徴である。役名や振舞いから史実上の四代目艦長、寺内正道中佐がモデルであろう(*2)。

戦闘シーンは多くないがVFXはリアルで迫力がある。また最重要シーンが敢えて無音なのも効果的だった。唯一被弾した爆弾が不発弾だった件、沈没した敵艦の将兵が乗る救命ボートに敬礼をして見逃した件(*3)、引揚船での出産の件など「雪風」に関するエピソードも漏れなく網羅されている

終盤に乗員が甲板から「おーい、日本!大丈夫か?」と現代の我々に手を振るシーンや「雪風」が解体された1970年の万博風景、艦長の娘が救援隊員となって集中豪雨災害時に被災民をボートで救うシーン、江田島に残る「雪風」の錨のラストシーン等、戦後を80年で風化させまいとの思いも伝わる。
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*1:本件については下記ブログご参照。
駆逐艦“雪風”構想通リ二完成ス | Saigottimoのブログ
*2:映画の寺澤艦長がしたように、寺内艦長は操舵室頭上のハッチから身を乗り出し三角定規で敵機の爆弾投下地点を予測し、操舵員の左右の肩を蹴って操艦して見事に被弾を回避していたといわれている。
*3:このエピソードは米国側の生存者の証言として書物に紹介されているという。

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