原発学習会『私が原発を止めた理由』 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2024年は、再生の年です。

不正にまみれた政治を刷新し、コロナ禍で疲弊した医療・介護現場を立て直し、社会保障削減や負担増を撤回させ、防衛費倍増ではなく国民生活を豊かにするために税金を使わせ、憲法改悪を阻止し、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。そして、戦争・紛争が一日も早く終結し、避難している人々の生活が立て直されることを願います。

そして、能登半島大地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活が立て直されるよう祈ります。

 

 

3月21日、原発学習会「『私が原発を止めた理由』~脱原発・持続可能で平和な社会を目指して~」に参加しました。講師は元裁判官の樋口英明さんでした。

以下、その概要をまとめます。

 

学習会当日にも地震があり、樋口さんは地震があると真っ先に思うのは原発の近くかどうかということだと述べました。

1月1日の能登半島地震は、志賀原発から70メートルのところだったそうです。志賀町では震度7を計測したそうです。

しかし、「志賀原発は震度7の地震に耐えられた」というのは誤魔化しだと指摘しました。

志賀町の一部の地域で震度7でしたが、志賀原発は震度5強であり、それでも不具合が生じているそうです。原発は地震に弱いと指摘しました。

脱原発運動はうまくいっていないというイメージがありますが、市民運動で52ヵ所の原発の建設をあきらめさせていると述べました。つまり、市民運動がなければ原発は今の倍になっていたということです。

その一つが珠洲原発であり、今回の地震の震源がほぼ真下あり、4メートルの落差ができたところに建設する計画だったそうです。

1975年に計画が立てられ、28年間にわたる反対運動で計画をつぶしたそうです。珠洲市の人たちは知られざるヒーローであり、その人たちが今、地震で悲惨な目に合っていると指摘しました。

樋口さんは、2011年3月11日以前は原発について何の関心もなく、それなりに安全だと思っていたそうです。

2011年3月、原発事故が起こり、「これで日本の原発は終わりだ」と思ったのですが、しかし、そうはならなかったと述べました。

脱原発運動の最も大きな障害は、私たちの心の中にあると述べました。それは、「原発はそれなりに安全だろう」、「原発問題は難しい」という先入観だと指摘しました。

しかし、難しくはなく、2つのことを理解していればいいと述べました。一つは、原発は人が管理し続けないと暴走するということ、もう一つは、原発が暴走した時の被害はとてつもないということだそうです。

原発に関する最近の動きとして、ロシアのウクライナ侵攻により天然ガスが値上がりし、原発を動かした方が得ではないかと考えられているということがあげられました。しかし。それは深く考えた結果ではないと指摘しました。

「ショック・ドクトリン」という言葉がありますが、これは何か異変、とんでもないことが起きた時、普段なら受け入れられない政策を受け入れてしまうことを表しているそうです。

東電被害者訴訟では、株主代表訴訟では東京地裁で13兆円余の認容判決が出され、水戸地裁では避難計画不備による原発差し止め認容判決が出されたそうです。

これまで、7人の裁判官が原発を止めているそうです。

原発の本質はただ二つであり、人が管理し続けないといけないということと、人が管理できなくなったときの事故の被害は想像を絶するほど大きいということだと述べました。

人が管理し続けなければならないという点では、原発は古い大型旅客機と似ていると述べました。不具合が生じても対処法がわからず、そもそも動かしていいかが分からないという点が似ているそうです。

原発はコスト論で考えてはいけないと指摘しました。理由は、多くの人の生活に多大な影響を与えるからだそうです。

東電は年2,500億円の利益をあげるそうですが、原発事故の損害額は25兆円であり、利益の100年分が一度の事故で飛んでしまうことになります。よって、コスト論は通用しないと指摘しました。一度の事故で日本は立ちいかなくなってしまいます。

日本政府は「敵基地攻撃能力」を保有するとしていますが、ロシアのウクライナ侵攻で最も重要なことは、ロシアがザポリージャ原発を攻撃したことだと指摘しました。なぜ簡単に占拠されてしまったのかというと、一つは反撃できない、反撃すればヨーロッパが壊滅してしまうため、もう一つは、従業員が逃げ出せない、逃げ出せば原子炉が暴走してしまうためだと説明しました。

日本はどうかというと、原発54基が海岸沿いにあり、「敵基地攻撃能力」を持っていてもどうしようもないと指摘しました。

「原発は自国に向けられた核兵器」」と言われているそうです。これを除去するのが防衛の第一歩であり、本当の保守なら原発は除去すべきだと述べました。

グリーントランスフォーメーション、ベースロード電源といった言葉は誤魔化しであり、カタカナ(横文字)、科学的、国際などの言葉には注意すべきだと述べました。

グリーントランスフォーメーションは、言っていることは正しく、太陽光、風力などの自然エネルギーを増やすためのものだろうと思われますが、しかし、それによって原発を増やそうとしているそうです。

それは見当はずれであり、「地下資源を枯渇させない」と言うなら、ウランは希少な地下資源であり、クリーンかというと、原発事故が起きれば環境汚染はすさまじく、原発を環境問題の解決の根拠とすることは著しい筋違いだと指摘しました。

国家賠償と株主代表訴訟については、2022年6月17日の最高裁判決は間違った判断だと述べました。この判決では、国が津波対策を行なったとしても防潮堤では津波は防げなかったとし、国家賠償を否定したそうです。それに対して、2022年7月13日の東京地裁判決では、東京電力の旧経営陣に対して13兆円余の賠償責任を認めたそうです。

樋口先生の「私が原発を止めた理由」は、河合弁護士によって「樋口理論」と名付けられているそうです。第一に、原発の過酷事故は極めて甚大な被害をもたらす、第二に、それ故に原発には高度の安全性が求められる、第三に、地震大国日本において原発に高度の安全性が求められるということは原発に高度の耐震性が求められるということに他ならない、第四に、しかい、我が国の減の圧の耐震性は極めて低い、よって、原発の運転は許されないということだそうです。

東電福島第一原発事故は、極めて幸運が重なって被害を抑えられた事故であり、15万人の避難で済みましたが、本来なら250キロメートル以内の400万人が避難することになっていたはずだそうです。

原発の原理は、1900年代の技術であり、原理は火力発電と一緒で、違うのは燃料の毒性と制御の仕方だそうです。原発は、核分裂を止めても沸騰が続き、冷やし続けなければならず、停電して冷却できなくなればメルトダウンが起こるそうです。

「4号機の奇跡」と言われているのは、まず、東日本大震災当時、4号機は止まっていたそうです。3月7日のシュラウドの取り換えのため、4日前に水を抜き取る予定だったのが、手違いで工事が遅れて水が残っていたそうです。しかし、毒性の強い使用済核燃料を入れていたプールの水は少しずつ減少していっていたそうです。しかし、貯蔵プールの仕切りが地震でずれ、プールに水が入ったそうです。その後、水素爆発が起こり、天井を吹き飛ばしたため、水を入れることができたそうです。しかし、ポンプ車の長さが日本製のものでは足りず、注水が不十分だったそうです。その際、中国がドイツに輸出するはずだったポンプ車を日本へ無償提供してくれ、冷却水を継続して注入することができたそうです。

奇跡のうち、一つだけでも起こらなければ、日本は終わりだったと指摘しました。避難区域が250キロメートル圏となり、埼玉県全体が含まれることになり、4,000万人が避難することになっていたそうです。

多くの日本人はそれを知らないので、「原発即廃止は極論」と考えてしまうと指摘しました。テレビに出る知識人は、知っているのにエネルギー基本政策に従っているそうです。

なぜかというと、「これほど危険なら、それなりの安全対策をしているだろう」と考えるからだそうです。

危険には2種類あり、発生確率が高いこと、発生した場合の被害が大きいことがあると指摘しました。通常、発生確率の高い事故は被害が小さく、被害が大きい事故は発生確率が低い傾向がありますが、しかし、原発は例外であり、危険な上に発生確率が高いそうです。なぜかというと、原発は核兵器開発の副産物として生まれたからであり、大きな被害をより効率的に与えるため、安全は度外視しているからだそうです。

2000年以後の主な地震は、2008年の岩手宮城内陸地震で4022ガル、マグニチュード7.2、2011年の東日本大震災で2933ガル、マグニチュードM9、2024年の能登半島地震jで2828ガル、マグニチュード7.6だったそうです。

一方、原発の基準地震動は、大飯3、4号機は建設当時は405ガル、3.11当時は700ガル、2024年2月時点は856ガルとされていたそうです。福島第一原発の1~6号機は建設当時は270ガル、3.11当時は600ガルとされていたそうです。実際に起きた地震よりも原発の基準地震動がはるかに低いというだけでなく、建設時よりも後になるに従って耐震性が上がっていくのが怪しいと指摘しました。

原発容認派の反論は、ウソとホントが混ざっているそうです。

①原発は岩盤の上に建っている。これは半分はそうですが、半分はそうではないそうです。

②原発の耐震設計は岩盤を基準としている。これは正しいそうです。

③地震計は地表の揺れを基準としている。これも正しいそうです。

④地表の揺れは岩盤の揺れよりも遥かに大きい。これは間違っているそうです。揺れはほとんど変わらず、逆に岩盤の揺れの方が大きかったこともあるそうです。

2007年の中越地震では、柏崎市の地震動は793ガルでしたが、柏崎刈羽原発では1699ガルだったそうです。

原発訴訟では、原告側は大飯原発周辺に大きな地震が来たら大きな被害を受けると主張し、被告側の関西電力は大飯原発の敷地内に大きな地震が来ることはないので安心していいということを難しい専門用語を使って主張したそうです。素直に考えれば、完成電力の主張がおかしいことがわかると述べました。

大陸移動説は、発表当時は信じてもらえなかったけれど、今は多くの人が正しいと知っていると述べました。プレートには大陸を動かす力があり、日本は4つのプレートの上にあり、1000ガル、2000ガルの地震はいつでも来る可能性があるそうです。だから、1000ガルよりも小さい地震を基準地震動とするのは非科学的だと述べました。

南海トラフ地震は、30年以内に70%の確率で起き、地震規模はマグニチュード8~9で、人的・物的被害は3.11の10倍と予想されているそうです。これは西日本大震災と呼ぶべきであり、この地震が起きる場所に伊方原発はあると指摘しました。

四国電力は何ガルの地震を想定しているのかというと、181ガルだそうです。原子力規制委員会がどれくらいの期間審査したのかというと、18秒で審査を通しているそうです。裁判所はどのように判断したのかというと、実際に起きている地震がどの程度の地震なのかという重大な科学的事実に関心がなく、「他の地震なので関係ない」としたそうです。

正当な判断ができない理由は、極端な権威主義と頑迷な先例主義、科学者妄信主義、それらによるリアリティーの欠如だと指摘しました。

専門技術論争から真の科学論争へ向かうべきだと述べました。従来は、原発敷地ごとに将来にわたる最強の地震動を求めることは可能だとし、その最強の地震動を求める手法に技術的な問題があるから原発は危険であるとしていたそうです。しかし、現在は、原発敷地ごとに将来にわたる最強の地震動を求めることは、科学的に不可能だとされているそうです。そして、基準地震動を求める手法の是非よりも、600~1000ガル程度の地震動は、実際の地震観測記録という科学的事実に照らすと、ごく平凡な地震動であること、基準地震動を270ガルから1009ガルに引き上げることは不可能であることから、原発は危険だと結論づけることができると指摘しました。

3.11を経験した私たちの責任として、使用済核燃料の問題は科学的に解決できないこと、原発事故は停電しても断水しても起きるし、被害は250キロメートルに及ぶこと、原発は見当はずれの低い耐震性で造られてしまったことが判明していること、この3つを知ってしまった責任は重いと述べました。知ってしまった責任をどう果たすのかというと、この話をあなたの大切な人2人に伝えてくださいと述べました。そして、私の話に納得がいったら、あなたもあなたの大切な人2人に伝えてくださいと頼んでくださいと述べました。

最後に、キング牧師の言葉が紹介されました。

「究極の悲劇は悪人の圧制や残酷さではなくそれに対する善人の沈黙である。結局、我々は敵の言葉ではなく、友人の沈黙を覚えているのだ。問題に対して沈黙を決め込むようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める」。

 

続いて、質疑応答が行なわれました。

最高裁判決に国の責任はないという言葉があったが、そのことは今の政府の政策にもつながっているのという質問に対しては、最高裁判決は全くわかっていない、全く見当違いのものであり、地震研究本部が2002年に大きな地震が福島で起きる危険性があると発表していたが、国は原発は安全だと大見えを切ったと述べました。しかし、16メートルを超える津波が来れば事故になることはわかっていたことですが、最高裁は津波の方向が予想とは違った、水密化は必要なかったと判断したそうです。それが国のGXに影響したかどうかはわからないが、高裁はその後全て最高裁にならった判決を出していると述べました。ほとんどの裁判官は、最高裁で判決が維持されるかどうかで判断しており、憲法違反だと思うと述べました。

反核平和委員会では県内で放射線量測定の活動を続けているが、こうした活動をどう広めていけばいいかという質問に対しては、放射線量測定は本当に大事であり、放射線量がわかっていなければ客観的な根拠がわからないが、国は測定しようとしないので、客観的なデータは大切だと述べました。

核兵器と原発の関係を詳しく知りたいという要望に対しては、核兵器を製造する能力を潜在的に維持するために原発を持った方いいと言う政治家がいると述べました。しかし、イスラエルは核兵器を持っていることが確実だが原発は持っていないそうです。戦争をしているから、防衛上、原発を持つことは危険だからだそうです。核兵器は爆発させようとしないと爆発しませんが、原発はいかに安全にしようとしても強い地震がくれば爆発してしまうと指摘しました。

裁判長を決める仕組みはどうなっているのかという質問に対しては、東京などの大きな裁判所では裁判長が誰になるかは事件の順番で決まると答えました。小さな地裁では民事部の裁判長は1人だけなので、誰になるかわかるそうです。

2022年6月17日の最高裁判決を出した4人の裁判官のうち3人の方は巨大法律事務所に天下りし、その事務所は東電の代理人をしているとのことだが、こうした状況で司法の独立は果たされるのかという質問に対しては、最高裁判事3人のうち1人は元々裁判官で、退官して巨大法律事務所へ天下りし、2人は巨大法律事務所出身だと述べました。裁判官が一番やってはいけないことは、自分の利害で判断することだが、それをやった疑いが濃厚だと述べました。まともな判決を出した人は検察出身で利害関係がなかったそうです。圧力がかからなくても、下級裁判所の判事は最高裁判決に従ってしまうが、絶望してはいけないと思っていると述べました。

デブリはなくなるのか、核兵器物の処理ができるところはあるのかという質問に対しては、デブリは解決できないと述べました。堤未果さんが「本当に何が大切かはマスコミが何を言わないかでわかる」と述べているそうですが、今の危険は1、2号機の使用済核燃料が取り出せていないことであり、ある程度の地震で倒れる可能性があり、それが一番怖いと述べました。デブリは時の経過を待つしかないと述べました。核廃棄物もどうしようもなく、日本に安全に保管できるところはないと指摘しました。埋めずに、できるだけ安全な状態で保管し、後世の人に任せるしかないと述べました。

 

以上で報告を終わります。