習慣で自分のラップトップを持っていったのが功を奏した。










その会社に行ったら何も準備されていなかった。









それより何より驚いたのは、

ケーブルがじゃうじゃと張り巡らされた床。






汚い机。








日本の会社とは思えないほど







Messy










その支店長だった人は後ほど会社を首になったらしい。










“そうじの本” 読ませてあげればよかったな。














新しい会社での勤務が始まった週末










フィリピンから訪れている友人一家と食事をする前に

前の会社に立ち寄って、書類の整理などをしていた夕暮れ








突然携帯が鳴る。




非通知。











一瞬にして息が苦しくなり電話に出る。










“Hey...... It's me"











懐かしい声の響き、忘れていた何かが蘇る。











奴の声は温もりがある。










もう永遠に会えないかもしれない、


あの時感じた強い気持ちは、やっぱり幻だったのかもしれない










否定しようとしていた気持ちが彼の声によって










綺麗に消された。












懐かしい。 会いたい。

でも出てきた言葉は






“今どこにいるの!? なんで今まで電話してこなかったの? どうして突然消えたの!?"












電話できるはずが無かった。











警察に捕まったからだ。









奴はそう言わなかったけれど。











“今はとにかく遠いところにいるんだ、電話も出来ない、もう少しいたらまた連絡する。”












そう言って電話を切った。








“I think of you も、I love youもなかった” 








お互いにやっぱりまだ不安だった。











呆然と、でも生きていたことがわかってほっとした。













私の顔はまた泣きそうでにやけた顔になったことだろう。












私は彼への気持ちで心をぎゅうぎゅうにしてディナーへと向かった。
























奴の言葉を信じて見ようと思っていた。






















































オフィスには当然私しかいない。












































日本から帰ると新しい会社での仕事が待っていた。








大学を出るとほぼ同時に海外へ渡った私は、その会社の名前を仕事を紹介されるまで知らなかった。








お金の事なんて使うことにしか興味が無かった人間が、人に投資のアドバイスをするなんて








実際“なんちゃって”なのだった。 







自分の売っている商品をしっかり確信を持って説明できるようになったのは、








個人投資のアドバイザーの仕事を始めてから2年後ぐらいだった。









日本人が“金で金を儲ける=汚い”から“投資しない=バカ”ぐらいにまで頭の中が









切り替わる時期にわたしはこの世界に飛び込んだ。









今でも覚えている。








まじめそうな、普通のサラリーマンのおっさんが










“僕は投資をしてまでお金を増やそうと思わないんだよ。 なんか意地汚い気がしてね”









と言ったのを。









その人は正直な人だったと思う。









何に嫌悪感を抱いたかというと、










そいつの欲がその言葉のしたから ヒラヒラ見えていたからだった。







それと愚かな社会人主義にどっぷり使ってしまった日本人の








危機意識の無さにあきれてしまっていた。







まあそれもものの見事に3年ほどでころっと変わってしまったのだが。










仕事は順調だった。 客も付いてきた。 そして小さい会社だったから







責任者の一人としてビジネスを拡大していく計画を持ち込まれた。







そのときにやはり土台から立て直すことに決めた。







実際どうしてマーケットが動くのか、それぞれ各国の金融政策が







経済にどのような効果をもたらすのか、経済って何か真髄は全くわかっていなかった。







そんな人間がえらそうに分かった振りして人の財産の運用なんかしてるのは







嘘っぽかった。







チープなのはやっぱり嫌いだ。








そして会社に入った初日。









わたしは刑務所をグーグルで検索していた。


























その電話を受け取ったのは、成田エキスプレスに乗る新宿駅だった。








奴を快く泊めさせてくれていた友人から私の携帯に電話が入った。









“なんか、おとといのの夜帰ってこなくて、心配していたらさっき奴から電話があって、



事情があって遠いところに行かなければ行けないって言ってた。”










頭の中が真っ白になる。








おそらく友人を攻めるような口調で






“遠いところってどこ?”












“なんかどっか島らしいよ”








“だからしばらく会えないって”









・  ・  ・  ・  ・  ・










何処だ?






島って何処だ?










香港には235余りの島がある。









頭の中で想像をめぐらせ、一生懸命考える。









考えてもしょうがない事をただ考える。










リハビリの施設に行ったのか、それとも他に住める場所が見つかったのか?












悪い予感がしたのは確かだった。












そしてそれから、自分を騙し続ける旅が続く。










冷静に考えれば分かるのだ。 









奴は薬物中毒であること、

泊まる家も無かったこと

50ドルしか持っていなかったこと

私の財布からお金がなくなっていたこと











ココで終わりにしておいたほうが身の為だという事に。








ルームメートの反応を見れば分かる。 










深入りしてはいけないということに。









でも私はこだわった。








“I back you up"








と言った事に。









それを理由に彼を信じ続けたかった。









私は自分が馬鹿だったとは今でも思わない、










そして今でもできることなら助けてあげたいと思っている。











でも、人間ひとりの力は無力だということも嫌と言うほど知らされた。










今は私が助けて欲しいと思っている。












でももしかしたら奴と出会う前からそうだったのかもしれない。











そして素直に “助けて”と言えるようになるために、すべて計画された事だったのかもしれない。