ピースフォーラム2023 「沖縄を再び戦場にしないために~わたしたちにできることを考える~」 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

2023年は、逆転の年です。

ロシアのウクライナ侵攻を言い訳とした軍拡とそれに伴う防衛費倍増を許さず、社会保障の削減や負担増、増税の方針を転換させ、不十分なコロナ対策を見直し、疲弊している医療従事者・介護従事者を支援し、人員増のための施策を行ない、憲法改悪を阻止し、安心して働ける職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。

そして、戦争・紛争が一刻も早く終結し、避難している人々が安心して過ごせるようになることを願います。

 

 

12月8日、「ピースフォーラム2023」に参加しました。

今年の学習講演のテーマは「沖縄を再び戦場にしないために~わたしたちにできることを考える~」で、講師は映画監督の三上智恵さんでした。

以下、その概要をまとめます。

 

三上さんの最新作は『沖縄、再び戦場へ』という仮題がついていましたが、『戦雲』とタイトルを変えて3月16日からポレポレ東中野で公開される予定だそうです。

沖縄はいつ戦場になってもおかしくない状態だそうです。

三上さんは毎日放送、沖縄琉球放送で活動してきましたが、基地問題は全国ネットでは放映されず、唯一、朝や深夜の枠の「テレメンタリー」で放映されるだけだったそうです。2004年にフリーとなり、ドキュメンタリー映画をつくり始めたそうです。

今、放送局はもっと駄目になっており、報道番組は全てワイドショーになり、私たちが戦後積み上げてきたものが砂上の楼閣になっていると述べました。メディアが駄目になると、その速度はもっと早まると指摘しました。

三上さんは親が転勤族で、30年間沖縄で暮らし、子どもの頃から沖縄のことを考えてきたそうです。大学では沖縄の民俗学を研究し、宮古島へ入り浸っていたそうです。

辺野古基地反対闘争が報道されないのは、報道は「公平に」しなければならないからだそうです。反対する人たちと報道するなら、賛成する人たちも報道しなければならないということです。しかし、賛成運動をしている人というのはいないそうです。漁ができなくなる補償などがあるので、基地ができてもいいと思う人はいても、積極的に基地をつくってほしいと運動している人はいないということです。

辺野古新基地は、滑走路、弾薬庫、軍港が一緒になった基地として構想されているそうです。

1995年に米兵による少女暴行事件が起こり、沖縄県が基地提供をやめるという怒りの表明をしたことにより、普天間基地が返還されることになり、その代わりに新基地が建設されることになりました。実際には、事件を利用して日本の税金を使って新しい基地を建設することにしたということなのだそうです。

何度もだまされて基地がつくられていると指摘しました。現在は、米軍はもう辺野古の基地は必要としておらず、自衛隊が使おうとしているそうです。

三上さんは5年で4本のドキュメンタリー映画をつくりましたが、ここ4年間は映画がつくれずにいたそうです。

2013年に製作した『標的の村』は、東村高江の映画でした。高江は北部訓練場の中にある村で、約150人が在住しているそうです。SACO合意により、北部訓練場の上部が返還されることになりましたが、その代わりに高江の周辺に6つのヘリパッドが建設されることになりました。そのヘリパッドはオスプレイが使い、高江を訓練の標的にするためにわざわざ集落の近くにつくることとされたそうです。アメリカ軍の訓練は、レーダーにかからないように山の稜線ギリギリを飛び、無灯火で、村の明かりを頼りに飛行するという危険なものだそうです。実は、北部訓練場にはかつて、ジャングル訓練のためにベトナム村と呼ばれる場所があり、住民がベトナム人の役をやらされていたそうです。

次に製作した『戦場ぬ止み』は辺野古の映画でした。辺野古新基地建設は完成しないのに続けられていると指摘しました。基地があると、騒音、環境問題、事件、事故などにより、日々の生活が苦しくなり、一つ一つの問題への抗議を繰り返してもよくなりませんが、減らしてはもらえるかもしれません。しかし、一番の恐怖は、戦争が起きれば何もせずに殺されざるを得ないということなのだそうです。そして、基地の近くに住むということは、平和に生きる権利が奪われているということだと指摘しました。

終戦後、沖縄県は27年間占領され、無権利状態、憲法が適用されない状態でした。沖縄返還運動において、「憲法は波の向こうに見える灯台だった」と言われているそうです。しかし、復帰によって憲法は適用されたのかと問いかけました。

50年経って、沖縄は再び戦場にされようとしているそうです。2019年、共同通信のスクープで、日米共同作戦計画が明らかになったそうです。南西諸島を攻撃拠点として中国と戦争するという計画ですが、自衛隊は住民保護の余力なしとされていたそうです。有事の際は作戦遂行が優先され、災害時と違って自衛隊に住民保護の義務はないのだそうです。

太平洋戦争の際の日本軍も同様で、三十二軍、沖縄守備隊の生き残った参謀が戦後にインタビューに応えて、「住民を守るということは作戦に入っていなかった」、「住民の命は大事だが、作戦遂行には足手まとい」と述べていたそうです。

三上さんは、辺野古に基地をつくりたいのは誰かと問いかけました。

日本政府かというと、総理や防衛大臣はころころ変わると指摘しました。

米軍かというと、米軍も基地が完成するとは思っておらず、使う気もないと指摘しました。「米軍が求めている」という日本政府の言い訳は嘘なのだそうです。

普天間基地の機能は必要なものではなく、訳のわからない税金の無駄遣いだと指摘しました。辺野古の弾薬庫は自衛隊が使うためのものだそうです。

アメリカは太平洋の西側を管轄し、「エアシーバトル構想」という中国を外に出さないための構想があり、第一列島線でくい止めようとしているそうです。オフショア・コントロールと呼ばれる、南西諸島に引き付けて倒す計画だそうです。

たとえば宮古島と石垣島の間など、島と島の間には「無害通航権」というものがあり、ミサイル発射台にカバーをかけたり、潜水艦は浮かんだりして、無害であることを示せば通行できるそうです。実際には様々な国の軍艦が通行しているそうですが、しかし、日本では中国の船のことしか通行しないそうです。それは、危機があるとすれば軍事費の根拠になるからだと指摘しました。

2015年、三上さんは奄美諸島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島を取材したそうです。

アメリカは「中国が事を構えようとしている」としており、日本は威嚇で撃てと言われれば拒否できないそうです。それが当たってしまえば戦闘になると指摘しました。そして、アメリカは同盟国に先に撃たせようとしており、だから安倍元首相は「集団的自衛権容認」を閣議決定したのだと指摘しました。

2015年の宮古島、石垣島、与那国島の取材により、三上さんは『標的の島 風かたか』とい映画を作成しました。「風かたか」とは風除けという意味だそうです。この映画では、この国が戦争をする国になってしまい、その一歩を踏み出しているということが表現されているそうです。

この「風かたか」という言葉は、古謝美佐子さんの「童神」という歌の3番の歌詞にあり、渡る世間には強い風雨があるが、自分が子どものための風かたかになりたいという内容が歌われているそうです。そして、うるま市で米軍属に殺害された女性の追悼集会で、稲嶺元名護市長が「また沖縄の子の風かたかになれなかった」と述べたそうです。

次に三上さんがつくった映画は、『沖縄スパイ戦史』という映画だそうです。

沖縄戦は、軍隊が住民を守ったことは一回もないとわかる戦争だったそうです。沖縄戦の末期では、日本軍の3割が沖縄の人となっており、護郷隊という沖縄の少年たちの部隊がつくられ、白兵戦をやらされたそうです。それには陸軍中野学校が関わっており、情報戦、秘密戦を指導していたそうです。

日本軍に命を奪われた沖縄県民は、3000~4000人いるそうです。スパイとして虐殺された人たちが数百から1000人ほど、そして、集団自決を強いられた人たち、マラリア地への強制移住をさせられた人たちがいたそうです。この強制移住にも陸軍中野学校が関与していたそうです。

 日本軍は増援がないことはわかっていたので、沖縄県民を軍に引き抜き、労働力としても県民を利用し、空港をつくらせたり食糧をつくらせたりしたそうです。その結果、県民が軍の内実を知り過ぎてしまい、スパイリストがつくられたそうです。そのリストに載っていたのは、戦争に反対している人や海外から帰ってきた人などで、組織的な殺害が行なわれたそうです。

太平洋戦争で、日本国内において住民がいるところが戦場になったのは沖縄だけであり、軍隊のなれの果てを見たのも沖縄の人だけだと指摘しました。

宮古群島と八重島は「先島」と呼ばれ、武力攻撃予測事態になったら島外避難する地域とされているそうです。2023年4月までに市町村が避難計画を立てる義務を負い、12万人九州へ避難する計画が立てられましたが、九州は何の連絡も受けていないそうです。

例えば、与那国島では住民がバスで移動し、飛行機か船で避難する計画だそうです。与那国島には2016年に沿岸警備隊として自衛隊が入ってきているそうです。住民投票で賛成が多数だったとのことですが、既に自衛隊が来る準備のためにたくさんのお金が動いてから住民投票が行なわれ、わずかに賛成が上回ったそうです。2022年に、急に戦車やPACK3が来て、ミサイル部隊が駐屯することになり、シェルターもつくられたそうです。つまり、攻撃されることが前提となっているということです。

本土の人たちが漠然と「怖い」と思ったことで、南西諸島にミサイルが置かれていくと指摘しました。自衛隊はアメリカの二軍であり、与那国島に配備された自衛隊員はミサイルの撃ちあいになれば真っ先に死ぬ人たちだそうです。

三上さんは何のために戦うのかと問いかけました。

与那国島では「安心になる」と言われて自衛隊を受け容れたのに、何かあれば真っ先に逃げなければならない場所になってしまっていると指摘しました。与那国島は軍事費をつぎ込むためのアイコンとされており、何かあればもう島に戻れなくなってしまうそうです。牧場は、1週間放置すればもう復活できないそうです。

噴火で全島避難した島の例が出されますが、災害の場合とは避難についての法律が違い、武力攻撃事態法では国が復興を補償してくれるかどうかは明らかにされていないそうです。

しかし、全国のニュースではこうしたことは報道されないと指摘しました。

そのため、三上さんは今『戦雲』という映画を編集中であり、何時間も撮影したものを120分にしようとしているところだそうです。

 

質疑応答では、講演の途中にあった辺野古基地は何のために、誰がつくりたいと思っているのかという問いに答えはあるのかという質問がされました。

三上さんは、それは一人一人が考えてほしいと述べました。三上さんとしての答えは、防衛というものをまともに考えたことがない日本の有権者たちだとのことでした。沖縄のことを何も考えていない人たちが国会議員を選ぶので、沖縄では民主主義が機能しないと指摘しました。司法も沖縄については機能しないと指摘しました。日本の国民がアメリカに支配されている現実を理解して、変えようとしなければ変わらないと述べました。

正解は人によって違うと述べました。

安倍元首相がいなくなっても何も変わらず、既成の団体が機能していない中では、一人一人が止めなければ止まらないと指摘しました。

安保3文書は、日本が主体となって戦争することを宣言したものであり、沖縄だけでなく、日本にある全ての基地が標的になると指摘しました。そして、第一の標的は東京、横田基地や座間基地だと指摘しました。太平洋戦争では沖縄から攻撃されたのは本土攻撃をするためだったが、今は沖縄から順に攻撃するということはないと指摘しました。

「防衛は国の専権事項」と首長たちは言うが、そんなことはなく、議論もなく怖がっていては沖縄、与那国がミサイルに埋もれてしまうと述べました。

既に避難訓練という形で国民は協力させられており、災害訓練と有事訓練が融合して進められているそうです。医療従事者も協力させられていくことになるそうです。

戦争を止めるためには、一人一人が意識して、流れに乗せられないようにしなければならないと述べました。

 

以上で報告を終わります。