米国MLBエンゼルスの大谷翔平選手が大活躍している。打者として14本塁打は両リーグ単独トップ(5/20日時点)、投手でも防御率2.37(同)はチームの先発投手陣の中で断トツだ。走者としても俊足を生かして6盗塁、外野守備でもレーザービームで走者を刺す。2刀流どころか投げて打って走って守る4刀流の超人ぶりだ。
彼は日本でも2桁勝利と2桁本塁打を記録(2016年)した唯一の選手であり、「本塁打トップの選手が先発投手を務めるのはメジャーの歴史上でも100年前のルース以来2人目」など球聖ベーブ・ルースとよく比較され「今はルースの時代とは違うよ」と言っていた日米の野球マニアの鼻をへし折り続けていて、痛快この上ない。
100マイル超の速球を投げ、400フィート超の大飛球を打ち、打席から一塁まで3.8秒台で走るという、メジャーでも類のない規格外の身体能力、しかも某メジャーリーガーがツイッターで呟いていたらしいが「俺より野球が出来るのは認めるが、あんなにgood lookingでなくてもいいよね」とボヤくほど、容貌まで麗しい。
カミさんに「大谷、今度は先発だよ」なんていうと「投手と打者でフル稼働ならお給料2人分もらわないとねぇ」と言う。なるほど、彼の仕事は野球だから、投手で先発したら翌日は休んでいいし上司(監督)も休ませたいだろう。仕事の成績になる勝ち投手の権利まであと1アウトなら交代する事を拒んでもプロならおかしくない。
でも彼を見ていると、そういうプロ根性とは違うものを感じる。自分の年俸や評価に繋がる記録など全く気にしている様子がない。3試合連続本塁打中の強打者なら三塁手も後方に守る、と見るや彼はすかさず3塁線にセーフティバントを決めるのだ。こんなことは本塁打数の記録を意識していたらやるはずがない。
解説者の武田一浩氏が「どんな過酷な状況でも彼はいつも楽しそうですよね。きっと世界一野球が好きなんでしょう」とコメントしていたが、実はこれが大谷翔平の本質的な部分ではないかと思う。降板後も外野守備につき登板翌日も打者で出場するのも彼は「野球をするのが楽しくて楽しくて仕方ない」からなのだろう。
メジャーへの挑戦も2刀流に拘ったのも、最高の舞台で投げて打って野球を目一杯楽しみたかったからであり、本人にとっては記録などどうでもいいのかも知れない。彼の日本での年俸は5年目で2.7億円だったのにメジャー初年度の年俸は0.5億円台と大幅ダウンした。仕事と考えたら“年俸8割減の転職”なんてあり得ない。
実は私は国家資格2級キャリアコンサルティング技能士でもあり、現役時代は多くの人のキャリア相談に乗った。「キャリア」というと一般の人はどうしても仕事のことだと思ってしまうが、それは「ワークキャリア」であり「ライフキャリア」の一部に過ぎない事は下記の図(キャリア・レインボー)を見れば一目瞭然だろう。
この図で説明すると、大谷翔平にとって「野球をすること」は「ワークキャリア」であることは間違いないが、単に「生活の糧を得るため」であれば仕事は「手段」の一つだ。でも彼にとって「野球をすること」は子ども時代からの「ライフキャリア」全体を通しての「ライフワーク」ともいうべき人生の「目的」なのではないか。
彼の様に突出した才能や能力は発揮できなくても自分なりの「ライフワーク」を見つけて従事することは誰でも出来るはず。プロ野球で結果が出ず別の道でそれを見つけた選手もいるし、ドラフト1位入団で大成せず「それでもグラウンドに居たい」と生涯マスコットの着ぐるみで大活躍した島野修氏もその1人である。
【左:ブレービー、右:ネッピー】
コロナ禍の現在(2021年5月)、大谷翔平選手の活躍が日本で明るいニュースとなる事は嬉しいし、彼の人並み外れた能力については「凄い」という言葉しかない。でも単に彼の能力や成績を賞賛し、応援するだけではなく、我々のような凡夫でも彼の「自分が好きな事を徹底的に貫く」という姿勢だけは学べそうである。
Saigottimo


