ちょっと待て。何でこんな事になってんだ!?
夜の帳も降りた、人気の無い住宅街。閑散とした中を必死に走る少年は、そんな自問自答を、先程から何度も繰り返していた。
息を切らせながら振り返ると、しつこく自分を追ってくる影。
「待ちやがれ!」
と、その影はどんどん迫ってくる。
「ヤベッ!」
疲労からペースの落ちていた少年は、あっという間に距離を詰められた事に焦り、思わず近くの住宅に挟まれた路地に逃げ込んだ。
狭い路地の中を、置かれている廃材や段ボール等をぶちまけながら逃げる。
少しは追っ手の足止めになっているだろうか。だが、確認している余裕はない。今はとりあえず前だけを見て逃げるしか―。
しかし、少年の足が止まる。
あまりにも唐突に止まった為、そのまま前に突っ込みそうになった。何とか体勢を立て直しながら見据えたそこには。
「嘘だろ…」
住宅を仕切る、冷たいコンクリートの壁が冷酷にも鎮座していた。
(行き止まりかよ!)
真後ろで響いた靴音に、ギクリと肩を鳴らせて振り返ると、案の定、追っ手は少年の逃げ道を塞ぐように立ち塞がっていた。
「もう逃がさねえぞ」
髪を脱色したヒョロヒョロの男はそう言って、ジャリリと一歩踏み出してくる。
(マジかよ)
男の手にナイフが握られているのを見た少年は、背中を伝うゾロリとした汗を感じた。
そして再び冒頭の自問自答に戻るのだ。
(だから、何でこんな事になってんだってッ)
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