民法や不動産登記法の一部などが改正され、2024年4月1日から、これまで任意だった相続登記の義務化が始まります。
この義務化は、所有者がわからない『所有者不明土地』の解消を目的としたもので、不動産を取得した相続人にその取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を行う義務を課し、これに違反すると罰則を科すものです。
しかし、さまざまな理由ですぐには相続登記の申請ができない人もいます。
そうした人のための救済措置として、『相続人申告登記』という新しい制度が創設されました。
相続人になったら知っておきたい相続人申告登記の内容について説明します。

相続登記の申請が義務化された背景
 

 これまで相続登記は義務ではなく、申請をしなくても相続人が罰則を受けることはありませんでした。
そのため、亡くなった被相続人から不動産を相続しても、その土地の価値が低かったり、売却することが困難だったりした場合、多くの相続人は手間や費用をかけてまで、わざわざ相続登記の申請をしようとは思いませんでした。

しかし、そうした土地が長期に渡って放置され続け、日本では所有者がわからない土地が大量に発生してしまいました。
こうした土地のことを『所有者不明土地』といいます。

増え続ける所有者不明土地は都市開発の妨げになり、周囲の環境悪化にもつながるなど社会問題化しており、政府にとっては所有者不明土地の解消が喫緊の課題でした。
そこで、法改正によって相続登記が義務化され、土地の所有者を明らかにさせることになりました。

施行日の2024年4月1日以降、相続によって土地や建物などの不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をする義務を負うことになります。
もし、正当な理由がないのに相続登記の申請を行わなかった場合は、法務局から登記をするように勧告され、それにも従わないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
この相続登記の義務化の対象となる不動産は、新たに相続する土地や建物はもちろん、これまで相続登記が行われていなかったものも含まれます。

すぐに相続登記ができない人の救済措置
 

 不動産を相続した際に相続人が1人しかいなければ、比較的スムーズに相続登記を申請しやすいでしょう。
しかし、相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行い、遺産分割が成立してからでないと相続登記の申請ができません。
遺産分割をせずにすべての相続人が共同で不動産を取得し、そのまま登記に反映することもできますが、ケースによってはかなりの手間と時間がかかる可能性があります。
不動産を共有したまま登記するには、法定相続人の範囲および法定相続分の割合の確定が必要です。

また、相続の際には、相続人が1人でも複数でも、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本等の書類を集めなければいけません。
場合によっては複数の戸籍をさかのぼる必要もあり、手続きが煩雑であることがほとんどです。

これらをふまえ、相続人が簡単に相続登記の義務を果たせるよう、『相続人申告登記』という新しい制度が創設されました。
相続人申告登記は、相続する不動産について相続が開始したことと、自分が相続人であることを3年以内に登記官に申し出ることで、とりあえず相続登記の義務を履行したとみなす制度です。
申し出を行なった相続人の氏名や住所などが登記されることになり、登記簿を見れば、その不動産を相続した相続人が誰なのかを把握することができます。

この制度では、特定の相続人が単独で申し出ることが可能なため、現状でほかの相続人がいるかどうかを明確にする必要がありません。
また、ほかの相続人の代理として、特定の相続人が申し出ることもできます。
さらに、法定相続分の割合の確定も不要です。
手続きとしては、申し出る相続人の戸籍謄本を提出します(場合によっては、ほかの書類も求められることがあります)。
基本的には、戸除籍謄本や複数の戸籍をさかのぼる書類などを収集・用意する必要がなく、大きな費用もかかりません。

ただし注意したいのは、相続人申告登記によって相続人が申し出たからといって、相続登記の申請が済んだわけではないということです。
相続人申告登記は、あくまで相続登記の申請が3年以内に間に合わない相続人のための救済措置であり、ひとまず相続登記の義務を履行したことにする制度です。
10万円以下の過料は免れることはできますが、いずれにせよ相続登記の申請は行わなければいけません。

相続登記の申請は、場合によっては戸除籍謄本の収集や遺産分割協議などを行う必要があり、とても手間と時間がかかります。
相続が発生したら、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

 AIのなかでも『生成AI』の技術は加速度的に進歩しており、近年はさまざまな生成AIを使用したサービスも生まれています。
生成AIとは、AIがみずから学習したデータから新しいテキストや画像、音楽やデザインなどのコンテンツを作り出す技術で、成果物はマーケティングや製品開発などの場面で活用することができます。
日本語で「生成力」を意味する「ジェネレーティブAI」とも呼ばれる生成AIは、革新的で便利な技術である反面、さまざまなリスクも取り沙汰されています。
生成AIのビジネスの活用について、どう判断すればいいのか検証していきます。

さまざまな方面で活用が進む生成AIの現在地


 イラストや写真、デザインを生み出す『MidJourney』『Stable Diffusion』などの画像生成AIや、2022年11月に公開されて大きな話題になった『ChatGPT』などの文章生成AIは、すでに多くの分野で活用されています。
2024年1月には、第170回芥川賞の受賞作『東京都同情塔』が文章生成AIを駆使して書かれたことが、大きな話題になりました。

ビジネスシーンにおいても、文章生成AIでメール本文やレポート、資料などを作成したり、アイデア出しや言語の翻訳、コード生成などを行なったりと、活用が進められています。
自然言語処理技術による日程調整を可能にしたChatGPT搭載のスケジュール管理ツールなども登場し、生成AIは業務の効率化を図るうえで欠かせないものになりつつあります。

大企業でも、画像生成AIツールを広告やキャンペーンで活用しているコカ・コーラ社や、生成AIでソフトウェア開発を行ったLINEヤフーの事例などはよく知られています。
また、NTTやサイバーエージェントなども、独自で生成AIのツールを開発し、積極的に生成AIの使用に取り組んでいます。

また、マーケティングの分野では、生成AIが顧客のデータ分析や行動予測を行う『Adobe Sensei』や、企業の決算を要約して生成AIが出力する経済情報プラットフォーム『SPEEDA』、生成AIの活用で広告のパフォーマンスを最適化する『Albert』など、さまざまなサービスが誕生し、IT企業を中心に導入が進んでいます。

生成AIに潜むリスクをどのように捉えるか
 

 作業を効率化すると同時に、イノベーションの創出も期待される生成AIの活用ですが、一方で、生成AIの使用を禁止している企業も少なくありません。
企業におけるChatGPTへの向き合い方について行なったある調査では、およそ7割の企業が生成AIアプリケーションの使用を禁止しているというデータもあり、生成AIの利点は十分に理解しているものの、さまざまなリスクから使用に踏み切れないという現状が浮かび上がってきました。

では、生成AIに潜むのは、どのようなリスクなのでしょうか。

生成AIには「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる、AIが大量のデータのなかから自動的に生成に必要なものをピックアップして学習する技術が用いられています。
このインプットに必要な大元のデータには知的財産が含まれているケースも多く、もし生成AIが既存の知的財産と類似した成果物を出力し、それを使用した場合、状況によっては著作権侵害に該当する可能性もあります。

また、大元のデータに個人情報や個人を特定する画像などが含まれている場合は、肖像権やパブリシティ権、プライバシーなどの問題も出てきます。
ほかにも、生成AIが出力する誤った情報や偏った情報を、そうとは知らないまま受け取ってしまう可能性もあるでしょう。
近年はSNSなどで、生成AIが作ったフェイクニュースや、偽物の動画が拡散されるケースも増えてきているので、真偽の確認が必要です。

生成AIの使用には、「他者の権利や利益を侵害していないか」という視点を持つことが重要で、生成AIを活用している企業の多くは、使用に関するガイドラインを策定するなどのルール作りを行なっています。

日本では生成AIの活用について、規制する法律がまだ存在しません。
しかし、世界では生成AIとの共存を目指すためのルール作りが進められているため、日本でもAI 戦略会議などで生成AIの利点と問題点が整理されはじめています。
2024年1月には、大学や大手企業で構成される生成AIの業界団体が発足するなど、ルール作りに向けた動きが活発化してきました。
生成AIは活用次第で生産性の向上や業務効率化の面で成果が期待できますが、ルールやガイドラインが未整備であるなど注意すべき点もあります。
まだ過渡期にある生成AIに対して企業としてどのような措置を取るのか、今後の動きを注視しながら、社内で対応を検討していく必要があります。

    約束手形や小切手など、紙の有価証券は将来的に廃止される予定です。これまで企業間取引を支えてきた決済手段が、なぜ廃止に向かっているのでしょうか。現在の約束手形の概要と、そのデメリットを解消するために推奨されている新たな決済手段について説明します。

明治時代から今も続く決済手段  しかし政府は廃止する方針を発表

   約束手形において、発行する側を『振出人』、受け取る側を『受取人』といいます。約束手形は、振出人が一定の期日までに受取人に所定の金額を支払うことを約束する決済手段で、日本では明治時代に普及しました。企業間の取引で行われる現金決済の場合は、商品の受け渡し後の約1~2カ月以内に代金を支払うのが一般的ですが、約束手形であれば、現金決済よりも遅い期日に設定することができます。
中小企業庁の資料によれば、約束手形の支払いサイトの平均値は110日となっています。このように、約束手形による決済は、代金の支払い期限を現金決済よりも伸ばすことができるため、振出人となる発注側の企業は資金繰りの負担が減ります。
 約束手形を利用するには、振出人は銀行に当座預金口座を開設します。そして、銀行から交付を受けた約束手形を受取人に発行することで、口座に残高がなくても高額な取引が可能になります。その後、支払期日までに口座に所定の金額を振り込みます。
一方、受取人は支払期日に約束手形を銀行に提示することで、振出人の口座から決済日に所定の金額を受け取れるという仕組みです。
 資金調達や決済手段の多様化などにより、最盛期だった1990年代と比べると減少している約束手形ですが、現在も高額な資材費や原材料費などが発生する製造業や建設業などで主に利用されています。
しかし、政府は2026年を目処に約束手形と小切手を廃止する方針を打ち出しており、メガバンクも2024年1月から当座預金口座の新規開設者を対象に、紙の手形や小切手の発行停止を発表しました。
また、既存顧客に対しても2027年4月以降を期日とする手形や小切手の受付停止を発表しています。

リスクや負担を軽減するために電子化が推奨されている

   銀行が取り扱いを止めるしまうと、今後は約束手形での取引ができなくなります。長年の慣習だった小切手や約束手形などが廃止されようとしている理由の一つに、受取人の負担があります。受取人の企業にしてみれば、商品を納品したにもかかわらず、長期間に渡って代金が入ってこないことになります。
さらに、振出人が期日までに口座に入金できない場合は、約束手形を銀行に持参しても、受取人は支払いを受けることができません。約束手形が現金化できないことを『不渡り』といいます。そのほかに、受取人が取立手数料や割引料などを負担するなど、受取人のデメリットや振出人に有利な約束手形の取引慣行はかねてから問題視されていました。また、支払期日までに紙の約束手形を紛失しないように保管しておかなければならず、こうしたリスクや事務負担も廃止に向かっている理由です。
 

 現在、経済産業省や全国銀行協会では、紙の約束手形の代替手段として、ネット上で取引できる『でんさい』や『電手決済サービス(以下、電手)』などの利用を推奨しています。どちらも約束手形など紙の手形を電子化したもので、紙の手形と同様に利用でき、ペーパーレス化によってコストや事務負担も軽くなりました。また、紙の約束手形は現金化するために受取人が自社の取引銀行に『取立依頼』をする必要がありましたが、でんさいや電手は支払期日に自動入金されるため、この取立依頼も不要になります。
 紙の約束手形はいずれ廃止されることが決定しています。事務負担の軽減や資金繰りの円滑化など、振出人と受取人の双方にメリットのある電子化された約束手形の利用を検討しましょう。
 

  事業を継続・発展させるために重要な『経営計画』は、策定して終わりではなく、その計画をスタートさせなければ意味がありません。経営計画を策定する重要性や見直しの必要性と、そのタイミングについて確認していきましょう

経営計画はビジョンを明確に示し経営戦略や目標を可視化すること

 人・モノ・金・情報といった経営資源には限りがあり、近年では経済情勢や外部環境の変化も著しいため、経営はいうまでもなく、一朝一夕で成功を収められるほど簡単なものではありません。
そこで重要なのが経営計画です。経営計画とは、経営理念を実現するために、目標やビジョンを明確にし、経営戦略や行動計画を具体的に示すことです。
経営計画のない企業経営は航海にたとえるなら、地図やコンパスを持たずに航行するようなもの。自社が今どこに向かっているのかわからずに働く従業員は、不安になるでしょう。
経営目標や戦略を策定することはもちろん大事ですが、それを可視化できなければ意味をなしません。経営計画を示すことで、社内の暗黙のルールだった目標や方向性が明確になり、事業計画もスムーズに運ぶようになります。そして、それが理念と
なって社内に根付きます。結果、社員側も自分の将来における人生設計が可能となり、安心して働けるようになるのです。
 経営計画がしっかり構築されている企業には、そうでない企業よりも優秀な人材が集まりやすい傾向があります。また、金融機関から融資を受ける場合、そもそも経営(事業)計画がないと審査に通りません。公的な補助金や助成金を申請する際も、綿密な経営計画を策定すると採択率が高まるといわれています。
経営計画の策定は、資金調達において有利に働き、取引先や従業員・求職者からの信用力強化の観点からも有用だといえるでしょう。

社内外環境の変化を早期に見極め,軌道修正することが大きなカギ

 

   策定した経営計画を完璧に遂行するのは事実上不可能です。不確実性の高い時代といわれるなかで、計画通りにいかないことのほうが多いのは当然でしょう。
また、経営計画策定後に非常に重要なのが、定期的に経営計画の進捗を確認することです。見直しのスパンは短期であればあるほど好ましいといえます。特に近年は感染症の流行や物価上昇・為替市況などの観点から、先々を見通すことがむずかしい情
勢です。しかし、むしろこのように事業環境(外部環境)が変化したタイミングこそ経営計画の見直しが必須です。そのなかで、計画が期限内に達成できそうもないと判断されたのであれば、迅速に軌道修正を行いましょう。逆に計画が早期に達成する見込みとなった場合も同様です。
 

   会社経営を成功に導くために重要なツールである経営計画は、策定して終わりではありません。環境の変化に対応しつつ、成長し続けていくためにも、経営計画を策定したあとは、定期的に見直しながら運用していきましょう

 2010年4月から月60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率が引き上げられ、大企業では50%と定められました。改正に伴い2023年4月1日からは中小企業でもこの割増賃金率の引き上げが開始されています。

今回は、この改正のポイントなどについて解説します。

深夜労働や休日労働の取り扱いも見直しへ 割増賃金率を要チェック

 労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、2010年4月1日から労働基準法における月60時間を超える法定時間外労働(以下時間外労働)の割増賃金率が引き上げられ、大企業は即時適用されました。
 中小企業については、その影響の大きさなどが考慮され、適用が猶予されていましたが、改正により2023年4月1日からは、大企業と同じく適用・開始されています。
 これまで、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は、大企業が50%以上、中小企業が25%以上でした。しかし、大企業、中小企業ともに50%以上に改正され、中小企業の割増賃金率の下限が25%から50%に引き上げられました。なお、月60時間以下の時間外労働の割増賃金率は、従来通り、大企業、中小企業ともに25%です。
 そして、この割増賃金率の引き上げに伴い、深夜労働や休日労働を行う場合の取り扱いについても見直されました。
 深夜労働については、月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合には、割増賃金率は75%以上(深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%)となります。 
また、休日労働については、法定休日に行った労働時間は月60時間を超える時間外労働の算定には含まれません。それ以外の休日に行った労働時間は含まれます。なお、法定休日に労働させた場合の割増賃金率は、従来通り35%以上です。

引き上げ分の割増賃金の代わりは代替休暇の付与での対応も可能

 こうした割増賃金率の引き上げに伴い、『代替休暇制度』 が設けられています。この制度は、月60時間を超える時間外労働を行なった労働者の健康を確保するため、引き上げ分(25%)の割増賃金の支払の代わりに、有給の休暇(代替休暇)を付与することができるというものです。ただし、代替休暇を付与したとしても、60時間以上で引き上げられた分以外の割増賃金は支払う必要があります。
 この制度の主な内容は、次の2つになります。
①付与する代替休暇の時間数は、「(1カ月の法定時間外労働時間数-60)×換算率」で算定します。
換算率は、「代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率-代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率」です。
②特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会を確保する観点から、代替休暇は、まとまった単位(1日、半日、1日または半日のいずれか)で、一定の近接した期間内(法定時間外労働が月60時間を超えた月の末日の翌日から2カ月間以内の期間)に付与しなければなりません。
 また、代替休暇制度の導入にあたっては、労使協定を結ぶ必要がありますが、この協定は労働者に代替休暇の取得を義務づけるものではありません。
実際に代替休暇を取得するかどうかの決定権は労働者にあり、労働者は割増賃金の支払いを受けるか代替休暇を取得するかを任意で選択できます。
 

 事業者においては、割増賃金率の引き上げや代替休暇制度の導入に合わせて、必要な就業規則の変更がなされているかを確認することが大切です。
従業員の労働時間を適切に管理し、賃金を適正に支払うという労務管理の基本を徹底しましょう。

  1年間の所得税の額を算出し、税務署に申告・納税する手続きを確定申告といいます。個人事業主などは、所得があった年の翌年の指定された期間中に確定申告を行う必要があります。新たに確定申告をする必要がある人に向けて、確定申告に役立つ相談先を紹介します。

確定申告の有無を確認しておく無申告はペナルティの危険あり
  

  法人の確定申告は事業年度ごとの決算に基づいて行うため、一律で決まった期日はありませんが、個人事業主は毎年2月16日から3月15日という短期間で確定申告を行わなければいけません。また、個人事業主以外も、投資や不動産取引などで一定の所得が発生している人や、一定額の公的年金を受給している人、1年間の給与所得が2,000万円を超える会社員、副業など本業以外での所得が20万円を超える人なども、この期間内に確定申告を済ませる必要があります。
 確定申告は自身で1年間の収支と支出に基づき、納めるべき所得税額を計算しなければいけません。
煩雑な計算や制度のむずかしさなどから、多くの人が「手間がかかる」「よくわからない」と感じています。しかし、確定申告を行わない『無申告』のままでいると、税務署から税務調査を受ける可能性があり、場合によっては無申告加算税や延滞税などが課せられ、本来の税金以上の額を納めなければいけないこともあります。
 こうしたペナルティを受けないために、手間や時間がかかっても期日までに確定申告を行う必要があります。もし、わからないことや確定申告の方法を確認したい場合などは、さまざまな組織や団体が設けている相談窓口などを利用しましょう。
たとえば、税務のプロである税理士事務所では、確定申告時期に無料の相談会を開いているところが少なくありません。また、費用はかかりますが、確定申告の手続きそのものを税理士に引き受けてもらうことも可能です。税理士への依頼は、優遇税制や節税対策など、事業や税金についての有効なアドバイスをしてくれるというメリットがあります。

 

期間中には相談会場などが開設  電話やチャットなどでも相談できる

   確定申告の書類を提出する税務署の多くも、期間中に相談会場などを設けています。ただし、職員は確定申告の方法や相談に乗ってくれますが、書類自体は自分で作成しなければいけません。原則として、税務署は全国一律で開庁時間が月曜日から金
曜日の8時30分から17時までと決められており、一部の税務署では特定の日曜日に相談を受け付けているところもあります。また、確定申告期間中は会場が混雑することが予想されるため、あらかじめ電話などで確認や予約をしておくとよいでしょう。
 来署することがむずかしい場合は、電話で相談することも可能です。各国税局には国税局電話相談センターが設置されており、税金に関する質問に答えてもらえます。電話相談は受付時間内のみの対応となりますが、国税局では税務相談チャットボット
『ふたば』を2020年から導入しており、こちらは24時間いつでもAI(人工知能)が対応してくれます。
所得税や消費税の確定申告に関する質問などに答えてくれるので、相談したいことがあれば、まずはスマートフォンやパソコンなどからチャットボットを利用してみることをおすすめします。
 税理士や税務署のほかにも、市区町村役場の税務に関係する窓口や、商工会議所や商工会の開催する相談会などでも、確定申告について尋ねることができます。また、会員限定になりますが、各地の青色申告会では確定申告についてさまざまな支援を
行なっています。青色申告会とは青色申告を行う個人事業者のための納税者団体で、各地域の税務署ごとに点在しています。こうした団体や組織の力を借りながら、間違いのない適切な確定申告を行いましょう。

 限りある経営資源をどう効率よく活用するかは、経営者にとって悩ましい問題です。経済産業省は中小企業に対するさまざまな支援策を公表しています。それをふまえて中小企業がどのようにして自力で販路を開拓し拡大していくかについて解説します。

頑張る中小企業を応援するために国が示す販路拡大施策とは

 国際情勢の悪化に伴い、物価上昇などによる不況が長期化しています。また、グローバル化の進展などで中小企業は下請けの取引だけでなく、自社で販路を開拓する必要に迫られています。このような背景のなか、自社の製品やサービスを新規市場に
展開するにはどうすればよいのでしょうか。
 中小企業のなかには優れた新製品や新技術・新サービスを備えながら、販路の開拓に苦心しているケースは非常に多くあります。その理由としては、「新規性が高いがゆえに具体的な市場が顕在化していない」「さらに広域的な販路開拓を行いたいが
手がかりがない」などが挙げられます。経営資源に限りがある中小企業にとって、自社単独で販路開拓を行うのは至難の業といえます。
 そこで、このような悩みを抱える中小企業が活躍できるよう、国はさまざまな施策を打ち出しています。そのなかの一つである『販路拡大施策』は、主な施策として、独立行政法人中小企業基盤整備機構による『販路開拓コーディネート事業』を行っています。これは販路開拓に苦心する中小企業などを対象に、豊富な販路ネットワークを持つ販路開拓コーディネーターを中心として「ブラッシュアップ支援「テストマーケティング支援(市場へのアプローチの手がかりをつかむこと)」「フォローアップ支援」を行う事業です。   
 具体的には、マーケティング企画立案支援を行い、想定される市場を分析し販路を絞り込みます。そして、想定市場企業への同行訪問によるテストマーケティングを行い、フィードバックします。最終的に自社単独で販路開拓を実施できるよう、支援するというわけです。

人的なリソースが少ない企業では専門家への相談やIT活用を検討

 販路拡大費用を補助する施策としては『小規模事業者持続化補助金』があります。こちらは、商工会や商工会議所の支援を受けながら、持続的な経営に向けた経営計画を作成し、販路開拓や生産性向上に取り組む小規模事業者に対して、その費用の
一部を補助する制度です。具体的には、各地の商工会議所で行われている販路開拓・拡大にあたり、たとえば東京商工会議所では大手バイヤー企業の購買担当者と直接商談する機会を設けています。
 このほかにも、中小企業診断士などの専門家に相談することも一案です。また、人手不足により販路開拓に踏み出せない場合は、生産性をあげるためにITの活用を検討してもよいでしょう。
 販路開拓を行うには、広範囲において自社製品やサービスを展開できるようにすることが大切です。
その際、どのポジションに経営資源を投入すれば他社と差別化できるのかを見極めることが重要といえます。政府による支援や補助金など外部資源を上手に活用しながら、自社製品やサービスの販路開拓をすすめていきましょう。

 2023年10月1日からインボイス制度がスタートしました。免税事業者から課税事業者になると、これまでの所得税や法人税の確定申告に加えて、消費税の確定申告も行う必要が出てきます。
新たに課税事業者となった際に必要な、確定申告の基礎知識を説明します。

インボイスの請求書ではなくても1万円未満は仕入税額控除がOK

 免税事業者が適格請求書(インボイス)を発行するために適格請求書発行事業者として登録すると、課税事業者になります。免税事業者とは消費税の納税が免除されている事業者のことで、課税事業者とは消費税を納税する義務を負った事業者のことです。そのため、課税事業者は1年に一回、消費税の確定申告をしなければいけません。消費税の申告と納付の期限は、個人事業主であれば毎年3月31日(土日の場合は翌月曜日)、法人は課税期間終了日の翌日から2カ月以内です。
 ここでいう消費税は間接税といって、課税事業者が消費者や取引先などが支払った消費税をいったん預かり、代わりにまとめて納税する税金です。
 課税事業者も仕入れなどで消費税を支払っているため、二重課税にならないよう、確定申告の際には消費者や取引先から預かった消費税額から、仕入れなどの際に支払った消費税額を控除することができます。これを『仕入税額控除』といいます。ただ
し、インボイス制度の導入により、仕入税額控除を行うためには、インボイスとして発行された請求書や領収書が必要になります。
 インボイスではない請求書や領収書などは控除することができないため、その分の負担が増してしまいます。そこで、少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、一定の期間はインボイスの保存がなくても仕入税額控除が可能になる『少額特例』と
いう緩和措置が取られます。この措置の対象になるのは、基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者で、適用期間は2029年9月30日までです。

確定申告で行う消費税の計算と課税事業者の事務負担軽減がカギ

 インボイス制度導入により、税負担や事務負担の増加が懸念されています。そこで新たに課税事業者となった小規模事業者を対象に、『2割特例』という支援措置も取られます。これは、2026年9月30日までの3年間は、納税額を預かり消費税の2割程
度にできるというものです。
 納税する消費税額算出のための仕入控除税額の計算方法は、事業者ごとに異なり、複雑です。たとえば売上が700万円で経費が150万円の場合、従来は一般課税の場合、消費税額が55万円ほど、簡易課税の場合は35万円(サービス業のみなし仕入率で算出)ほどになります。しかし、2割特例では売上700万円の消費税となる70万円の2割、つまり14万円が納める消費税額になります。  
 

 このように、さまざまな緩和措置が設けられていますが、あくまで期限つきの措置ということを理解しておきましょう
消費税の確定申告に必要な確定申告書や消費税額計算表などの書類は、国税庁のホームページや税務署の窓口で入手できます。確定申告書には、課税標準額や仕入税額、納付税額や消費税額などを算出したうえで、それぞれの数値を正しく記入し、税
務署に提出しなければいけません。
 インボイス制度はスタートする前から、導入により事務負担が増すことが懸念されてきました。特に確定申告は、知識も時間も必要です。新たに免税事業者から課税事業者になった事業者は、事務負担の軽減のためにもインボイス制度に対応した会計
ソフトの導入や、税理士など専門家への依頼なども検討することをおすすめします。

 

インボイス制度のことやその他会計・税務のことでお困りのことは斎賀会計事務所までお気軽にご相談ください。

 定年とは、従業員が一定の年齢に達したことを退職の理由にする制度のことです。
現在、『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律』、通称『高年齢者雇用安定法』によって、定年年齢は60歳を下回ることはできません。
同法では、さらに事業者に対し、高齢者の雇用を確保することを義務づけています。
そのなかの措置の一つが、『定年制の廃止』です。定年制を廃止することで、企業はどのような影響を受けるのでしょうか。
メリットやデメリットを含め、企業における定年制度の廃止について、考えてみます。

企業における定年制度についての現状
 高年齢者雇用安定法に基づき、企業は労働者の65歳までの雇用を確保しなければならず、「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」のいずれかの措置を講じるように義務づけられています。

2022年12月に公表された厚生労働省の『令和4年高年齢者雇用状況等報告』によれば、報告を行った従業員21人以上の企業23万5,875社のうち、99.9%の企業が『高齢者雇用確保措置』を実施しています。
この措置の内訳を見てみると、「定年の引上げ」が25.5%、「継続雇用制度の導入」が70.6%、そして「定年制の廃止」は3.9%でした。
雇用確保措置として採用されることの少ない定年制の廃止ですが、廃止を行う企業は年々増加傾向にあり、今後は『定年制のない会社』がそこまで珍しい存在ではなくなるという見方もあります。

さらに、高年齢者雇用安定法が改正され、2021年4月からは、現行の65歳までの雇用確保(義務)に加え、70歳までの就業機会を確保するために以下のいずれかの措置を講じることが努力義務とされました。

・70歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・70歳までの継続雇用制度の導入
・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
・70歳まで継続的に以下(1)(2)の事業に従事できる制度の導入
(1)事業主がみずから実施する社会貢献事業
(2)事業主が委託、出資などする団体が行う社会貢献事業

あくまで努力義務ですが、この措置のなかにも定年制の廃止が含まれました。
定年制の廃止は、少子高齢化や労働者不足などへの対応策として注目を集めており、労働者人口を確保するための施策として期待されています。

定年制を廃止するメリットとデメリット
 定年制を廃止するメリットはいくつかあり、そのなかでも高齢従業員が持っているノウハウや人脈を引き続き活用できるという点は、最大のメリットといえるでしょう。
たとえば経験が豊富な高齢従業員は、トラブルが起きたときの問題解決能力も高く、会社になくてはならない存在です。
ベテラン従業員が会社に在籍している間に、若手従業員を育てることで企業の底力アップにもつながります。
このほかにも、定年制を廃止することで退職時期を遅らせ、退職のタイミングを分散させることができます。
そのぶん、新規で人材を採用する必要がありません。
つまり、採用コストを削減できるメリットもあります。

一方で、デメリットとしては、人件費の増大や世代交代が進まないなどの問題が考えられます。
たとえば、年功序列で在籍年数が多いほど給与が上がる日本企業の場合、定年制が廃止されることにより人件費が増大します。
また、成果をあげているのに、ベテラン従業員がいることにより出世できないと、若手従業員の不満が溜まり退職につながる恐れもあります。
このほかにも、加齢によって業務遂行がむずかしくなる高齢従業員が出てきてしまう可能性もあるでしょう。
判断能力や業務遂行能力の低下は、会社の生産性や売上の低下を招くことにもなりかねません。

定年制度が普及している日本では、従業員が定年の年齢に達すると、労働契約が解除され、従業員は退職していくことになります。
しかし、定年制を廃止することで、高齢従業員は一定の年齢を迎えても労働契約を解除されることはありません。

定年制を廃止した企業における高齢者の退職としては、従業員の申し出による自己都合退職や、労使の合意による合意退職、会社都合による解雇、従業員の死亡による退職などが考えられます。
加齢による身体および認知能力の低下、病気などで業務に支障が出るような状態であれば、簡易な業務への転換や、出勤日時の調整などを検討します。
それでも働き続けるのがむずかしい場合は、該当従業員の意思を確認したうえで合意退職となります。
もし、合意に至らなければ、退職勧奨や解雇などの選択肢を選ぶことになるかもしれません。

定年制を廃止する際は、定年以外の退職方法を理解したうえで、就業規則の変更が必要です。
就業規則から定年の項目を削除する際は、退職金制度なども変更することになるため、従業員の不利益な変更にならないように注意します。
定年の廃止を行うかどうかは、自社の事情をふまえたうえで社労士など専門家に相談しながら、検討することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。
 

   これまでバスやタクシー、トラックなどの自動車を運転する業務は、労働基準法による残業時間の上限規制が設けられていませんでした。しかし、労働基準法の改正により、2024年4月1日からは時間外労働の上限規制が適用されることになります。「2024年問題」とも呼ばれる自動車運転の業務における時間外労働の上限規制について確認しておきましょう。

ドライバーに対して適用される時間外労働の上限規制

   2018年に働き方改革関連法案が成立し、労働基準法が改正されました。この改正によって、ほとんどの企業は時間外労働の上限が原則月45時間・年360時間になり、臨時的な事情がない限り、これを超えることができなくなりました。臨時的な事情があって労使が合意する場合も、時間外労働は年720時間以内などの規制があります。多くの企業に適用されるこれらの基本的な規制を『一般則』といいます。この上限規制について、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用が始まりました。
 しかし、業務の特殊性や、短期間での切り替えがむずかしいことを理由に、自動車運転の業務などに対しては、5年間の猶予が設けられていました。この猶予が終了し、適用がスタートするのが2024年4月1日です。適用が始まると、自動車運転の業務についても、時間外労働の上限規制が原則月45時間・年360時間となり、臨時的な事情がある場合は、労使間で特別条項付き36協定を締結したうえで,年960時間(休日労働含まず)が限度となります。ただし、年960時間は月平均で80時間となりますが、1カ月の上限の規制はありません。
 これらの時間外労働の上限規制は、あくまで自動車運転の業務に対する規制です。運送業でも、ドライバーではない運行管理者、事務職、整備・技能職、倉庫作業職などは一般則が適用されます。ほかにも一般則では、特別条項付き36協定における時間
外労働と休日労働について、月100時間未満・2~6カ月平均80時間以内などと規制されていますが、自動車運転の業務には適用されません。また、一般則の『時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回まで』という規制も適用外となります。

改正改善基準告示も適用開始事業者が向き合う2024年問題

   時間外労働の上限規制には罰則が設けられており、違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるので注意が必要です。また、2024年4月1日に適用がスタートするまではドライバーをいくらでも働かせてよいというわけではありません。厚生労働省ではドライバーの拘束時間や休息時間などの基準となる『自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)』を定めており、これに違反すると労働基準監督署から指導や是正勧告を受けることになります。
 この改善基準告示も改正され、新しい基準が2024年4月1日から適用されます。改善基準告示による規制はタクシー・ハイヤー、トラック、バスと,業種によって異なります。たとえばトラック運転者は、これまで1カ月の拘束時間が原則293時間、最
大320時間でしたが、2024年4月1日からは原則284時間、最大310時間になります。この改正された改善基準告示をもとに、事業者はドライバーの勤怠を見直す必要があります。
 

 いわゆる2024年問題と呼ばれるこれらの規制は、運送業の経営悪化を招くともいわれています。
時間外労働の上限規制の適用によって、ドライバーの荷物を運ぶ量が限られてしまうため、物流の脆弱化や運賃の上昇、さらにはドライバーの人手不足に拍車がかかるといった懸念があるからです。しかし、長時間労働が常態化している自動車運転業務においては、ドライバーの事故や過労死を避けるためにも、今回の上限規制の適用と、改善基準告示の改正に伴う適切な勤怠管理を行っていかなければいけません。運用開始はまもなくです。業務スケジュールの見直しや、作業の効率化など、自社で行える取り組みを考えていきましょう。