さいたま市社会保障推進協議会 第24回総会 記念講演 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2024年は、再生の年です。

不正にまみれた政治を刷新し、コロナ禍で疲弊した医療・介護現場を立て直し、社会保障削減や負担増を撤回させ、防衛費倍増ではなく国民生活を豊かにするために税金を使わせ、憲法改悪を阻止し、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。そして、戦争・紛争が一日も早く終結し、避難している人々の生活が立て直されることを願います。

そして、能登半島大地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活が立て直されるよう祈ります。

 

 

6月23日、さいたま市社会保障推進協議会の第24回総会に参加しました。

その際に行なわれた記念講演の概要をまとめます。

テーマは「日本経済の破綻と、国民の暮らし 社会保障拡充のたたかい」で、講師は元衆議院議員の佐々木憲昭さんでした。

 

 

佐々木さんは議員をやめてから10年経ち、今は妻の介護、家事、研究をやっていると述べました。

暮らしは厳しく、社会保障は深刻な状況ですが、なぜそうなっているのか、根元を探らなければならないと指摘しました。

現状、物価が高騰していますが、消費者物価指数は昨年より2.5%の上昇とされており、もっと上がっているのではないかという印象です。日銀のアンケート調査によると、「物価の上昇は実感としてどれくらいか」という問いの回答は14.2%だったそうです。2023年の週1回以上購入するものの物価上昇率は13.0%、政府発表の物価上昇率は3.9%だそうです。

最近の物価情報の特徴は、実感と政府発表に差があるということです。

また、名目賃金は2.1%上昇していますが、物価上昇を踏まえた実質賃金は-0.7%で、24ヶ月連続の下落で最長記録だそうです。

年金は、実質年金額指数で2010年から2022年に-9.9%となっているそうです。

こんな状況は日本だけであり、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、日本の5か国の平均実質年収の推移をみると、日本以外の国は上昇しているそうです。

日本のGDPの53%が個人消費であり、これが減っているのですから景気がよくなるはずがありません。こうした状況に対応するために、食費を切り詰める人が多いそうです。

社会保障は負担増と給付減が続いています。

1990年度と2020年度を比較すると、国民年金保険料は月8,400円から16,540円と2倍になり、国民健康保険料・税は1人当たり年62,000円から96,000円と3万円超引き上げられ、介護保険料は月2,911円から6,014円と2倍以上になっているそうです。

 

なぜこうなっているのかを知るには、日本社会がどういう仕組みになっているのかを知る必要があると指摘しました。

基本は経済です。いろいろなものを生産し、売買する仕組みです。

日本の資本家は、大小含めて約119万人で、人口の2%です。自営業者は約639万人で、人口の11%です。労働者は約5129万人で、人口の85%です。つまり、大部分が労働者、生産手段を持たず、自分の労働力を売って生活する人たちです。

労働者のほとんどは企業で働いていますが、会社の総数は359万社で、そのうち中小企業は358万社、99.69%で、大企業は1万社、0.31%だそうです。

資本金規模別の資産額推移によると、資本金10億円以上の大企業の資本金額は増えています。多数の中小企業の上に大企業が君臨し、搾取している状況であり、大企業は社会的責任を放棄しています。たとえば、法人税をきちんと払わない、国内でお金を使わないということです。主要国・地域の対外直接投資の推移によると、日本はどんどん外国へ投資をしているそうです。大企業の状況は、配当金が最も増加。投資有価証券は増加しており、授業員給与と経済投資は横ばいです。国内経済の空洞化が進んでいます。

企業は株主に利益を与えることが役割ではないはずです。企業には、労働者、地域、自治体など、様々なステークホルダーがいる社会的な存在です。

しかし、企業が改めようとしないのは、大企業と政府が癒着しているからだと指摘しました。

大企業は日本経団連、経済同友会などの財界団体をつくっています。財界団体とは、企業間の意見をまとめ、政府に働きかけるためにつくられた団体です。

経団連役員企業は大企業のトップで、30~40社あり、その株主は外国資本が増加しているそうです。

大企業の外資比率は、1970年には2.77%でしたが、2000年以降20%を超え、現在は34.5%となっています。そのため、アメリカなどからの要求にかつては抵抗できましたが、今は何も言えなくなっているそうです。外資比率が上がると、配当にどんどんお金を回し、賃上げはしないようになります。

経団連がどのように政府に影響を与えているかというと、政府は大企業に丸め込まれており、結果として貧困と格差が拡大しています。

経団連の御手洗元代表は、「競争の結果として格差があるのは当然であり、格差は経済活力の源」と述べていたそうです。

また、奥田元会長は、「国民誰しも抵抗勢力になりうる」と述べていたそうです。

経団連がどのように政府を抱き込んでいるのかというと、金、人、利権がポイントだそうです。

金とは自民党への献金であり、自民党の政治費用の3分の2が献金だそうです。トヨタ、日立、住友化学など、日本経団連の役員企業の合計で、約8億1,700万円が献金されたそうです。

政党助成金と企業団体献金の推移については、政党助成金が始まってから献金は減りましたが、政党助成金は増え続けているそうです。リクルート事件、佐川事件などのため、法人の献金は禁止されましたが、しかし、パーティー券と政党の本部・支部への献金はスルーされました。裏金事件は、この2つの抜け道の中で起こったそうです。しかし、裁判にならない改正議案が成立してしまいました。企業・団体献金は野放しです。

ヒトとは天下りのことです。天下り件数は年々増えているそうです。企業の側からの要望で「官民人材支援センター」がつくられ、癒着の場となっています。

天上がりは最近増加しており、経産省、国交省、環境省などに所属しているそうです。2000年頃からシステムが拡大しているそうです。経団連提言では、「民間から、政策に関われるように登用を増やす」とし、大企業から企画立案の中枢へ人員を派遣し、法律を考え、法律をつくる仕事をさせているそうです。その結果、大企業の法人全を軽くしたり、国民負担を増やしたりといったことが行なわれてきたと指摘しました。ある大企業の代表は、「官民癒着の批判が出ていますが、企業にとってメリットがあるのは官民癒着と言われている部分です」と述べたそうです。

予算の骨格である「骨太方針」をつくっている経済財政諮問会議にも、経団連代表などの民間4議員が参加し、原案を作成しているそうです。そのため、大企業の言う通りの予算がつくられることになります。これは特異であり、通常の審議会では事務局が原案をつくり、委員が意見を言う形です。閣議決定につながる文書の案を大企業の代表がつくっているということになり、今の自民党政府がいかに国民を見ていないかということの現れだと指摘しました。

社会保障を充実させるには、今の政府の予算のつくり方、法律のつくり方を見直し、その骨格をつくり変える必要があると述べました。

 

岸田内閣での問題として、軍事予算の以上な上昇があると指摘しました。2023年度の防衛予算は6.8兆円、2024年度の防衛予算は7.9兆円に膨れ上がっているそうです。これは、安保3文書に沿って行なわれており、2023年は「防衛力抜本強化の元年」と言われているそうです。

5年間で必要となる防衛力整備の経費として、人件・糧食費に11兆円、新たな装備品の契約に使われる期間内歳出に27兆円、既定分に5兆円とされており、合わせて43兆円となるそうです。さらに、次期整備計画に使われる期間外歳出が6.5兆円加わり、全体で59.5兆円にもなるそうです。

岸田首相は国会にもかけずに軍事力強化の有識者会議を設置し、その座長は経団連の名誉会長の榊原氏ですが、榊原氏は「この枠の中でできるのか、見直す必要がある。国民負担の在り方、抜本的な財源を考える必要がある」と述べているそうです。つまり、財界は戦争でもうけようとしており、「43兆円では足りない」と言っているのです。

また、防衛力整備計画は10年の計画であり、43兆円は5年間の経費です。木原防衛大臣は、「ポスト43兆円の議論を並行して進める必要がある」と述べているそうです。

もうけるのは誰かというと、防衛省から受注している企業だと指摘しました。上位企業には、三菱重工業、川崎重工業、日本電気、三菱電機、富士通などの経団連役員企業が多数入っているそうです。そのため、経団連は大軍拡を大いに推進するのです。

また、日本の企業については公表されていますが、アメリカの海軍廠なども大量に受注しており、そちらの数字は要求しないと出してこないそうです。

アメリカの軍産複合体も大軍拡を推進しており、武器収入が売上高に占める割合が高い上位5社は、ロッキード・マーチン、レイセオン・テクノロジーズ、ノースロップ・グラマン、ボーイング、ジェネラル・ダイナミクスだそうです。これらの武器収入を合わせると1888億ドルとなるそうです。

日本の大企業もこれらにならってもうけようとしていますが、アメリカの企業の方が強いため、日本はアメリカ企業から多くの武器を購入しているそうです。つまり、アメリカの軍需産業を岸田大軍拡が支えており、日本の大企業はそのおこぼれを得ているのです。

 

日本の債務残高対GDP比は、第二次世界大戦前は戦時国債のために200%超になっていたそうです。戦後、それがインフレの原因となり、物価が70倍になったそうです。

その反省から、国の借金を制限する法律をつくったのですが、今の政府はそれに反する提案を行なっています。

そうした今の政府のあり方に対する国民の怒りは高まっていると指摘しました。

毎日新聞の世論調査によると、内閣支持率は20%となっており、立憲民主党と日本共産党と社会民主党とれいわ新選組の支持率を合わせると33%となるそうです。

もっと声を大にして、政治を変えることが求められていると述べました。

 

以上で報告を終わります。