近年は会計ソフトの普及により、経営者や経理担当者が必ずしも簿記の知識を持っている必要はなくなりました。
しかし、本当の意味で会計業務を理解するためには、簿記に関する知識が必要です。
簿記の知識は、会社の財政状態や経営成績を把握する力やコスト感覚を養ううえで

役立ちます。
経営戦略も立てやすくなることでしょう。
今回は、簿記についての基本的なことのほか、簿記を学ぶ多くの人が挑戦している日商簿記検定試験について解説します。
 

簿記には『単式簿記』と『複式簿記』がある

   簿記とは、企業等のお金の流れを一定の方式で帳簿に記録していく記帳法のことを

いいます。
簿記はヨーロッパにおいては大昔からあるもので、日本では1873年に福沢諭吉が

日本で初めて西洋の商業簿記を基にした『帳合之法』を出版したことで、導入が

始まったといわれています。

現在の簿記は、記帳法の違いによって『単式簿記』と『複式簿記』の2種類に分けられます。

単式簿記は、主に現金の増減に関して、収入と支出のみを記録するというシンプルな

記帳法です。
お小遣い帳や家計簿などがその典型で、比較的資産状況が簡易なものによく使われます。
出入金を把握するだけなら、単式簿記で十分でしょう。

一方、複式簿記では、“複式”の名前のとおり、一つの取引を『借方』と『貸方』という

二つの側面から記録していきます。
借方と貸方とは、いわば取引の“原因と結果”を意味するもので、この二面から

取引を記録することで、現金の出入金だけでなく、それに伴う資産や負債の増減や

利益についてもわかるようになります。
ひいては、経営成績や財政状態を把握することができるのです。
このように、借方と貸方に分けて記帳することを『仕訳』といいます。

複式簿記の手順は単式簿記よりも複雑で、より多くの知識が必要ですが、

企業の会計業務に使用されるのは、原則的に複式簿記のほうです。
企業の決算報告ではこの記帳法で作成された損益計算書と貸借対照表を公表することに

なっています。
企業の会計処理において、『帳簿』という言葉が出たら、ほぼ複式帳簿のことだと考えて

間違いないでしょう。

また、複式簿記による記帳は、青色申告で65万円の青色申告特別控除を受けて

確定申告をする際の要件の一つになっています。
節税の意味でも、複式簿記はぜひとも覚えておきたいところです。


簿記の知識が身につく日商簿記検定試験

   簿記を学ぶ際に活用したいのが検定試験で、代表的なものには、日本商工会議所と

各地の商工会議所が主催している『日商簿記検定試験』(以下、日商簿記)があります。
日商簿記は社会的に高い信頼を得ている検定で、企業が従業員に対して資格取得を

奨励していることも多く、年間で約60万人が受験しています。
試験は全国統一日程で、年に3回、6月と11月と2月に行われています(1級は年2回)。
また、3級と2級については随時ネット試験も実施されています。


実際に日商簿記を受けるかどうかは別として、各級の合格ラインを目標にして勉強することはモチベーションを保つうえでも効果的ですし、テキストもたくさん出ているので、勉強をする際に教材がなくて困ることはありません。

日商簿記で取り扱うのは複式簿記で、初級、3級、2級、1級という級ごとにさまざまな

簿記の知識が問われます。
初級は、複式簿記の基礎的な仕組みを理解しているかどうかを問う、簿記初学者向けの

入門級で、実際に、会社の会計処理で必要になってくるのは、3級以上のスキルです。
3級以降の概要は以下の通りです。

●3級
初歩的な商業簿記の知識が問われます。
小規模企業の企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類を適切に処理するスキルが

求められます。
3級を取得していれば、損益計算書や貸借対照表の作成方法などは身についていると

いえるでしょう。
2020年11月の試験の合格率は47.4%(合格者数30,654名)でした。

●2級
高度な商業簿記と工業簿記の知識が問われます。
財務諸表を読む力があるなど、企業活動や会計実務を踏まえたうえで適切な処理・分析が

できるレベルが求められます。
企業の経理担当者であれば、ぜひとも取得しておきたい級でもあります。
2020年11月の試験の合格率は18.2%(合格者数7,255名)でした。

●1級
極めて高度な商業簿記をはじめ、会計学、工業簿記、原価計算の4科目を習得していることが合格の基準になります。
会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うことができるレベルです。
1級を持っていれば、複雑な会計を扱う大企業の経理や会計処理を担当することも可能だと考えられますし、税理士試験の受験資格も得られます。
難易度が高いため合格率は低く、2020年11月の試験の合格率は13.5%(合格者数1,158名)でした。

ちなみに、日商簿記以外にも、全国経理教育協会が主催する『全経簿記能力検定』や、

大阪商工会議所および施行商工会議所が主催する『ビジネス会計検定試験』なども

あります。
簿記検定は、自分が現在どのくらい簿記の知識があるのかを測るためのよい目安となるので、気になる試験があれば、受けてみてもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。

  『36協定届』は、正式には『時間外・休日労働に関する協定届』といい、

会社が従業員に対して法定労働時間を超える時間外労働や休日労働を命じるためには、

これを所轄の労働基準監督署に届け出ておく必要があります。
この36協定届が2021年4月1日から新しい様式になり、これまで必要だった押印や署名が

不要になったほか、労働者代表についてのチェックボックスが新設されました。
 

使用者と労働者代表の押印と署名が不要に

労働基準法施行規則等の一部が改正され、2021年4月1日から、『36協定届』の様式が

新しくなりました。

1点目の変更点は、使用者と労働者代表の押印・署名が不要となったことです。
ただし、これは署名・押印をした『36協定書』を交わしていることが前提であり、

『36協定届』が『36協定書』を兼ねる場合は、従来と同じく押印・署名が必要となります。

36協定は、1日8時間、週40時間という法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合や

法定休日に労働させる場合に、使用者と労働者が締結する労使協定です。
協定を締結する際には、使用者と労働者代表との間で書面による合意が必要となるため、

36協定書を作成します。
そして、その内容を36協定届の様式に記入し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
この36協定届は36協定書を兼ねることができるため、36協定届のみを作成している企業もあるでしょう。
その場合は従来どおり、労使双方の合意がなされたことを示す押印・署名が必要になります。

労働者代表に関するチェックボックスが新設

2点目の変更点は、労働者代表についてのチェックボックスが新設されたことです。

ここでの労働者代表とは、企業で働く従業員の過半数で組織する過半数労働組合か、

もしくは、労働者の過半数を代表する過半数代表者のことを指します。
チェックボックスは、この労働者代表に関して、正式な手続きを踏んで選出された者であることなどを確認するために設けられました。

もし、事業所に過半数労働組合がない場合は、36協定の締結をする者を選ぶということを

明確にしたうえで、投票や挙手などの方法で労働者の過半数代表者を選出しなくてはなりません。
そして、その選出方法を36協定届に記載する必要があります。

過半数代表者を選出する際に留意したいのは、使用者である企業側が労働者の代表を選出できないということです。
過半数代表者は、正社員はもちろん、パートやアルバイトなども含めた全ての労働者によって選出されなければならず、使用者の意向に基づいて選出してはなりません。
また、管理監督者が過半数代表者になることもできません。

もし、適切に過半数代表者が選出されていない場合には、36協定は無効となり、

使用者による時間外労働命令や休日勤務命令も効力がなくなります。
過去には、残業命令に従わなかった従業員を解雇したが、36協定が無効とされた結果、

解雇自体も無効となった判例があります。
企業側は、適切な選出方法で過半数代表者が選ばれているか、確認しておきましょう。

電子申請による届出が推奨されている

現在は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、労働基準監督署に直接出向いて届出や申請をすることは控えるように通達が出ており、36協定届も電子申請で行うことが推奨されています。

電子申請は、政府が運営するポータルサイト『e-Gov(イーガブ)』から行うことができます。
36協定届のほかにも、就業規則の届出や1年単位の変形労働時間制に関する協定届、最低賃金の減額特例許可申請など、労働基準法や最低賃金法などに定められた届出や申請は電子申請が可能です。
e-Govからアカウントを登録し、フォーマットに必要事項を入力するだけで手続きができるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

なお、新しい36協定届の記入方法などは、厚生労働省のホームページの周知用リーフレットで確認することができます。
36協定届を提出した後は、協定を締結したことを各作業場の見やすい場所に常時掲示したり書面を交付したりして、従業員に周知しましょう。

36協定届は、時間外労働や休日労働を命じるために必要不可欠なものです。
漏れのないように正しく記載して、届け出るようにしましょう。

※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。

  業務を任せていた責任者の退職は、会社にとって大きな痛手です。そればかりか、元従業員の独立開業により取引先を奪われたり、情報漏洩問題が発生したりというトラブルが生じることも。

今回は退職した従業員とのトラブルを防ぐ、労働契約時の義務について説明します。

さまざまなケースがある元従業員とのトラブル事例

  従業員の退職は、会社の業務に少なからず支障を生じさせるだけでなく、その従業員の退職後の動向によって会社が大きなリスクを負うこともあります。

退職した従業員がライバルとなる会社を立ち上げたり、フリーランスで独立開業したりなどの行為により、以下のようなトラブルに発展する場合も考えられます。
 

●取引先に自社よりも安い金額などで交渉され、結果 的に取引先を奪われる
●機密情報を持ち出し、競合他社に漏洩される
●顧客を持っていかれる
●社員を引き抜かれる
 

  こうした行為のなかには、法律で禁止されているものもあります。それを知っていて意図的に行う退職者もいれば、違法行為になることを知らずにやってしまい、結果的に元いた会社に損害を与えてしまったという退職者もいるでしょう。
 どちらの場合にせよ、会社としては、リスクが顕在化しないように対策をとらなければなりません。
 また、『元従業員が在職中に機密情報を持ち出していた』『ほかの従業員を引き抜くために声をかけていた』など、退職後に判明した在職中の行為であっても、労働契約に違反する可能性があります。在職中であれば懲戒処分の対象となりますし、退職後にこれらの行為が判明し、会社が損害を被った場合は、損害賠償請求をして責任を追及していくことになります。
 実際に従業員または退職した元従業員に対してどのような責任追及ができるかについてはケースバイケースになるため、会社としては基本的な考え方を理解しておくことがポイントといえるでしょう。

労働契約時に発生する守るべき3つの義務とは

  原則として、従業員は退職・転職をする権利があり、独立開業をする権利も認められています。これは憲法で認められている『職業選択の自由』ですから、会社が禁止することはできません。ただし、会社と従業員とで労働契約を結ぶと、従業員は『労務提供義務』や『秘密保持義務』、『競業避止義務』などの義務を負います。
  労務提供義務とは、労働契約を結んだ労働者が、勤務時間や休日、業務内容など労働契約で交わした条件・内容の労務を提供する義務のことをいいます。会社は労働者に対して業務についての命令等をする権利があり、労働者はその命令に従う義務が生じます。
  秘密保持義務は、業務上知り得た秘密について外部に漏らすことを禁止し、それを守る義務のことです。
在職中の労働者だけでなく、退職者に対しても適用する場合があります。
  そして競業避止義務は、従業員に、在職中または退職後に、会社の利益を害するようなことを行わないよう義務づけるものです。従業員は、会社の利益を不当に害することのないよう誠実に行動しなければなりません。このような観点からしても、取引先や顧客を奪う・自社の技術を外部に持ち出す・社員を引き抜くなどの行為は、競業避止義務に違反する可能性が高いのです。
 具体的な対応策としては、労働契約時に、『退職後の独立開業』について従業員との間で『競業避止義務契約』の締結をしておくとよいでしょう。従業員の職業選択の自由を不当に害するものとならないよう、競業避止義務の範囲を明確に定めることが重要です。
 

  退職した従業員とトラブルになり会社が損害を被ることにならないよう、日頃から退職後の決まりを定め、会社と従業員の認識を揃えておきましょう。

  ネットを利用した集客方法として、リスティング広告やメルマガなどの方法があります。このうちメルマガは歴史が古いものの、依然として多くの会社が収益につなげるために活用していることも事実です。集客方法としてのメルマガには、どんな有効性があるのでしょうか。

メルマガならではの集客上のメリットとは

  メルマガとはメールマガジンの略で、企業やWebサイトの運営者などから購読希望者に対して一斉に配信されるメールのことをいいます。SNSのように世界中に発信されるのではなく、特定の相手にのみ配信される手紙のようなものであるため、その特性を活かして得られるメリットは多くあります。


●すぐに始めやすい
 ホームページやランディングページなどは、ある程度の知識があれば専門家でなくても作れるようになったとはいえ、ある程度パソコンの知識が必要になります。しかしメルマガは基本的に文章を書いて送信するだけなので、パソコン作業が苦手な人でも始めやすいのがメリットの一つです。


●相手が親近感を抱きやすい
 メルマガは相手のメールボックスに届きます。メールボックスは基本的に手作業でチェックするものなので、顧客の目に触れやすく、顧客が送り主に対して親近感を抱きやすくなります。
 

●顧客の好きなペースでメールを開くことができる
 メルマガはクリックしてメールを開かなければ本文を読むことができません。つまり、メルマガを読むときは顧客が「読もう」と思って自主的にアクションを起こしたときなのです。読む余裕のあるタイミングで読んでもらえるため、内容が頭に残りやすいともいえます。

メルマガの効率を上げるには?企業の実例から学ぶヒント

  次に、メルマガで集客の効率を上げる方法を、実例を含めていくつか紹介します。
 ある企業では、経理や労務などの管理部門で働く人をターゲットとしたメルマガを発行。   

 日々の業務で役立つ仕事のヒントなどを配信するとともに、定期的に開催するセミナーの

 告知もメルマガ上で行っていました。内容がセミナー開催の告知ばかりになってしまうと、

 メルマガを開いてもどうせ広告だろう、と思われて開封率が下がってしまいます。しかし、

  メインの内容をお役立ち情報とすることで、「このメルマガを読むと仕事の役に立つ」と 

  認知され、メールの開封率とセミナー参加人数のアップに成功しました。
 また、あるアパレル企業では、メルマガで新商品を紹介しています。メールはテキストだけで  なく画像やイラストなどを多用できるよう、HTMLメールを使用。
  新商品の紹介だけでなく、コーディネート例やほかの商品との組み合わせ例などを多数掲載  することにより、ECサイトへの誘導と購買につなげています。
 メルマガを使った集客の効率を上げるには、メルマガのターゲットが一番メールを開きやす

 い時間や購入(またはセミナーなどの申し込み)につながりやすい時間帯を分析し、その時

 間に合わせてメルマガを配信することも重要です。
 そして、顧客は届いたメルマガの件名を見て『読むか捨てるか』を瞬時に判断することも

 忘れてはいけません。ユーザーが登録しているメルマガは複数あることが多いため、

 まずは件名で「読んでみようかな」と思わせることが何よりも大切です。
 相手の都合を踏まえた戦略を立て、メルマガを効率的に使っていきましょう。

  日本は内需の国であるといわれていますが、今後は国外の取引などへの拡大意欲はさらに活発になっていくことが予想されます。そこで今回は、ECサイトの売上げ拡大のために、

海外向けのネット販売にトライする方法を紹介します。

言語の問題をクリアするのが海外向けネット販売の必須条件

 日本で商品を作って海外向けに売りたいと考えたとき、ネット販売であれば実店舗を持つ

必要がなく、商品ができたらすぐサイトに掲載し、販売を開始することができます。

店舗までの配送、消費者の目に触れるまでの時間も大幅に短縮することができます。
 また、世界の共通言語である英語に対応したECサイトを運用することで、

多くの国に向けて情報を発信することが可能になります。

商材にもよりますが、日本製品は「良質で丁寧に作られている」「細部まできめ細やかな

配慮が見られる」と海外での信頼が厚いもの。
メイド・イン・ジャパンの価値を認める市場を見つけることができれば販売面で有利に

なるでしょう。
 一方で、海外向けの販売サイトを運用するうえで、まず大きな壁となるのが言語である

ともいえます。相手国の言語ごとに、その語学に長けたスタッフを入れることができれば

問題ありませんが、それでも複数の国を相手にするとなると、販売者側と顧客との

コミュニケーションがうまく取れないという問題が起こりやすくなります。
 そして、商品を顧客に届ける段においては、海外に向けて発送することになるため

送料もかかりますし、配送の日数もかかります。

顧客に海外サイトのデメリットを感じさせないよう、商品以外に支払う代金や商品到着の

正確性などに強みを持たせたほうがよいでしょう。

想像より簡単! ECモールとネットショップ作成サービス

 自分でECサイトを作るのが困難な場合は、『Amazon』や『楽天』、『eBay』などの

ECモールを利用すれば、アカウントを取得して商品を登録し、すぐにお店を出すことが

できます。

ECモールはプランによって出店料や月額費用などの固定費が発生しますし、販売手数料などを運営会社に支払う必要があります。しかし、商品を検索したユーザーを取り込むSEO対策に長けているため、比較的集客しやすいといえるでしょう。
 もう一つの方法としては、『BASE』や『カラーミーショップ』のようなネットショップ作成サービスがあります。ECモールに比べてレコメンドといった販売促進機能が少なく、集客やリピーター獲得のための工夫をする必要があります。しかし、登録費や固定費は無料というサービスが多いため、余計なコストをかけずに販売を開始することが可能です。
 どちらも商品さえあればすぐに販売を開始できるというのが最大のメリットです。
 海外で商品を販売する際は、消費税はかかりません。
仕入れ先が国内の場合は商品の仕入れの際に消費税を支払いますが、課税事業者であれば還付を受けられます。確定申告の際に忘れずに申告しましょう。
 一方、海外の顧客に課税されるのが関税です。関税は国によって制度が違うため、

顧客の国によって、顧客が最終的に支払う金額が変わってきます。また、欧州では

関税のほかにVAT(付加価値税)もかかるので注意が必要です。

サイト上で関税等見込み額を明示し忘れないようにしましょう。
 

  扱う商品や、運営にかけられる時間、売上の目標や運営予算などを考慮しながら、

海外でのネットショップ販売にトライするのもよいかもしれません。

  働き方改革によって、今までよりも副業を許可する会社が増えました。従業員に副業を認めると、会社はこれまでとは違う問題にも直面することになります。今回は、副業にまつわる労働時間や割増賃金についての知識を確認していきましょう。

 

副業を希望する社員が増加中解禁前に規程のチェックを

 

2019年にパーソル総合研究所が実施した『副業の実態・意識調査』によると、正社員のうち『現在副業している』と回答した人は10.9%、正社員の非副業者のうち『副業意向あり』と回答した人は41.0%でした。
 いまだに多くの企業が副業禁止であることを考慮すると、したくてもできない副業希望者は相当数いると推測され、副業解禁により、副業をする正社員はさらに増加していく可能性が示されています。
 ところで、副業といっても多種多様なスタイルがあります。正社員とアルバイト・パートをかけ持ちするケース、どちらともアルバイトでかけ持ちするケース、正社員として2つの会社で就業するケース、正社員として働くとともに個人事業主として仕事を請け負うケースなど、本人の希望によってさまざまな働き方があります。
 しかし、こうした副業をよしとしない会社も依然として少なくありません。そこには、副業のさまざまな問題点が隠れています。
 たとえば、コンサルティングファームで働いている人が、副業として同業他社でコンサル業務をするようなケースでは、その会社に顧客を奪われたり、ノウハウが流出するリスクが考えられます。
 従業員にとっては今のスキルがそのまま生かせるので、比較的容易に収入が増やせ、スキルアップにもつながるなど、メリットが大きいのですが、会社としては慎重にならざるを得ない部分も多いでしょう。
 この点に関しては『競業避止義務』を入社時に定めている会社がほとんどなので、自社の不利益になるような副業は禁止できるはずです。ただし、思わぬ抜け穴が存在する可能性もあるので、副業を解禁するならば、労働契約や就業規則における義務の範囲をもう
一度明確にするなど、規則を見直すことも大切です。

 

労災は全ての賃金額を合算に?副業関連法はこれからも変わる

副業を解禁する前に、昨年変わったばかりの労災制度についても確認しておきましょう。
 改正された労働者災害補償保険法では『複数の会社に雇用されている労働者が、労働災害に遭った場合に、本人や遺族が受け取れる給付金は、全ての会社の賃金額を合計した金額を基に決定する』ということが決まりました。もし賃金額が少ない副業先で労災に遭い、労災認定が下りた場合でも、すべての勤務先の賃金額の合算額を基に保険給付額が決まるのです。ちなみにこれは、会社が負担する労災保険料が上がるのではなく、計算式が変わるという意味です。会社側の負担が増えることはないので、保険料の変更などは必要ありません。 
 また、副業を認めた結果、従業員が働きすぎてしまう可能性についても注意が必要です。たとえば、平日、本業で7時間労働をした後に副業先で2時間労働をすると、法定労働時間である週40時間という枠を超えてしまいます。週に40時間を超える労働については、割増賃金を払わなければなりません。この割増賃金については、『時間的に後から労働契約を締結した使用者』に支払う義務があります。つまり、本業よりも副業先が後から労働契約を締結した場合は、副業先に割増賃金の支払い義務があるのです。
 副業に関しては、これからも法整備が進んでいくはずです。規則が変更になった時にきちんと対応できるよう、普段からよく確認しておきましょう。


 

   従業員に子どもが生まれると、会社は社会保険の手続きや、各種給付を受けるための手続きをすることになります。また、昨今は男性の育児休業取得を促進するための新たな制度もできています。

今回は、これらの出産・育児関連の労務知識を確認していきましょう。

事業主が押さえておきたい休業取得のルールと各種給付

   まず、従業員の出産に関して押さえておきたいのが、産前・産後の休業取得についてです。
 労働基準法では、出産の6週間前(多胎妊娠の場合は14週前)から産前休業を取得することが認められています。産前休業は、従業員の意思に任せられており、会社が取得を強制する必要はありませんので、出産日直前まで働くことも可能です。

一方、出産から6週間後~8週間後は産後休業期間となり、原則として休みを取得させなければなりません。ただし、産後6週間を経過した後は、本人が希望し、医師が就業させても
問題ないと認めた業務については、仕事に復帰させることが認められています。
 .

  出産・育児に関する給付には、健康保険から支給される『出産手当金』と『出産育児一時金』、雇用保険から支給される『育児休業給付金』があります。
 

●出産手当金

出産前後の時期に会社を休み、給与を受けられない場合に、その補填として、1日あたり標準報酬日額の3分の2が支給されます。
 

●出産育児一時金

被保険者とその被扶養者が出産する際に、子ども1人あたり42万円が支給されます。
 

●育児休業給付金

雇用保険被保険者が育児休業を取得した場合に受けられる給付です。原則、生後1歳
(一定の要件を満たした場合は最長2歳)に満たない子を養育するために育児休業をした場合に、要件を満たすと支給されます。
 

なお、産前・産後の休業期間中や育児休業等期間中は、事業主が年金事務所に申請すれば、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の保険料が、本人および事業主負担分ともに免除されます。また、従業員が生まれた子どもを扶養に入れる場合は、原則、出生後5日以
内に年金事務所に届け出る必要があります。

新たな制度も設けられ男性も育児参加する社会へ

   近年は、男性の子育て参加や育児休業取得の促進のため、国がさまざまな施策を行っています。その一環として、男性も育児休業がとりやすくなるよう、以下のような新たな制度も設けられています。
 

【パパ休暇】
 通常は1回しか取得できない育児休業を2回とることができる制度です。母親の産後休業中(子どもの出生後、8週間以内)に父親が育児休業を取得・終了すれば、その後もう一度、育児休業を取得できます。
 

【パパ・ママ育休プラス】
 通常、育児休業は子どもが1歳になるまで取得可能ですが、父親と母親がどちらも育児休業を取得する場合、育児休業期間が1年から1年2カ月に延長される制度です。1人当たりの育休取得可能最大日数(産後休業含め1年間)は変わりません。
 また、雇用保険から支給される育児休業給付金の給付率は育児休業開始から6カ月(180日)までは賃金の67%、その後は50%支給されます。パパ・ママ育休プラスを使えば、母親6カ月分、父親6カ月分の合計1年2カ月分は賃金の67%で給付を受けることも可能になります。
 

    なお、これらの制度の詳細は、厚生労働省のホームページで確認することができます。従業員の出産・育児をサポートするためにも、さまざまなルールや手続き、制度についてよく理解しておくことが肝要です。

  求人募集には、就職サイトや人材エージェントへの依頼といったさまざまな方法があります。
なかでも公共の『ハローワーク(公共職業安定所)』は、手数料が必要ないこともあり、多くの企業が利用しています。
地域ごとに置かれているハローワークでは、地元の人材を探しやすく、最近では窓口に行かなくても新規求人申し込みができる新システムが導入されるなど、利便性も上がっています。
そこで今回は、ハローワークで人材を募集する時のポイントをお伝えします。
 

求職者の知りたい情報を具体的に公開する

  ハローワークは全国に544カ所あり、年間約500万人が職探しに訪れます。
新規求人数は1,000万件以上で、応募者のうち約150万人が就職先を見つけています。
巨大な求人市場でもあるハローワークで、どうすれば効率的に求人の募集をかけられるのでしょうか。

その前に、ハローワークの利用方法について、おさらいしておきましょう。
ハローワークの利用にあたっては、事業所登録を済ませ、求職者に見てもらうための    『求人票』を作成する必要があります。
求人票を作るには、求人情報を登録しなければいけません。
なかでも、求職者が一番よく見る『仕事の内容』の欄には、力を入れることをおすすめします。

この欄は、仕事を探している求職者が、最初に目にする『求人情報一覧』に表示される部分になります。
事業所の所在地や賃金などと共に、仕事を探している求職者にとっては最も重要な部分です。
どんな仕事なのか、どんな人材を求めているのかを詳しく書くのを前提として、そのほかにも求職者の知りたいであろう情報を、なるべく求職者の目線で具体的に説明することが、応募者数を増やすことに繋がります。
『自社独自の研修があります』や『主に使用するソフトは○○○と◇◇◇です』といった具体的な事柄を『仕事の内容』に書くことで、より求める人材の目に留まりやすくなるメリットがあるのです。

さらに2020年からハローワークに新システムが導入されたことで、検索のページもリニューアルされ、『経験不問』『転勤の可能性なし』『通勤手当あり』『駅近(徒歩10分以内)』などのタグがつけられるようになりました。
こうした小さなメリットをアピールし、求職者の目をひくことも可能です。
ほかにも1日の仕事の流れや、従業員のキャリア形成のために行っていること、会社の将来の展望などを短くまとめて書いてもよいでしょう。

また、新システムになったことで、スマホやタブレットからでも、求人票を確認することができるようになりました。
若い利用者が増えることで、若手の採用にも期待が持てます。
求人票を作る前に、求職者のつもりになって、各社が出している求人票をチェックし、他社の説明文を参考に、魅力的な求人票の書き方を学んでもよいでしょう。

外部の求人サイトでも公開してもらえる

また、新システムでは、画像を10枚まで登録できるようになりました。
制度や会社の方針などを細かく文章で説明することも大切ですが、画像は何よりも説得力を持ちます。
事業所の雰囲気や、従業員の様子、形に残るモノであれば、これまでの仕事の成果などを掲載してもよいでしょう。

現状、求人情報と合わせて事業所の画像を登録している企業はあまり多くありません。
だからこそ、画像を登録している企業は、求職者に好印象を与えることができます。
会社の全景を掲載している企業もあれば、パンフレットを画像にして掲載している企業もあります。 
画像には1枚につき30文字まで説明文を入れることもできるので、求人に説得力を持たせるためにも、ぜひ、登録しておきましょう。

また、忘れてはならないのが情報の『公開範囲』の項目です。
ハローワークでは、求人情報や事業所名の公開について、以下の(1)~(4)までの公開範囲を設定することができます。

(1)すべての求職者に、事業所名等を含む求人情報を公開する
(2)ハローワークの求職者に限定し、事業所名等を含む求人情報を公開する
(3)事業所名等を含まない求人情報を公開する
(4)求人情報を公開しない

(1)はハローワークの検索ページだけでなく、そのほかの求人メディアにも情報が公開される設定です。
幅広い人に見てもらえるメリットがある一方で、職種や条件によっては、予想以上に応募や問い合わせが集中するケースもあるので、その点には留意してください。
(2)はハローワークで求人を見た求職者のみが応募できる設定で、(3)はハローワークで職業相談・紹介を経た求職者が、仕事内容に対して応募してきます。
(4)は窓口での紹介のみとなります

もし、広く求職者を募りたいときには、(1)の『事業所名等を含む求人情報を公開する』を選択しておきましょう。

以上のように、ポイントを押さえれば、より多くの求職者の目に留まることが可能です。

ハローワークでの募集に対して応募者が少なく悩んでいるのであれば、もう一度掲載内容を見直し、応募者の目に留まるような工夫をしてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。

   新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、採用の現場にも大きな影響を与えました。
ほとんどの企業では現在、対面や実地で行われる会社説明会やインターンシップ、面接などは全て中止となり、Web会議ツールなどを使用し、オンラインで行われている状況です。 
そして、現状ではいまだ新型コロナが収束しそうにないことから、この流れはますます進んでいくと考えられています。 
そこで、採用活動のオンライン化を進めるうえでの注意点や、押さえておきたいポイントなどを説明します。 
 
 人材不足解消にも繋がるオンライン化のメリット 
 
   新型コロナの感染拡大を防止する観点から、ハローワークでは採用活動に伴う会社説明会や面接などをオンライン化するように呼びかけています。 

大勢の人が集まる会社説明会や、個室で行われる面接などは、密閉・密集・密接からなる、いわゆる“三密”の起きやすいシチュエーションですから、企業側と求職者側の双方が安心して採用活動に臨むためにも、できるだけ避けるのがベストです。 
このコロナ禍で、求職者を直接自社に呼び出して個室で面接を行っている企業は、採用活動方針について求職者から疑問を持たれることもあるかもしれません。 
採用活動のオンライン化をアピールすれば、より多くの求職者が安心して応募できるようになるでしょう。 

また、採用活動のオンライン化には、新型コロナの感染リスクを大幅に減らすほかにも、

さまざまなメリットがあります。 

たとえば、面接場所を確保しなくて済むことや、お互いの日程調整や案内などを効率化できることがあげられます。 
従来であれば、来社日時を設定し、場所を伝えるなど、細かい案内をしなければいけませんでしたが、オンラインであれば、面接の担当者と求職者の都合を合わせるのも比較的容易です。
求職者にとっても、移動時間や交通費を削減できるというメリットがあります。 

さらに、オンライン化によって企業と求職者の物理的な距離が関係なくなり、遠方の求職者とも面接が行えるようになりました。 
求職者が全国どこにいても面接が行えるため、人材を確保するチャンスが広がったといえるのではないでしょうか。 

一方で、まだオンライン化に対応できていない地方の中小企業も多く、生まれ育った街での就職、Uターンを考えている学生や、出身地以外での就職、いわゆるIターンを考えている学生などからは、Web面接などの採用活動の実施状況を把握できないという声も出てきています。 

人材確保に力を入れたい企業においては、採用活動のオンライン化こそが、長年続く人材不足を解消するための、きっかけになりうるかもしれません。 


オンライン化の注意点と企業側の心構え 

   オンラインでの会社説明会や面接などは、たとえばコロナ禍で使用機会が増えたZoomやWhereby、Google MeetなどのWeb会議ツールを使って行います。 
無料版と有料版があるツールがほとんどで、有料版には人数や時間の制約を受けないといったメリットがあり、Zoomであれば月額2,000円程度と安価に利用できます。 
求職者側も、パソコンはもちろん、タブレットやスマートフォンなどでも対応できるため、それほど高い障壁にはならないでしょう。 

もちろん、採用活動のオンライン化はメリットだけではありません。 
求職者が来社しないため、リアルな職場の雰囲気を伝えづらいうえに、企業側も画面越しで求職者と接するため、本人の印象や雰囲気、人間性が掴みづらいというデメリットもあります。 

また、新卒採用の現場であれば、優秀な学生が、距離というハードルに悩まされることなくさまざまな企業を受けられるようになるため、一部の優秀な学生に今よりもさらに内定が集中してしまう事態も懸念されています。 
さらに、地方の企業においては、遠方の求職者がわざわざ高い交通費を払って面接を受けに来るかどうかが、ある種の『本気度』を測るバロメーターになっていました。
オンラインでの面接では、この『本気度』を測るのも難しくなってきています。 

   以上のことを踏まえると、採用活動のオンライン化は内定辞退が発生しやすく、企業側の“人を見る目”が以前にも増して重要になっていくといえます。 

オンライン化はメリット・デメリットがありますが、今後も採用活動における選択肢の一つとなっていくことはほぼ間違いないでしょう。 
特に人材採用に注力したい企業にとっては、いかに迅速にオンライン化の体制を整えるのかが、今後の採用活動の明暗を分ける鍵だといわれています。 
現状、オフラインで採用活動を行っている企業は、いまこそ、オンライン化を検討してみてはいかがでしょうか。 


※本記事の記載内容は、2021年1月現在の法令・情報等に基づいています。
 

   会社が従業員を雇う場合、原則として従業員の源泉所得税を本人に代わって会社が毎月納税しなければなりません。ただし、一定の条件が揃えば源泉所得税を毎月納める必要がなくなる『源泉所得税の納期の特例』という制度もあります。今回はこの制度について、概要をご説明します。

源泉所得税の納期の特例の利用で半年ごとの納付が可能に

   源泉所得税の納期限は、原則として『給与などを支払った日の翌月10日』です。

たとえば、9月末に従業員に給与を支払った場合は、10月10日までに納めます。
しかし、毎月源泉所得税を納めるのは手間がかかるため、半年分をまとめて納付できる制度も用意されており、これを『源泉所得税の納期の特例』といいます。
 納期の特例を利用できるのは『給与の支給人員が常時10人未満』の場合に限られますが、これを利用すれば、1月から6月に支払った給与については7月10日までに、7月から12月に支払った給与については翌1月20日までに納めればよいことになります。
 手続きは簡単で、給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署長に申請書を提出すれば、翌月に支払う給与から適用されます。
 

  納期の特例のメリットとしては、以下があげられます。
 

メリット① :事務負担が減る
 源泉所得税を納付するためには、そのための計算や手続き、会計ソフトへの入力が必要となります。12回の納付が2回に減れば、それだけ事務作業の負担が減るということになります。
メリット② :納付遅れのリスクが減る
 たとえば、納付書を使って金融機関で源泉所得税を支払う場合、毎月10日までに金融機関で支払いを済ませる必要がありますが、忙しいときには時間が取れず、納付が遅れることがあるかもしれません。納期の特例により支払い回数が減れば、こうしたリスクが減
ります。
メリット③ :プール金が増える
 納期の特例を使った場合、納付するべき源泉所得税を最大6カ月の間、預かり金として会社にプールすることができます。プール金が増えることで、急な出費にも対応しやすいというメリットがあります。


利用する前に確認しておきたい納期の特例のデメリットとは

 もちろん、納期の特例にはデメリットもあります。たとえば以下の点が考えられるでしょう。
 

デメリット① :1回の納付額が増える
 納付回数が減るということは、1回の納付額が大きくなってしまうということ。たとえば毎月の源泉所得税が10万円ほどだとした場合、納期特例を使うと1回につき60万円というお金が出ていくことになります。会社にプールできるお金が増えるのはメリットですが、あくまでも預かり金であり、納付しなければならないお金であることを忘れないようにしましょう。
 

デメリット② :対象外の源泉所得税もある
 納期の特例の対象となるのは『給与や退職金から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税』に限られています。フリーランスのデザイナーへの報酬など、納期の特例の対象
ではない源泉所得税については毎月納付しなければならないため、業種によっては納期の特例のメリットを享受できないこともあります。
 

 なお、従業員の数が常時10人未満の場合、源泉所得税だけでなく、住民税の納期の特例もあります。納期の特例にはメリットとデメリットがありますから、これらを理解し、利用を検討するようにしましょう。