問題を見て思ったこと![]()
過去3年分の過去問よりも問題文の量がはるかに多く,難易度も高いと感じた。
債務引受は論文問題ではほとんど見たことない分野なので,基本事項をしっかり書くように意識した(受験生の中には債務引受の条文を探してしまう人もいたかも?)。
時間が50分であるため,全部を完璧に書くことは無理だと思った。ただ,ロー入試はそもそも書けるかどうかの問題以前に,論点に気づかない人も多いので,気づいた論点はなるべく書くようにした。
答案![]()
第1 設問1
1 譲渡禁止特約(民法(以下,略)466条2項))の存在の主張
D社は,AD間の契約には譲渡禁止特約があるため,本件売掛金の支払いを拒否すると考えられる。
(1) まず,譲渡禁止特約は物権的効力を有するため,絶対的に無効である。
(2) もっとも,Cは,「善意の第三者」(同条2項ただし書)に当たり,保護されないか問題となる。
この点,債権は原則譲渡可能であるから,「善意」とは善意無重過失で足りると考える。
本問では,債権譲渡の際,AD間の基本契約書がCに渡されており,基本契約書には譲渡禁止特約の存在が記載されている。したがって,Cはこれを知っていたため,「善意」の第三者に当たらない。
(3) よって,Dは譲渡禁止特約の存在をCに対抗できるため,本件売掛代金
の支払いを拒否することができる。
2 債権譲渡が無効であるとの主張
(1) 本問で譲渡の対象となっている債権は集合債権であるところ,集合債権は流動性があるため特定しているとはいえず,債権譲渡は無効であるとの主張が考えられる。
この点,集合債権は,債権の当事者,期間,内容が定まっていれば,特定しているといえる。
本問では,債権の当事者はAD、期間も将来の5年分,内容も売掛債権と定まっている。したがって,特定しているといえ有効である。
(2) 次に,本問で譲渡の対象となっている債権は将来債権であるところ,将来債権は発生するか不確実であるため,無効であると主張することが考えられる。
この点,将来債権が発生しなかったとしても,元の債権者の責任を追及することで清算可能であるため,債権譲渡の効力に影響を及ぼさない。したがって,将来債権の債権譲渡は有効である。
(3) もっとも,債権譲渡が債権者又は第三者の地位を不当に害する場合には,信義則(1条2項)上,無効と考える。
本問では,確かに,期間は5年分とそれほど長期とはいえないが,Aは資金調達に困っていることから,他に見るべき資産はないと考えられる。また,その内容もCがいつでも債権譲渡の譲渡通知をすることを認めるものであり,一方的な内容である。したがって,債権者たるAの地位を不当に害するといえ,信義則上,無効である。
よって,Dは本件売掛代金の支払いを拒否できる。
第2 設問2
1 債務引受とは、債務者が負っていた債務を引き受けることをいい,債権譲渡と対照的である。
2 本問では,Q社は,P社に対して4000万円の和解金を請求するのとは別に,Tに対しても同額の請求をしている。したがって,元の債務者の債務を免責するものではなく,債務が併存しているため,併存的債務引受である。併存的債務引受は,保証契約(446条1項)と類似する性質を有する。
3 要件
債務者は不利益を受けないため同意は不要であるが,引受人は不利益を受けるので同意が必要。そして,併存的債務引受は第三者のためにする契約(537条1項)と類似することから,債権者において受益の意思表示が必要になる。
本問では,Tは債務引受に同意している。また,Qも,Tに対して請求しているので受益の意思表示があるといえる。
4 Tの主張
(1) 錯誤無効(95条)の主張をすると考えられる。
Tは1000万円と聞いていたにも関わらず4000万円の債務を負っている。本来の額を知っていたならば,Tは債務引受しなかったであろうし,通常人においてもそう考えられる。したがって,要素の錯誤がある。
もっとも,4000万円という額は大きな額であるため,TはQに確かめることもできたのに,しなかったため重過失(同条ただし書き)がある。
よってかかる主張は認められない。
(2) 詐欺取消し(96条1項)の主張をすることが考えられる。
P社のSは,P会社を任せるつもりもないのに,Tに対して債務引受をお願いしているため欺罔行為に当たり,これによって錯誤に陥っている。したがって,詐欺に当たる。
もっともQは,Tが詐欺にあったことを知らないため,「善意の第三者」に当たる。よって,Tは取り消しをQに対抗できないため,Tの主張は認められない。
以上
反省点![]()
設問1
・譲渡禁止特約の効力の部分で,「絶対的無効」と書いてしまったが,「第三者に対する関係でも無効」と書くべきだった。
・信義則無効の規範(最判平11.1.29 百Ⅱ(第7版)28事件)の記憶が曖昧だったため,やや不正確。
・信義則無効の主張を第三者たるDが主張できるかが問題となるとも思ったが,時間がなく検討する時間がなかった。
設問2
・併存的債務引受の要件がうろ覚えで,不正確になってしまった(正確には,3面契約はもちろん,第三者のためにする契約(537条1項)として債務者・引受人間の契約及び債権者の受益の意思表示(同条2項)でもokだそう)
・Tの主張の当否の部分は時間がなく薄くなってしまった。
以上
※質問がある場合にはコメント欄にお願いします。