さよなら原発埼玉県民学習会 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2024年は、再生の年です。

不正にまみれた政治を刷新し、コロナ禍で疲弊した医療・介護現場を立て直し、社会保障削減や負担増を撤回させ、防衛費倍増ではなく国民生活を豊かにするために税金を使わせ、憲法改悪を阻止し、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。そして、戦争・紛争が一日も早く終結し、避難している人々の生活が立て直されることを願います。

そして、能登半島大地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活が立て直されるよう祈ります。

 

 

3月10日、「さよなら原発埼玉県民学習会」にオンライン参加しました。

以下、学習会の概要をまとめます。

 

学習会の講師は河合弘之弁護士でした。

河合弁護士は原発関連の裁判を多く担当し、東電株主訴訟などで勝訴されているそうです。社会貢献活動にも取り組み、映画監督もされているそうです。

今回のテーマは原発と自然エネルギーであり、今何が問題になっているかを話したいと述べました。

今、社会問題となっている能登半島地震で、最も被害の大きい珠洲市では、かつて原発建設計画があったそうです。珠洲原発を阻止したのは市民の力であり、それが日本が壊滅するのを食い止めたと指摘しました。もし珠洲原発ができていれば、今回の地震で大事故になっていただろうとのことでした。

志賀原発は、幸運にも重大事故になりませんでした。

注目点は、第一に能登半島地震がみなが考えているよりも激しかったということだと指摘しました。4メートルの亀裂が起き、断崖絶壁になりました。もしそこに原発があれば、過酷事故になっていたと指摘しました。電力会社や政府の予想はあてにならず、あのような活発な活断層があるとは予想していなかったと指摘しました。ないと言われていたところにも活断層があったそうです。今の科学での地震予想には限界があり、電力会社はそれを自分たちに有利なように解釈するので、それを信じるととんでもないことになると述べました。

地震学や強震動学はまだ原発を安全にするほど発達しておらず、地震は複雑で実際に見ることができない、データが少ない、実験ができないという三重苦があると指摘しました。改めて、日本に安全な原発はできないと学ぶべきだと述べました。

第二に、地震で原発事故が起こったら逃げようがないということだと指摘しました。道路は寸断され、家屋は倒壊し、港湾も崩壊、津波、隆起などで使用不可能となりました。日本の避難計画は、原発の5キロメートル圏内は急いで逃げる、5~30キロメートルは屋内退避し、避難指示に従って避難するとなっているそうです。しかし、家屋が倒壊すれば屋内避難は不可能であり、避難も道路が寸断されればできないと指摘しました。日本の原発はほとんど海沿いや半島にあり、今回と同じく逃げようがないと指摘しました。しかし、原子力規制庁は根本的な見直しはしないとしているそうです。「改善に努力します」などと言うだけだそうです。

自然災害による重大事故が起きれば逃げようがありませんが、それが日本で最も可能性が高い事故だと述べました。しかし、対策しようとすれば原発を動かせなくなるので、その問題に手をつける気がないと指摘しました。

 

世界的問題として、ロシアによるウクライナ侵略があります。

ロシアによるザポリージャ原発の攻撃と占拠に対し、ウクライナは抵抗せずにあきらめました。抵抗して砲弾が原子炉に当たればヨーロッパが壊滅することになるからだそうです。原子炉から200メートルのところにロケット弾の着弾があり、もし直撃していれば大事故だったと指摘しました。

ロシアは原発からミサイルやロケット弾を発射しており、ウクライナは大事故の恐れがあるので反撃が難しいそうです。「原発の盾」になってしまっているとのことです。

学ぶべきことは、原発は国防上の最大の弱点だということであり、国防を真剣に考えるなら原発は無くすべきだということだと指摘しました。

しかし日本政府は、ロシアへの制裁でエネルギーが入って来なくなり、電気代の高騰や電力不足の恐れがあるとして、原発をさらに強化すべきという、火事場泥棒的政策転換をしたと述べました。

イスラエル問題、パレスチナ攻撃については、自国を守るためには何でもやる国だと述べました。イスラエルには原発がないそうです。核兵器は数十から数百発持っており、いよいよとなったら核攻撃するとしているそうです。核兵器を保有するには原発があった方が便利ですが、イスラエルは意識して原発を持たないそうです。それは、敵国から原発を攻撃されたら壊滅するからだと指摘しました。

学ぶべきことは、国防を本気で考えるなら原発を持つべきではないということだと述べました。

日本は、若狭湾沿いにずらりと原発を並べていますが、その先にどんな国があるかと問いかけました。その国がミサイルを発射すれば、PAC3で撃ち落とすのは不可能であり、7分30秒でミサイルが着弾するので防御不可能だと述べました。しかし、それが国防に反映されることはないと指摘しました。

国防関係者は本当はそのことを気にかけているが、原子力ムラの関係者の手前、言えないのだと述べました。日本は1日も早く原発をやめるべきですが、しかし、そんなことを言えば原子力ムラからにらまれてしまうと指摘しました。

福島第一原発事故から13年経ちましたが、デブリはまだ取り出せていないと指摘しました。

デブリは発熱し続けていて、冷却が必要だそうです。冷却水の中へは地下水が流れ込んでいて、そこからトリチウム以外を除去してタンクに収めていますが、それを安全だから海に流させてほしいということになりました。これば第二の加害だと指摘しました。

トリチウムが人体に遺伝的な影響を与えるかどうかは未知であり、「怖い」という人の意志は政策に反映されるべきだと指摘しました。

IAEAは、基本的に原子力推進国によって運営されており、信用することはできないと述べました。

ALPS処理水は「原発敷地内に保管すればいい。土地はある」と言うと、「原発敷地内の空き地はデブリ処理のために必要」という反論がされるそうです。しかし、デブリ処理ができるのは何年も、何十年も先だと指摘しました。

「中間貯蔵施設に保存すればいい」と言うと、「放射性物質を敷地外に出せない」と言われてしまうそうです。

「廃炉」とは何かは定義ができていないそうです。デブリはまだ1ミリグラムも取り出せておらず、原子炉の真下に落ちていると思われていましたが、爆発であちこちにへばりついている状態だそうです。非常に硬く、取り出すのは困難、不可能だと指摘しました。

当面安全にしておくには鉄棺のようにしておくしかないという説が有力だそうです。

しかし、政府と原子力ムラは、鉄棺にしておくしかないとは言えないそうです。それを言えば、福島県や福島県民から非難や反発をされるからだそうです。周りがそれを言い出すのを待っているのであり、鉄棺にすべきだという世論になれば言い出すつもりではないかとのことでした。日経新聞が言い出しているそうです。

本当に難しい問題だが、そうした流れになると述べました。

日本には、礼儀正しい、安全などのイメージがあるが、汚染水は処理したと言っても「液体ゴミ」であり、非常に危険な放射線汚染を受けた水であり、そうしたゴミを公海に捨てるのは反道徳的な行ないであり、日本の道徳性を損なうと指摘しました。

たとえば、ロシアが原子力潜水艦を捨てた時に日本は抗議しましたが、それと同じことをすることになると述べました。

汚染水放出が一番安いと政府は考えていたが、中国への補償に3,000億円払うことになれば、数十億円のはずが数千億円になると指摘しました。

「他国も原発の処理水を流している」と言いますが、事故の処理水とは異なると指摘しました。

 

次に、「エネルギー基本計画」について取り上げました。

原子力ムラは恐竜のようなものであり、福島第一原発事故で首の皮一枚までいったが生き返ってしまったと指摘しました。

原発はこんなに危険なのになぜ続けようとするのかというと、「今だけ」「金だけ」「自分だけ」が本音だと指摘しました。原発は非常にもうかり、1日で数億円、1年で2,000~3,000億円の利益になるので、とにかく再稼働しようとしているそうです。

国家戦略として必要だとしているのは経産省などで、原発保護政策を出しているそうです。

そのため、自然エネルギーの発展にはあまり力を注いでいないそうです。

実際の行政は、自然エネルギーの足を引っ張っていると指摘しました。

全国のメガソーラーは、太陽光の反対運動に直面しており、原子力ムラはしめしめと思っていると指摘しました。

これは、地球温暖化などのグローバルな環境問題と、山が削られる、景観、バードストライクなどのローカルな環境問題とのぶつかり合いだと述べました。

両者の話し合いによる解決が必要であり、自然エネルギーを憎むのは問題だと指摘しました。

自然エネルギー叩きは原発推進につながり、原発を自然死させるには自然エネルギーが必要だとのことでした。

小型原発は、コストが高過ぎでアメリカではお釈迦になっているそうです。工期が短く、事故は小規模だといいますが、現実的ではないと述べました。使用済み核燃料は必ず出てくるものであり、テロの対象になりやすいことも変わらないと述べました。

通常の原発は100万キロワット、小型原発は30万キロワットですが、事故の過酷さは同じだと述べました。

エネルギー基本計画はきちんとしたプランを立てるべきだと指摘しました。

 

原発訴訟は、刑事事件としては最高裁へ行っているそうです。

判事に問題があると指摘しているそうですが、原子力会社とつながりがある巨大法律事務所出身だそうです。なお、弁護士出身判事の半分が巨大法律事務所出身なのだそうです。判事を拒否する動きもあるそうです。

民事事件としては、避難路問題が中心となっているそうです。原発事故が起きて問題なく避難できる原発は、日本では皆無であり、そうした原発を動かし続けるのは問題だとしているそうです。東海第2原発差し止め訴訟の水戸地裁判決は、そうした考えによるものだそうです。

全国の訴訟で避難路問題が中心になっており、裁判官にもわかりやすいと述べました。

反論として、事故が起きなければ避難は問題にならないとの見解がありますが、しかし、絶対に事故が起きないという保証はなく、電力会社も「絶対に事故は起きない」とは言わなくなっているそうです。

たとえば船舶法では、どんなに事故が起きる確率が低い船であっても、乗員分の救命艇がなければ出航してはいけないことになっているそうです。多重防護としては当然のことだと述べました。

しかし、原発については、避難までは電力会社の責任ではなく、避難対策は政府がやるべきとの主張があるそうです。それに対して、原告は事故が起きれば生命の危険があるので原発を止めるべきだと主張しており、人格権の問題だと述べました。

ここ数年は「樋口理論」、大飯原発を止めた裁判官、樋口英明氏の理論が中心になっているそうです。それは、日本は地震大国であり、そこにおいて原発の安全性は耐震性によって確保されなければならず、通常起こる地震で安全かどうかで判断するべきだというものです。

しかし、日本の原発は通常の地震を下回る地震動を基準地震動として設計されているので、危険であり、動かせないと述べました。耐震性において不十分だということです。

原発訴訟は勝ったり負けたりですが、福島第一原発事故後は勝率は上がっているそうです。国民の運動によって進められるべきだと述べました。

 

COP28で2050年までに原発を3倍にする、CO2をなくすには原発が一番だと、世界の原子力ムラが主張しているそうです。現在、原発は365基であり、それを1,100基にするということですが、しかし、その多くは老朽原発であり、2050年までには原発は3分の1になると述べました。

世界の原発は新設よりも廃炉の方が多く、大量廃炉の時代に入ると指摘しました。

COP28では再生可能エネルギーを3倍にするという主張もされたそうです。2022年は3,400ギガワットだった再生可能エネルギーを、2030年までに11,000ギガワットにしようとしているそうです。太陽光が最大だそうです。

世界的に言うと、自然エネルギーは爆発的に増えており、ドイツは1980年を2とすると、2035年には100になる見込みだそうです。

2020年には、太陽光発電は1,585ギガワット、風力発電は1,051ギガワット、原子力発電は365ギガワット、洋上風力発電は80ギガワットとなっており、世界的トレンドは明らかだと指摘しました。

なぜかというと、自然エネルギーのコストはどんどん下がっていき、普及率が上がるそうです。

注目すべきことは、蓄電池と蓄電地としてのEVだと述べました。

環境主義者や革新政党の政策では、自然エネルギーは増えないが、経済原理でなら増えると指摘しました。

もうかるから自然エネルギーを増やすという時代になると述べました。

典型が中国で、自然エネルギーでダントツの世界一だそうです。アメリカでも安くてもうかると自然エネルギーが発達しており、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、フランスさえ自然エネルギーに注力しているそうです。

それは日本との経済格差につながり、日本も方向転換する時が必ず来ると指摘し、「原子力発電の自然死」と表現しました。

日本メディアもそれに気が付いており、日経新聞は自然エネルギーに力を入れているそうです。しかし、原子力ムラに配慮し、原発も否定しないそうです。

蓄電池の発達は自然エネルギーの欠点を補い、原子力ムラがいくら足を引っ張っても引っ張り切れなくなる時が来ると指摘しました。

電力会社も政府もわかっていて準備しており、早くて10年、遅くても30年以内にその時は来ると述べました。

しかし、「原子力発電の自然死」の前にもう一度原発事故が起これば国が滅びかねないと指摘しました。だから何もせずに待つのではなく、自然エネルギーを推進し、早く原発をなくせという両輪の運動が必要であり、そうすることで安全で幸せな国がつくれるという世論をつくることが重要だと述べました。

そして、これからも団結して運動を進めましょうと呼びかけました。

 

以上で報告を終わります。