朝の3時か4時ぐらいに友人たちは帰っていった。




私たちはダンスフロアーから出て、外側にあるバーで飲む事にした。




タバコを吸いたいという私のために、近くでタバコを吸っていた客から一本もらってくれる姿をみて、




頼もしいものを感じる。





自分はタバコは吸わないといっておきながら、私の指からタバコを取り、まだ続く私の説教を聴いている。





そして何でそんな物を始めたんだという私の質問に




奴の崩壊してしまった家族の話をしはじめた。





地位も名誉もあった一家が、自分の親族の手で崩壊させられたらしい。





まだ中学生だった奴は、一番大事な時期に人間に対する価値観をずたずたにされてしまった。





不安定な時期に、香港一学費が高いインターナショナルスクールへ通っていた奴は




不良グループと付き合うようになり、やくざのいい鴨になった。















酔っ払っているときは言葉がとまらない。



あげくに、私はその時、アメリカ系の自己啓発のトレーニングを受けて間もない時で




正義感と責任感に満ち満ちていた。




わたしはやつを見て、




それなりに知的レベルが高いこと、



いい家の出である事



エンターテインメント系の才能がある事



心の中の純粋なひたむきさ




が分かった。




そして




どうしてそれをドラッグで無駄にするのか、口からつばを飛ばしながら




説教していたと思う。




しばらくして友人たちは となりのバーに移るという。




一瞬の迷いの後




思わず奴の手をとった。





“一緒に来な”









隣のバーはフィリピン人のバンドが入っているバーで、入ってまもなくすると




バラードに替わった。 




自然と奴に手を取られ腰に手を回す。




思わず、懐かしい感覚に駆られたのと同時に、ものすごくあったかいもの感じた。




そして思い出した。






これも夢に見たことを。







誰かが言ってた、




男と女はむかし一体だった、神様がアダムとイブに分けてから、




もう片方の自分を探すべき運命の人を探し続けると。




だから出会った時は磁石みたいに吸い付いてしまうのだと。





私たちは落ちた。 



幸せの暗い溝に。



愛という残酷な罠に。




そして私は信じていた。






自分なら助けられる事ができると。





2006年10月22日、その日は私は金融がらみの試験最後の日だった。 



終わった後に、夜友人の誕生日とハロウィンを早めにやることになっていた。



試験が終わった開放感と睡眠不足でテンション低めのまま、


友人宅へ向かうと、見事に変装やおめかしした友人・知人達でごった返ししている。



ろくに食事もとらずお酒を飲んでいたので、じゃあクラブへ繰り出そうという事になったころには 


おなかがペコペコで麺でも食べたかった。




先に出て行った友人に適当に片付けてから行くから、そしたら麺をたべに行こうと約束するが、結構片付けに時間が掛かった。




クラブへついたころには、皆楽しく踊っており、空腹のまま私も踊り始める。 



Balck Eyed Peas が大ブレークしている頃で、わたしの友人はDJに口うるさく曲を指定していた。




空腹を我慢しながらジントニックかなんか飲みながら踊っていると、誰かの足にごつんと躓く。




“Sorry" 



反応は無い。




まあクラブなんか皆大酔っ払いだから別に気にしなかった。




しばらくしてまたそいつの足に躓いた。




“あれ、まだこの人寝てる”




この足の主はさっきから壁にくっついているベンチみたいな椅子に座って足を投げ出している男だ。




多分1時間は寝てるはず。





まあでもクラブに酔っ払いはつきもの。




そして今度はウォッカライムかなんかに変えてしばらく踊っていたらまたゴツン



“まだ 寝てる”




これはまずい、多分これはOD系



一回モンコックで口から泡を吹いて倒れてしまった人を見てからドラッグ系には敏感だ。




バーに行って、水をもらってくる。





“これでも飲んでな”みたいな感じで渡した。




まだ気になって2杯目をもらいに行く。



インド人のイケ面の友達は




“なんでそんな事するんだ”



と意味がわからない風。



べつに砂漠で水に困っているわけでもあるまいし、



そこに行って水が出るんだから持ってきてやっても別に良いだろう。




2杯目をもってくるとそこにやつはいなかった。





帰ったかとほっとして振り返るとそこにやつが立っていた。





もっとどうしようも無いやつかと想像していたが、頭にバンダナをパシッと締めて、結構格好いい。





“名前なんていうの?”






私は自分の名前を名乗ると、ドオオオオオオオオオオっと説教をはじめた。






すると彼はゆっくりと注射針の後が残る腕をわたしに見せた。