2024年働くなかまの春をよぶつどい | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2024年は、再生の年です。

不正にまみれた政治を刷新し、コロナ禍で疲弊した医療・介護現場を立て直し、社会保障削減や負担増を撤回させ、防衛費倍増ではなく国民生活を豊かにするために税金を使わせ、憲法改悪を阻止し、安心して働き続けられる職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。そして、戦争・紛争が一日も早く終結し、避難している人々の生活が立て直されることを願います。

そして、能登半島大地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、一日も早く生活が立て直されるよう祈ります。

 

 

2月25日、働くなかまの春をよぶつどいに参加しました。

大変遅くなってしまいましたが、以下、その概要をまとめます。

 

開会のあいさつは、埼労連女性部長の北村さんが行ないました。

北村さんは、ご参加のお礼と、能登半島地震の被災者へのお見舞いを述べ、ウクライナ戦争が2年となる中、世界から戦争がなくなることを願い、行動を広げることを呼びかけました。

また、安心安全の医療介護のために大幅増員を求めると述べました。

この集会は、労働組合を学ぶ場として、毎年この時期に開催していると述べました。暮らしの向上に向けて行動していきましょうと呼びかけました。

 

次に、講演「2024年問題から見える『働き方関連法』の問題」が行なわれました。講師は伊須慎一郎弁護士でした。

歴史学者の加藤陽子さんが憲法9条は平和主義を体現し、自由を守るために重要な条文であり、軍隊が幅をきかせている国は自由を奪われているが、日本では自由のためにたたかうことがまだまだできると述べていたそうです。

今は労働組合がとても大事な時期であるが、経団連は「労働組合はいらない」として「労使自治」を主張しており、学者の中にも同じ考えの人がいると述べました。

使用者にとっては労働基準法は邪魔であり、すり抜けようとすると指摘しました。

「働き方関連法」は労働規制の強化かというと、一方で時間外労働の規制が目的になってはいますが、多様な働き方として人材の流動化を進めようとしており、それを進める企業の社員を招いて学習会をしているそうです。企業規模が大きいほど労使の力の差は開き、労働者が置かれた立場は苦しいと指摘しました。

労働基準法第36条に基づく時間外労働の上限規制は、ワーク・ライフ・バランス、女性や高齢者の労働参加を目的としており、「労使が協定しても超えることができない」ことがミソで、経団連はこれをなきものにしたいと考えているそうです。

1日8時間、1週40時間が法定労働時間であり、大原則です。ワーク・ライフ・バランスを考えるなら揺るがせないものであり、時間外労働は例外であるべきだと指摘しました。

しかし、時間外労働の上限は月45時間、年360時間が法律上の原則ですが、特別条項で年720時間とすることが可能です。これは、異常を「例外」として認めているということだと指摘しました。医師は更にひどい上限になっています。そもそも、原則と例外の関係がおかしいと指摘しました。また、多様な働き方は、本来は1つの仕事で生活できる賃金であるべきだと指摘しました。

続いて、適用除外・2024年3月31日までの猶予となっている事業・業務について、具体的に説明がされました。

建築事業は、災害の復旧・復興の事業を除いて、上限規制が全て適用されるそうです。しかし、日本国際博覧会協会は、大阪万博は上限規制の適用外にするよう要請しているそうです。新国立競技場の地盤改良工事で施工管理をしていた23歳の新入社員が過労自死した事件があり、月200時間の時間外労働をしていたことがパソコンのオン・オフの記録から判明したそうです。いのち・健康の問題よりも仕事の納期を優先させていいのかという問題です。また、「特例」の時間までは働かせてよいとされていますが、月100時間の時間外労働は過労死ラインであり、これを国が認めているのが問題だと指摘しました。

自動車運転の業務は、平成元年の改善基準告示で1日の拘束時間を原則13時間以内、最大16時間以内とされており、それが1ヵ月293時間、年間3516時間拘束できる根拠とされてきたそうです。国土交通省告示では、「運転者が一の運行における最初の勤務を開始してから最後の勤務を終了するまでの時間(ただし、改善基準告示第四条第三高において厚生労働省労働基準局長が定めることとされている自動車運転者がフェリーに乗船する場合における休息期間を除く。)は百四十四時間を超えてはならない」となっており、6日間144時間連続運行を可能としていたそうです。1週間出ずっぱりの事例もあり、事故・過労死の危険があると指摘しました。役所が長時間拘束を認めてきたということです。

年間960時間という大特例は、「時間外・休日労働を含め月100時間未満2~6か月平均80時間以内の規制、月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制」は適用されないそうです。小手先の対応であり、「働き方改革」に値しないと指摘しました。

インターバル11時間は努力義務に過ぎないそうです。元々過酷な条件がほぼ変わっていないのは、人手が足りないためだと指摘しました。

『労働法律旬報』に取り上げられた事例によると、福岡~関西方面、一般道を月10~11往復する勤務で、給料は月30万円だが、基本給は月12万円程度で、1運行2万円程度の歩合給がつき、高速代は差し引かれ、残業代はなしだそうです。

ひどい契約内容を把握し、労働組合として声をあげるべきだと指摘しました。

「医師の働き方改革」については、労働時間の上限規制が5段階に分けられたそうです。

A(一般労働者と同程度)は、年の上限時間が960時間で、面接指導の義務があり、休息時間の確保は努力義務となっています。連携B(医師を派遣する病院)は、年の上限時間が1,860時間ですが2035年度末を目標に終了とされており、面接指導と休息時間の確保が義務となっています。B(救急医療等)も同様です。C-1(臨床・専門研修)とC-2(高度技能の習得研修)は、年の上限時間が1,860時間で、面接指導と休息時間の確保が義務となっています。

『労働法律旬報』に、小児科医だった夫を過労自死で亡くしている中原のり子さんが寄稿した記事によると、検討会副座長を務めていた渋谷健司氏は「年間の時間外労働一八六〇時間に納得できるロジックがあるわけではないので、前に進めるのならば僕ではない人を副座長に選んでまとめていただきたいと思っている」と述べて辞任したそうです。

しかし、過労死基準はエビデンスがあるはずだと指摘しました。

大事なのに成り手がどんどん減っている仕事として、判事補、学校の先生、自衛官があげられました。判事補は、頻繁な異動があり、東京地裁では1人月200件の裁判をもつことになるそうです。ちゃんと審理が尽くされているのかと疑問を提示しました。

人が減ってどうしようもなくなる前に、働き方を見直さなければならないと指摘しました。

日本経団連は、「労働者の価値観が多様化しているのに、労働法は画一的で複雑」と主張しているそうですが、労働基準法は最低基準だと指摘しました。どんなに考え方が変わっても、労働者の体は同じであり、守らなければならないと述べました。日本経団連は「自主的な健康管理に一層努め、政府・健康保険組合が自己管理を支援する」としているそうですが、何を言いたいのかというと、「労働基準法は邪魔だからいりません」ということであり、これを許せばとんでもないことになると述べました。

また、抜け穴だらけの労働時間規制だが、働いた分の残業代は払わなければならず、残業代を払わなくてもいい働き方を増やしたいと経団連は考えているそうです。それが”雇用によらない働き方”への誘導であり、業務委託、請負、フランチャイズなどだそうです。こうした働き方が増えれば、諸々の労働規制を回避することができ、社会保険料の企業負担分も節約できるということです。

労使の力関係が対等でないからこそ、強制法である労働基準法や労働組合が必要だと指摘しました。

丸八真綿のケースでは、雇用から非雇用へ、正社員から委託販売へと移行させ、経費を労働者へ押し付けたそうです。具体的には、売上が上がらない社員を「93社員」として委託販売にさせたそうです。

スーパーホテル事件では、ホームページと実際の条件が全く違い、1,100万円の契約で24時間ホテル業務をするというもので、休むためにバイトを雇うための費用はホームページには「別途」とありましたが、実際には1,100万円の中に含まれていたそうです。裁判官は、「マニュアルでいかに細かく指示されたとしても、指揮命令とは異なる」という判断をしたそうです。ほとんどの裁判官は、契約内容ではなく実態を見るとしていますが、多様化が進む中で裁判官の考え方も緩んでいると指摘しました。

「労働者性」の考え方は、昭和60年の基準であり、現代的働き方にマッチするのかという疑問を提示しました。使用従属性に関する判断基準が今の働き方にマッチするのか、実際に働いている人たちと連帯して、労働組合が世論を喚起する必要があると述べました。

おわりに、裁判所で労働者の働き方を抜本的に変える画期的な判決を出すのは難しく、労働組合が変えるしかないと述べました。そして、相談を法的に整理し、一人でも多くの人を守り、いずれはライフ・ワーク・バランスを実現できるように社会を変えるためにがんばることを提起しました。組織率が下がったとは言え、労働組合には力があるのであり、困った時には弁護士と力を合わせていきましょうと呼びかけました。

 

続いて、質疑応答が行なわれました。

経団連が「労使自治」と言っているということだが、労働組合の組織率が下がっており、労働組合のないところはどうなっているのか、今後どのような形で労働組合をなくそうとしているのかという質問がされました。

伊須弁護士は、確かに憲法に労働三権が書かれているので労働組合を禁止はできないが、労働者代表選挙では少数組合は負けてしまうので、労働者代表によって労働条件を変える力を与えるようにするのではないかと答えました。司会の小内弁護士が補足し、いろいろなタイプの労働者は団結しにくく、団結を限定する力になると指摘しました。

教職員組合のたたかいで伊須弁護士にお世話になったという参加者から、私たちの願いは8時間労働で生活できる賃金だが、大企業は賃金をあげずに働かせようとしており、たとえば、二つの会社が労働者を交換することで残業代を払わないようにしているが、これを防ぐ法律はないのかと質問しました。

伊須弁護士は、一つ考えられるのは、現場の指揮命令権、多重下請け、派遣法違反などで正すことができるかもしれないと答えました。労働組合に入ってもらって交渉することはできるが、最低賃金を上回っている場合はなかなか変えないと指摘しました。小内弁護士は、同じような事件を担当しているが、ある時急に給与明細が2枚になり、60時間以上は派遣会社の扱いにされていたそうですが、残業代はトータルで計算しないと違法になると述べました。

 

次に、事例報告が行なわれました。

フリーランスの働き方について、ユニオン出版ネットワークの方が報告しました。

ユニオン出版ネットワークとは、出版関連で働くフリーランス、個人事業主の労働者の集まりだそうです。昨年10月に始まったインボイスが大きな問題になっていると述べました。インボイスの導入により、発注者が仕事を発注する場合に認められていた仕入れ税額控除が、非課税業者の場合は認められなくなりました。

ユニオンでは2023年12月4日から17日の間にメーリングリストでアンケートを行ない、59人から回答があったそうです。回答者のうち29%がインボイス発行業者に登録しており、理由は「取引先からの要求」が4件、「不利になるから」が5件だったそうです。71%は登録しなかったそうですが、理由は「制度に反対」が9件、「登録が面倒」が7件だったそうです。取引先からの通知、問い合わせについては、「インボイス登録の有無、登録番号」が51件だったそうです。施行後、クライアントからの報酬の変化は、「消費税分の減額」が5件、「一部減額」が6件などだったそうです。出版業界は零細が多く、事務作業増加の負担が大きく、厳しい経営事情があるとのことでした。

出版産業全体の存続に関わる問題であり、事務作業の変化として「不明、特に変化なし」は8件で、その他は「事務的な手間が増えた」という回答だったそうです。

インボイス制度開始にまつわる体験や感想としては、「交渉に躊躇してしまう」、成功例としては「泣き寝入りせずに交渉した方がいい」、「激変緩和措置を」、「発注する方も困っている」、「膨大な作業が発生」、「交渉を頑張ったが、相手側も小規模業者。一緒に声をあげましょうと言ったが、決まったものは変わらないという返事だった」などがあげられました。

 

会計年度任用職員の雇用改善について、狭山市職員組合の方が報告しました。

狭山市では、図書館司書の雇い止めが問題になっているそうです。中央図書館で22年間勤務し、そのうち17年間は正規よりも出勤日が多い非正規職員として働いていましたが、3年目の公募で雇い止めになってしまったそうです。公募の一次試験は民間へ丸投げされており、人事評価Aランクで統括する立場なのに、一次試験が落とされてしまったそうです。

労働組合に入って交渉するも、「違法ではありません」という対応で、図書館員の40%が入れ替えられてしまったそうです。

正規職員は司書資格がある人は1人で、他は無資格、無経験だそうです。非正規職員は1年任期の会計年度任用職員で、3年経ったら試験を受けて、12月の一次試験で落とされたのに、3月まではめいっぱい仕事で、学校支援、ボランティア育成、講座講師などを行なっているそうです。ベテランが多く雇用を切られることになっており、10年経験しないとものにならない仕事なのに、1年契約なのはどういう趣旨なのかと疑問を投げかけました。

会計年度任用職員は様々な労働法制から除外されており、雇用保険もなく、最低賃金すら適用除外で、5年勤続無期転換も適用されないそうです。基本的人権が守られていないと指摘しました。一人では声は上げられず、たくさんの人の支援が必要だと述べました。

あきらめず交渉を続けており、皆さんの支援が必要だと呼びかけました。

一次選考を民間企業に丸投げしているということだが、市との契約はどうなっているのかという質問が出されました。報告者は、市とは委託契約になっており、採用業務を1件2,000円台の後半で、全体で数十万円で契約していると答えました。

小内弁護士は、住民サービスの観点からはサービスの低下になると指摘しました。

報告者は、図書館は公教育施設であり、学校の先生や学童の指導員からも頼りにされていると述べました。読み聞かせ講座などは人気講座で、指名で相談にのることもあったそうです。児童書の発注、除籍も担っており、地域密着が重要だと述べました。児童書はクラシック、スタンダードが核で買い替えが必要であり、新しいスタンダードなどの専門知識が必要だそうです。新刊を売る場である書店と図書館の違いをふまえた選定が必要であり、司書は専門職だが、それが理解されていないと指摘しました。

 

次に、ヤマト運輸リストラ問題について、栃木建交労の方が報告しました。

マスコミ、新聞が取り上げていますが、そもそもはヤマト運輸がDM便、ネコポスのサービスの採算がよくないとして日本郵便へ業務移管することになった昨年6月に発表され、4,500人のパート、2万5,000人の委託労働者が今年1月に職を失うことになったそうです。

建交労は大変な問題だとしてヤマト問題に関わり、ホームページに相談窓口をもうけ、いろいろな場で呼びかけを行なってきたそうです。

茨城県のベースのパート労働者から相談があり、突然紙切れ1枚で雇い止めにされたという訴えだったそうです。DM便の仕分け担当者は多くが夜勤で、多くが女性、年齢層は20~60代で、親の介護をしている人やシングルマザーもいるそうです。

10月に労働組合を18人で結成し、現在は21名に増加し、リストラ対象のほぼ全員が組合に入ったそうです。10月16日に初めての団体交渉を行ない、並行してネット署名を呼びかけ、8万筆を超えているそうです。

1回目の団体交渉で、ヤマト側はまずは再配置を進めますと言を翻したそうです。交渉前は「とにかく辞めてもらうしかない」と言われていたそうですが、ヤマトは世論を気にしたと思われると指摘しました。

その後、茨城のマネージャーも態度を変え、90ヵ所の再配置リストを提示してきたそうです。組合は労働条件が不利益変更にならないように交渉し、退職する場合は3ヶ月分の給料と有給休暇の買い上げを保障させたところ、ヤマトがもう信用できないと9人が退職を選択したそうです。2月以降、宅急便の仕分けで働くことになり、時給が上がった人もいるそうです。

マスコミが10月の交渉を報道し、全国のヤマトで再配置の提示が行なわれたそうですが、労働組合ができたのは茨城のみで、他は個別交渉し、再配置早紀が自宅から遠かったり、時間が短くなったりしましたが、パート4,500人中1,850人が雇用を継続することになったと述べました。

委託のクロネコメイトについては、ヤマトは委託契約だからと団体公表を拒否しているそうです。高齢者が多く、再就職は難しいそうです。郵便局は65歳定年ね、フルタイムが基本だそうです。よって、2万5,000人以上が職を失っていることになります。

委託契約ですが、実質的には労働者であり、都労働委員会へ救済申し立てを行なっているそうです。ヤマトの団体交渉拒否は変わらず、個別の相談には応じるとし、何人かは再配置がされたそうです。労働組合としては、労働者として認めるように都労働委員会へ働きかけを続けると述べました。

1月9日、ヤマト前で宣伝行動を行ない、団体交渉に応じるよう求めたそうです。

今の労働運動の矛盾として、企業内に連合傘下の8万人の労働組合があるが、非正規の問題では一歩も動かなかったと指摘しました。連合そのものは、非正規労働者の待遇改善の運動をしているそうですが、本気で待遇改善を考えるなら職場の労働組合に受け入れるべきだと述べました。

労働組合をつくったことで激励され、他のたたかいでも声を上げるきっかけになればいいと述べました。

 

今回のつどいは、実参加が86人、Zoom参加が16人だったそうです。

以上で報告を終わります。