遥彼方のブログ

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「じゃあ、降りようかな」

 そう呟くと、もう一度大きく伸びをして立ち上がった。そして、まるで低い段から跳ぶような軽快な踏み切りで、ポーンと屋根から飛び降りた。

 メシッ…

 有り得ない着地音が響く。

 飛び降りた男は、叶を超えて、その向こうの血気立っていた男の顔面に着地したのだ。

 顔面に蹴りを喰らった形になった男は、その重さと衝撃で後方に昏倒する。

 茫然と一部始終を凝視していた叶は、まるで何事も無かったかのように踏み潰した顔面から降りる金髪の男に、あんぐりと口を開けて固まってしまった。

(顔面に着地する意味無くね?)

 だがそう思われている当の本人は、そんな事もどこ吹く風。暢気に欠伸をしながら表通りに向かって歩き出したので、叶も何となくその後に続いた。

「しかし見事に荒らしたな。歩きにくいじゃんか」

 表通りまでの細い路地。叶がここに逃げ込んだ時に、追跡者の足を遅らせる為にぶちまけた廃材等を除けて歩く男が、ブツブツと文句を言っている。

 そして、斜めに倒れて進行を塞いでいる角材を元の位置に戻そうと、男がそれに手を伸ばした時、突然「痛!」と顔をしかめた。

 叶が何だと後ろから覗き込むと、角材で切ったのだろう。その右の掌から、うっすらと血が滲んできていた。

「痛ぇ~。お前のせいだぞ!謝れ。俺の右手に謝れ!」
「はあ!?」

 振り返り様にそんな事を言われて、叶は素っ頓狂な声を上げる。

「ふざけんなよ!何で俺のせいなんだよ。テメェがドジなだけだろうが!」
「お前が散らかした角材だろ。だからお前のせいだ」

(どういう理屈だよ!)

 「やってらんね~」と言いながら、さっさと路地から出ていってしまう金髪の後ろ姿を睨み付けた叶は、その背中を蹴り飛ばしてやりたくなった。

(今日は厄日か?)

 意味も分からず追われるわ、ナイフを突き付けられるわ、頭のオカシイ金髪軽薄男とグダグダの漫才をさせられるわ。

(マジで足蹴にしてぇ…)

 ぶつくさと足元のダンボールを蹴り上げながら、怒りの原因である男を見ると、その横顔が不自然に固まっていた。

「おい、何固まってんだよ」

 不審に思い声を掛けた叶だが、路地を出てその方向に目を向けた瞬間、同じように固まった。

 柄の悪い男が二人、ナイフを突き出しながら待ち伏せしていたのだ。

「ハイ?」

 冷汗を垂らした叶の虚しい呻きが、閑静な住宅街に響いた。

続く





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