労働者の就業中の自動車事故など、交通関係の労働災害を『交通労働災害』と呼びます。交通労働災害は社用車を使っているのならば、どの会社でも起きる可能性があります。
今回は、従業員への教育や健康管理など、交通労働災害防止について説明します。

交通労働災害の約6割が運輸交通業以外の業種

   厚生労働省によると、2020年に起きた死亡災害のうち、交通労働災害は164 人と、墜落・転落の191人に次いで多いことがわかりました。
 業種別に見ると、トラックやバス、タクシーなどの運転業務が主となる運輸交通業以外に、移動や配達、運搬のために社用車や配達車を所有している会社でも交通労働災害は起きており、その割合は実に6割以上にもなります。2015年の統計では、うち約4割が客先の訪問中など、約2割が現場に向かう途中の建設業の車両などで発生しています。
 このことからも、すべての事業者が交通労働災害を起こさないように、防止策を講じる必要があります。
 事業者が取り組まなければいけないのは、車を運転・乗車する従業員に対する教育の実施や管理体制の確立、従業員の意識高揚などです。
 まず、社用車で移動・運搬をしている事業者は、労働安全衛生法に基づき、新規で雇い入れる従業員に対して、交通法規や注意事項、飲酒による運転への影響や十分な睡眠時間の必要性など、運転に必要な項目についての教育を行わなければいけません。ベテランに同乗してもらい、実地指導を行ってもよいでしょう。同時に、既存の社員に対しても日常的に教育を行っていきましょう。
  また、ドライブレコーダーの映像を基に、安全走行に必要な情報を抽出したり、危険な箇所を示した交通安全情報マップを作成したりするなどもおすすめです。
そのうえで、安全を確保する能力を身に着けさせる交通危険予知訓練を行うと、交通労働災害の防止に効果的です。

運転者の状態や道路状況を把握   事業者は適切な指示を出すこと

    事業者は運転者が適切な睡眠時間を確保できるよう、労働時間の管理を行う必要があります。社員に車による移動で遠方への出張を命じた際、十分な睡眠時間を確保できないスケジュールであれば、出張先で宿泊施設を確保するなどの配慮が求められます。
 走行計画を作成し、運転時間や休憩時間、拘束時間を明確にすることも大切です。走行計画については、運転終了後に振り返りを行い、計画に無理が生じていれば改善します。さらに運転前にアルコール検知器で運転者をチェックし、記録を付けておきます。
 アルコール検知器については、2022年4月に道路交通法が改正されました。乗用車なら5台以上、定員11名以上の車両なら1台以上を保有している事業所は、運転者に対して目視などでの酒気帯びの有無の確認等が必要です。
 そのほか、運転者に明らかな睡眠不足や疲労、体調不良が見られた場合は、運転業務に就かせないという決断も必要です。異常気象や天災などが発生した場合は通常とは道路状況が異なる可能性もあるため、状況を見て、走行中止や一時待機などの指示を出しましょう。
 交通安全ポスターの掲示や表彰制度などによる交通労働災害防止の意識高揚や、安全管理者・運行管理者・安全運転管理者などの選定、健康診断や面接指導などの健康管理、自動車の点検や補修なども事業者の責務です。交通労働災害が起きた場合は、雇用者も使用者責任や運行供用者責任を問われ、第三者に怪我をさせてしまった場合は損害賠償責任を負うことになります。
 使用者と労働者の双方が交通事故を起こさないという強い意思を持ち、運転業務にあたりましょう。

Q:納入された商品の請求書を見たところ、「振込手数料はご負担ください」と書か
れていました。今までの取引先は振込手数料を持ってくれていたので、支払いに
おいては手数料分を差し引いて入金していました。しかし今回は違うようです。
そもそも、商取引において、振込手数料はどちらが支払うのが通例でしょうか。

A:振込手数料には、買った側が負担する『当方負担』と、売った側が負担する『先方
負担』があります。このケースでは、手数料の負担を求められているわけですか
ら、当方負担ということになります。民法では当方負担が原則ですが、契約書に
明記されている場合は、その内容が優先されます。

 

支払いで発生する振込手数料  基本は『振り込む側』が負担

   銀行などの金融機関で送金や振込を行う際には、振込手数料が発生します。
商取引においては、昔からの慣習で、代金を振り込む際に振込手数料を差し引いて入金することがあります。たとえば、代金が10万円で手数料が200円であれば、200円を差し引いた9万9,800円を振り込むことになります。このように先方に振込手数料を負担してもらうことを先方負担、逆に10万円をそのまま振り込み、200円の手数料をこちらで負担することを当方負担といいます。手数料は商品の代金と比べるとわず
かな額ですが、取引数が増えていくと無視できない金額になってくるので、どちらが負担するかは納得がいくように決めなければなりません。
 

民法では『持参債務の原則』によって、代金を振り込む側が振込手数料を負担する、当方負担が原則とされているため、もし先方に振込手数料を負担させている場合は、改める必要があります。逆に、代金を入金してもらう際に、振込手数料が勝手に差し引かれてしまっている場合は、販売先に交渉してみるとよいでしょう。次回の取引の際に、無理のない範囲で「振込手数料は当方負担が原則なので、貴社での負担をお願
いできないでしょうか」と切り出せば問題ありません。

振込手数料を節約するにはネットバンキング・減免措置を

   一方、下請法では、合意がある場合に親事業者が下請事業者に下請代金から振込手数料を差し引いて支払うことが認められています。ただし、この振込手数料はあくまで『実費の範囲内』とされており、手数料が発生していないにも関わらず、従来の振込手数料に相当する額を代金から差し引くことは禁止されています。
必ず、実際に発生した振込手数料に準じている必要があります。
 

   もし、振込手数料を節約したいのであれば、インターネットバンキングやファームバンキングの利用がおすすめです。実店舗を持たないオンライン専門のネットバンキングでは、一般的なメガバンクや地方銀行よりも振込手数料が低く設定されていることが多く、なかには一定の条件を設けたうえで、月に数回、振込手数料を無料にしている銀行もあります。
 

また、金融機関との取引実績がある企業であれば、振込手数料の減額をしてもらうこともできます。この減額のことを『減免措置』といいます。
 

 よくないのは、力関係を利用して、振込手数料を取引先に押し付けてしまうことです。自社が手数料を負担することになった場合には、きちんと受け入れ、前述した節約手段を活用するとよいでしょう。

   人材採用においては労働者を雇用する以外に、派遣社員を受け入れるという選択肢があります。
この場合、直接人を雇用する場合とはさまざまな違いがあります。

今回は、派遣労働者を受け入れ時の注意点や、守らなければいけないルールを

解説します。

派遣会社と契約する前後、労働者を受け入れる企業が気をつけること

 企業が派遣労働者を受け入れる際は、労働者派遣法に基づいて、派遣会社と『労働者派遣契約』を結ぶことになります。注意したいのは、しばしば労働者派遣事業を無許可で行っている事業者が存在している点です。無許可の会社との取引が発覚した場合、労働者派遣法違反になります。法律違反のリスクを避けるためにも、派遣会社の候補をピックアップしたら、事前に厚生労働省が運営する『人材サービス総合サイト』で、取引を予定している派遣会社の許可番号や届出受理番号がきちんとあるか確認しておきましょう。

   ちなみに、建設業務、港湾運送業務、警備業務、一部の医療関係業務は、労働者派遣が禁止されているので注意しましょう。(医療関係業務については、条件を満たした場合は認められることがあります)
 労働者派遣契約書を準備する段階になったら、派遣労働者の業務内容や、就業場所などの事項をあらかじめ派遣会社と定めます。
 無事に派遣会社と契約を締結したら、いよいよ派遣労働者の受け入れです。このとき、受け入れ側の企業は希望の人材を指名したり、事前に面接をしたりしていけないことになっています。どの労働者を派遣するかを決めるのは派遣会社であり、もし、派遣先企業が事前面接をはじめ派遣労働者を特定する行為を行っていた場合は、各都道府県の労働局から指導を受けることがあります。
 一方で、派遣労働者の職場見学などは推奨されています。派遣先には業務の内容を派遣労働者に伝える義務がありますが、書面だけでは限界があります。
ミスマッチを防ぐためにも、職場見学の要請を受けたら訪問を受け入れるようにしましょう。

派遣労働者を就業させるときに受け入れる企業が守るべきルール

   派遣労働者は、派遣先の企業で業務を行いますが、就業規則や就業内容については、派遣先が派遣会社とあらかじめ定めた労働者派遣契約に基づきます。もし、契約と異なる働き方をさせてしまったら、労働者派遣法違反となります。
 厚生労働省は、就業場所の定期的な巡回や、労働時間の管理を推奨しており、契約に反した働かせ方の防止への対応を求めています。労働基準関連法などの責務は原則として派遣元が負いますが、労働時間管理や危険防止措置などの責務に関しては、派遣先にも分担されることを知っておきましょう。
 さらに、派遣先の責務として、『派遣先責任者』の選任と『派遣先管理台帳』の作成も必要です。派遣先責任者とは、派遣労働者に関する就業の管理を一元的に行う責任者のことで、1事業所で、派遣労働者 100 人当たり1人の責任者を選任しなければいけません。
派遣先管理台帳とは、派遣労働者名や派遣会社名などの必要事項を記した台帳のことで、派遣先は作成して保管する義務があります。

   このほか、派遣先の企業が派遣労働者から苦情の申出を受けた際は、派遣会社に通知して、双方の企業が連携しながら苦情に対応します。業務内容の見直しやハラスメントなど、内容に応じて必要な措置を講じる必要があります。福利厚生では、正社員と同じ施設を差別なく使用させる努力義務があったり、派遣会社が行う能力開発や教育訓練に派遣労働者が参加を希望したりした場合は、参加できるように便宜を図る
よう求められています。
 

   派遣先企業は、労働者派遣法を遵守し適切な労務管理をしていきましょう。

   会社法における『利益相反取引』とは、会社が不利益を被るような取引を、取締役が自己の利益のためにしてしまうことを指します。利益相反取引を行う場合、株主総会において重要事項を開示し、承認を得る必要があります。事例を交えて確認していきましょう。

直接取引と間接取引の違い~利益相反取引にはならないケース

 利益相反取引には、『直接取引』と『間接取引』があります。


 直接取引は、取締役が当事者となって会社と利益相反取引を行うことをいいます。たとえば、取締役が会社において、事業所用地購入の決定権を持つ立場にあった場合に、自身が所有している土地を相場よりも高い価格で会社に購入させるケースなどが該当します。この場合、取締役は得をしていますが会社側は損をしており、利益が相反していることになります。直接取引では、このような売買契約以外にも、会社から取締役への金銭の貸付や逆に取締役からの貸付、会社から取締役に貸した金銭の債務の免除や商品の譲渡などの場面で利益相反取引が起きやすいとされています。
 

 対して、間接取引は取締役と第三者との取引に会社が関わっているケースを指します。たとえば、取締役と第三者の債務を会社が保証したり、債務を会社が引き受けたりする取引などが該当します。
 これらの利益相反取引は、取締役側と会社側の利益が相反するかどうかがポイントになります。取締役の所有する土地を会社が購入するケースでも、相場と同等もしくは低い価格で売るのであれば、利益相反取引とはなりません。ほかにも、取締役が無利子で会社に金銭を貸し付けたり、財産を無償で提供したりする行為も利益相反取引には該当しません。

利益相反取引が承認されても損害賠償責任が発生するケース

   会社法では、取締役会や株主総会の承認を得ていれば、利益相反取引を行うことが許されています。この承認は、取締役会を設置している会社であれば取締役会、設置していない会社であれば株主総会で行います。
会社が損害を被る可能性があるだけで、実際に不利益を被らないケースもあるため、個別の事案ごとに取締役会や株主総会の判断に委ねられるのです。
 

   この判断を行う『承認決議』には、当事者である取締役は参加することができません。当事者以外の取締役もしくは株主の過半数が承認すれば、利益相反取引が認められることになります。ちなみに、承認決議は取引が終わった後に行うことも可能です。
 そして、これらの機関の承認を得ていなければ、取締役の行う利益相反取引は無効になります。ただし、間接取引は第三者の利益が関係してくるため、会社側が無効を主張するためには、第三者が該当の取引について、「会社の承認を得ていないと知っていた」もしくは「承認を得ていないと知っていて当然の関係性であった」ことを証明する必要があります。
 また、取締役も取締役会や株主総会の承認を得たからといって、安心することはできません。たとえ承認を得ていたとしても、実際に会社側に不利益を生じさせてしまった場合は、損害賠償責任を負うことになります。さらに、承認決議に参加した取締役も注意しなければいけません。もし、利益相反取引によって会社が不利益を被った場合は、取引を承認した取締役も損害賠償責任を負わされる可能性があるからです。
 

   利益相反取引に対しては、当事者の取締役はもちろん、取引を承認する立場にある取締役も、慎重な判断が必要です。

   『カスハラ』とはカスタマーハラスメントの略で、客からの理不尽なクレームや過度な要求、嫌がらせなどを指します。カスハラは近年、増加傾向にあり、行き過ぎると脅迫罪や恐喝罪、強要罪や威力業務妨害罪になります。

今回は、カスハラの判断基準についてお伝えします

従業員の身体・精神に被害  クレームとカスハラの判断基準

   厚生労働省の調査によると、2019年度に全国の企業・団体に勤務する20-64歳の男女労働者のうち、過去3年間で『顧客から著しい迷惑行為を一度以上経験した』人の割合は、15.0%でした。受けた行為の内容としてもっとも多かったのは、『長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)』が52.0%で、『名誉毀損・侮辱・ひどい暴言』が46.9%と続きます。これらの迷惑行為によって、従業員の就業環境が害されることが大きな問題となっています。労働基準法では、企業は従業員の生命や身体の安全を確保する『安全配慮義務』が求められています。もし、カスハラによって従業員が身体的・精神的な被害を受けた場合は、クレームをつけた客側だけでなく、雇用主も安全配慮義務について責任を問われることがあるので注意してください。カスハラに適時対応していくためには、カスハラかどうかの判断基準を設けておくとよいでしょう。

 

厚生労働省では一つの尺度として、以下の2点を示しています。
❶顧客等の要求内容に妥当性はあるか
❷要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当か


 つまり、客の要求に妥当性がない、または要求を実現する手段が社会通念上不相当な場合はカスハラであると判断できます。程度が深刻な場合は、犯罪行為にあたるので、企業はケースごとに判断する必要があります。暴力行為はもちろん、土下座の強要や暴言、金品の要求なども犯罪行為です。
過去の例では、衣料品店で従業員に土下座を強要した客が逮捕されました。また、飲食店で持ち込みを指摘されたことに腹を立てた客が従業員を殴り、傷害罪で逮捕される事件も起きています。

どのようなクレームが犯罪行為にあたるかを解説

●土下座の強要
客の立場を利用し、脅迫や威嚇を重ねて土下座などを強要した場合は強要罪になります。謝罪文を書かせる行為も該当します。
●過剰な見返りの要求
企業側が提示している賠償内容にいつまでも納得しない姿勢を見せ、過剰な慰謝料や金品を求める行為は、恐喝罪となります。
●脅して恐怖を与える
机を叩く、壁を蹴る、物を壊す、執拗にせまるなど、従業員を威嚇して恐怖を与える行為は脅迫罪に当たります。
●大声を出すなどして業務を妨害
従業員を声や音で威圧して業務を妨害すると、『威力業務妨害罪』になります。また、電話で何度も悪質なクレームを入れる行為も該当する場合があります。
●暴言を浴びせる
従業員への誹謗中傷を目的に、大勢の前で『バカ』『クズ』と罵る行為は侮辱罪になります。『店長と不倫している』など嘘の事実を提示した場合、『名誉毀損罪』に
なります。
 

   クレームが発生したら、まずは客と従業員の証言や証拠に基づいて事実関係を正確に把握し、自社側に過失がある場合は謝罪や商品の交換、返金などで対応するべきです。しかし、正当なクレームではない悪質なカスハラであると判断できた場合は、警察への通報も含め、毅然とした態度で従業員を守る必要があります。

   年次有給休暇は、業種や業態、事業所の規模に関係なく、全ての労働者に付与しなければならないと法令で定められています。ただし、付与する日数は従業員の勤続年数と労働日数によって異なります。そこで今回は、労働日数あたりの休暇付与日数や、付与するための要件を説明します。

年次有給休暇の付与日数は労働日数により規定される
   労働基準法第39条では、『業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければならない』としています。一定の要件を満たした労働者とは、雇入れの日から6カ月継続して勤務しており、全ての労働日に対して、出勤率が8割以上の従業員です。この要件を満たしている従業員に対して年次有給休暇を与えることは、法律で定められた義務となります。全ての従業員が対象のため、パートやアルバイトも含みます。
 また、出勤率を算出する際は、業務上のケガや病気で休職している日数、育児休業や介護休業などの日数も出勤日として扱います。
 出勤率が8割以上で週30時間以上勤務する従業員には、入社6カ月後に10日間の年次有給休暇を付与する必要があり、その後、継続勤務年数が1年増えるごとに、付与日数が増えていき、6年6カ月以降は同じ付与日数になります。
 一方、週30時間未満の従業員は、週の所定労働日数に応じて付与される日数が異なります。
たとえば、週の所定労働時間が30時間未満で、週の労働日数が4日であれば入社6カ月後は7日間、労働日数が3日の場合は5日間というように、労働日数に合わせた年次有給休暇の日数が決められています。

休暇日の取得時期は基本的に会社側から一方的に変更できない
   年次有給休暇の取得時期は、会社側が決めることができません。原則として、従業員が指定した時期に、付与した範囲内で希望の日数を取得してもらうことになります。しかし、従業員が年次有給休暇を取得することにより、事業の正常な運営が妨げられる場合に限り、会社側から休暇日の変更を求めることが可能です。この権利を『時季変更権』といいます。
 ここでいう“事業の正常な運営を妨げる場合”とは、事業所の規模や業務内容、職務の繁閑などを鑑みて、客観的に判断します。たとえば繁忙期や、代替人員の確保が難しいなどの理由では、時季変更権の行使は認められない可能性があります。過去の判例では、複数人の従業員が同じ時季に年次有給休暇の取得を申請してきた場合など、時季変更権による取得時季の変更を認めています。また、年次有給休暇は、発生の日から2年間で無効になることから、取得時季の変更によって年次有給休暇が無効になる場合も、時季変更権を行使することはできません。
 正当な理由のない取得時季の変更は違法と判断されるため、原則的には休暇を与えることを前提に調整を行い、時季変更権によってトラブルが生じないように、あらかじめ就業規則に記載しておきましょう。

 バーチャルオフィスとは、オフィスを構えることなくビジネス用の住所や電話番号を利用できるサービスのことです。
リーズナブルに利用できるため、事務所が不要なスタートアップ企業や個人事業主を中心に人気を集めています。
このバーチャルオフィスは、法人登記を行う際の登記住所として使用できるため、事務所を借りる際のコストや時間を削減できます。
そこで今回は、コロナ禍で利用が増えつつあるバーチャルオフィスを利用した法人登記の方法について説明します。
  
起業家に法人登記のための住所を貸し出し

 コロナ禍で広まったテレワークは、これまでのオフィスのあり方を大きく変えました。
首都圏から地方にオフィスを移転したり、縮小したりする企業もあれば、オフィスを解約した企業もあります。
そして、オフィスを構えず、バーチャルオフィスを借りて起業する人たちが増えてきました。
バーチャルオフィス市場は現在急成長を遂げており、この先も市場は拡大していくと見られています。
さまざまなバーチャルオフィスが存在するなかで、サービスの中心になるのは法人登記のための住所の貸し出しです。

法人登記を行う際には、本店所在地の住所を記載して申請する必要があります。
この本店所在地は、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィスやシェアオフィス、そしてバーチャルオフィスの住所を利用することが可能です。
法人登記を行う住所に法的な制限はなく、本店所在地と事業を行うところが別の場所でも問題はありません。
したがって、バーチャルオフィスの住所で法人登記しても問題ないことになります。

実際に事務所を構えるとなると、内見や審査、契約まで時間もかかり、初期費用や手数料など、相応の費用もかかってしまいます。
開業したばかりの頃は、余計な支出を抑えたいものです。
時間とコストの面から見ても、ECサイトの運営やIT系など事務所が不要な事業であれば、バーチャルオフィスでの法人登記は有効な選択といえそうです。

複数の会社が同じ住所で法人登記している可能性も
 

 バーチャルオフィスはさまざまなシーンで活用が可能です。
法人登記のほか、個人事業主や開業届を提出する際の住所、法人用の銀行口座を開設する際の住所としても利用できます。
ただし、注意したいのは、違法に運営されているバーチャルオフィスを選ばないことです。
法令を遵守していないバーチャルオフィスは、個人情報の漏洩や犯罪の踏み台として使われてしまう危険性があります。
トラブルに発展する可能性もあるので、利用規約などをよく確認し、安全に利用できることを確認してから契約するようにしましょう。

また、ほかの利用者が同じバーチャルオフィスの住所で法人登記をしている可能性があることも、念頭に置いておきましょう。
法人登記は、複数の会社が同一の住所を本店所在地として登記することを認めており、法的にも制限がありません。
特にバーチャルオフィスは、一つの住所にいくつもの会社が本店所在地として登記していることも考えられます。
他社と住所が被ることによって金融機関の融資や取引先との契約が不利になることはありません。
しかし、なぜ本店をバーチャルオフィスにしたのかを説明できないと、取引先や金融機関に不審に思われることもあります。
ビジネスの相手には、あらかじめバーチャルオフィスであることを説明しておくことをおすすめします。

また、許認可取得の際に、物理的な事務所がないと許認可が取得できない業種もあります。
たとえば建設業や不動産業などは『事務所要件』といって、法律で定められた項目を満たす事務所がないと、許認可が取得できません。
事業を始める前には、事務所の要不要もしっかりと確認しておきましょう。

※本記事の記載内容は、2022年5月現在の法令・情報等に基づいています。

   ブロックチェーンをはじめ、加速度的にビジネスの基盤が変化しつつある昨今。

新しいビジネスも続々誕生しているなか、法整備が追いついていないことも珍しくありません。今回は、法的リスクを最小限に抑えるために注意すべきポイントを紹介します。

法的リスクを洗い出すためにまずはビジネスモデルを確認!

  新規ビジネスを立ち上げるとき、大多数の人は投下資本を回収するための事業計画を

立て、新規事業に取りかかります。その際、法律上のリスクについても押さえておかなければいけません。
  新たな分野でのビジネスは、従来の法律がそのまま適用するとも限りません。事業が走り出した後で思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあるため、想定できるトラブルを洗い出しておきたいものです。
そのためにはまず、新規ビジネスがどのような仕組みからなるのか分解して考えるとよいでしょう。
 まず、取り扱う商品や顧客、また顧客に商品やサービスが届くまでのルート、収益を上げる方法などを細かく書き出してみます。これらを確認することによって、どこでトラブルに発展しやすいのか、どの部分にリスクがあるのかが見えてきます。
 

既存ビジネスの『輸入販売業』を例に考えてみましょう。輸入する際の課題としては、取引に日数がかかることや、到着日が読みにくいなどがあげられます。前述した詳細を書き出し、確認することで、万が一、到着予定日までに商品が届かなかった場合、顧客との取引は、どのタイミングで成立させるのが最もリスクを押さえられるのかも見えてきます。そして、顧客から受け得るクレームにはどのような内容が想定されるか細かく分析していけば、作成すべき利用規約が決まっていきます。
新規事業における法的リスクを洗い出すためには、まずビジネスモデルを分析することが重要です。

 

スタートアップ時の法整備は行政や専門家などの支援も活用を

  新たなビジネスに着手するときは、その分野のビジネスにどのような定義があるのかを理解しなければいけません。顧客にサービスを提供するため、利用規約や契約書を事前に作成する必要もあります。人を雇用したり、業務を委託したりする場合は、作業内容と依頼条件を細かく設定することも重要です。ビジネスパートナーがいる場合は、両者間でも契約書を交わしておきましょう。法律に特化したリスク対策は、新規事業を立ち上げた経験が過去にある人や、ビジネスに精通している人であっても難しいものです。弁護士や税理士、経営コンサルタントなど、ビジネスと法律・税務に精通している専門家に相談できる環境を整えることも得策です。
 法整備が整っていない事項については、トラブルに発展した際に、「なぜ、このような対応をしたのか」という証拠を残すことが重要です。リスク回避を念頭に置き、事業の立ち上げを着実に行っていきましょう。

 

   会社で働くにあたり、労働時間や休日、退職金などのさまざまな条件やルールを定めたものが就業規則です。しかし、従業員に対して就業規則が浸透していない会社も少なくありません。その場合、職場の環境や経営にどのような影響を与えるのでしょうか。

人によって解釈が異なるような曖昧な就業規則は浸透しない

  就業規則とは、職場のマナーやルールを定めたものです。そのなかには『絶対的記載事項』と呼ばれる項目があり、労働基準法の定めでは以下については明記しなければなりません。
 

●労働時間(始業・終業時刻、休憩時間、休日など)
●賃金(賃金の計算方法、決定方法、昇給に関してなど)
●退職に関して(解雇事由など)
 

 さらに、常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則を作成するだけでなく、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。そして、従業員がいつでも就業規則を見られる場所に提示するとともに、内容を周知する必要があります。なぜなら、就業規則とは、会社の法律のようなものだからです。働く人は「どのような権利が認められていて、どのような義務が課されているのか」を就業規則で確認するのです。
しかし、会社によっては就業規則が現場に浸透していないケースが少なくありません。なぜ、就業規則が守られていないのでしょうか?
 

   ありがちなのは、就業規則に定めているルールが曖昧で、複数の解釈が可能なケースです。この場合、具体的にどうすればいいのか従業員側には判断できないため、就業規則に従わなくなってしまいます。たとえば、従業員という属性には正社員やアルバイト、パートなど複数の雇用形態が含まれますが、現場に即した就業規則とするならば、正社員には正社員用の就業規則が、アルバイトにはアルバイト用の就業規則が必要です。就業規則そのものを複数作成する必要はありませんが、どのルールがどの雇用形態の人に適用されるのかを明記することが大切です。もし、就業規則に『従業員』とだけしか書かれていない場合は、現場で判断することが難しくなります。その結果、就業規則が形骸化し、意味をなさなくなってしまうのです。

労働契約と就業規則基準の高いほうが優先される

    また、就業規則の記載内容のうち、事業主と従業員の間でトラブルが起こりやすいのが、残業手当や退職金の計算方法です。就業規則上の金額や計算式が間違っていることもあり、従業員に支払っている残業手当や退職金の額と、従業員の認識にズレが生じるケースが多々あります。金銭の支給に関する項目は、特に注意が必要で、たとえば「交通費を支給する」とだけ書いた場合、従業員全員に対してと受け取られます。正社員のみが対象ならば、忘れずに記載する必要があります。
 

   万一、従業員と会社が結んだ労働契約と、就業規則の記載内容が異なる場合は、基準の高い方が優先されます。本来の計算方法よりも高い基準を就業規則に記載してしまった場合は、その通りに支払うことになるため、想定外の支出が発生する可能性もあるのです。
また、労働基準法に反するような規則は無効となります。労働基準法の範囲内で就業規則を作成し、法律に違反していないか、しっかり確認することが大切です。
 

   作成した就業規則は、職場の全員に浸透してこそ効果を発揮します。できれば全従業員に対して説明をしたり、質問を受けつける機会をつくったりするとよいでしょう。
 

   インターネット上に構築された仮想の3次元空間『メタバース』が、若い世代を中心に話題です。 メタバースは、今後、ビジネスの“新常識”になっていくといわれています。

今回は、その基本的 な知識に加えて、活用のヒントをお伝えします。

 

仮想空間で現実世界と同じように 人と繋がることができる

 

   メタバースとは、『インターネット上に構築された 仮想の3次元空間』のことです。

メタバースの例として イメージしやすいものといえば、オンラインゲームです。 たとえば、任天堂が販売している『どうぶつの森』と いうゲームでは、プレイヤーは仮想空間のなかで買い 物や会話、労働などを行うことができます。最近の バージョンでは、インターネット上で遠く離れたとこ ろにいる人と通信しながらプレイできるようになり、 2020年の緊急事態宣言発令中に発売された『あつま れ どうぶつの森』は、巣ごもり需要とあいまって空 前のヒットとなりました。 ほかにも、メタバースの代表例といえるのが、 「Fortnite(フォートナイト)」や「Minecraft(マイン クラフト)」です。仮想空間でありながら、リアルと同じ ように感じられる世界。そのような空間が、まさにメタ バースなのです。ゲームをしながらプレイヤー同士で コミュニケーションを取るという様式は、すでに普通 のことになっています。 メタバースはゲーム以外にもさまざまな用途で使 われ始めるようになりました。その一つが、バーチャ ル・コンサートです。たとえば、Robloxというゲーミン グプラットフォームでは、アメリカの歌手、リル・ナズ・X がバーチャルコンサートを開催。前述したFortniteの 運営会社Epic Gamesでは、Fortniteの世界を使って アリアナ・グランデや、米津玄師がイベントを行いまし た。イベント会場ではリアル会場と同じくコンサート グッズも販売し、大きな収益を上げています。  

最近では、Facebookがメタバースを想起させる 『Meta』に社名を変えました。これは、メタバースの 社会的認知度を高めるきっかけとなりました。

 

多くの企業が取り入れている ARとVRを使ったサービス

 

   メタバースを使ったビジネスは今、世界各国で展開 しています。そこで使われている技術として代表的な ものが、『AR(拡張現実)』と『VR(仮想現実)』です。  

 

   ARは、目の前にある現実世界にコンピューターで 作られた映像や画像を重ね合わせ、現実世界を拡張 する技術です。ARを使うと、たとえばあるアイテムに スマートフォンをかざすだけで、そのアイテムにまつ わる情報(サイズや値段など)をスマートフォン画面に 表示することが可能です。その機能を活かせば、自分 の足や体とデジタルデータである靴や服を組み合わ せて、実際は着用していないのに着用しているように 可視化することができます。これまで実店舗に出向か なければ不可能であった“試着”を、画面上でいつでも できるのです。最近では多くのファッションブランドが、 この機能を利用して試着サービスを提供しています。    

 

一方、VRは、現実にない世界や体験することが難し い状況をCGによって仮想空間上に作り出す技術です。 たとえば、旅行代理店『H.I.S』では、店舗にあるVR 専用ゴーグルを用いて、海外のホテルの様子などを 360度にわたり映像で体感できるサービスを開始。 これにより、より詳しい設備情報や雰囲気から旅先の ホテルを選ぶことができるようになりました。          

   また、 Metaは、会議やセミナーを仮想空間で行えるワーク プレイスアプリ『Horizon Workrooms』のサービス を提供。『Oculus Quest 2』というVR専用のヘッド セットを用いることで、参加者それぞれがアバターを 使って同じ空間に集まり、Webを併用しながらディス カッションやプレゼンテーションを行うことができます。 

 

 このようにさまざまな活用方法のあるメタバース は、次世代のITインフラになる可能性が高いといわれ ています。理解を深め、自社のビジネスに活かしてみ てはいかがでしょうか。