第49回中央社会保障学校 第1講座 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

ロシア軍によるウクライナ侵攻に抗議し、1日も早く停戦し、ウクライナに平和が戻ることを願います。

また、ロシアによる核兵器使用の脅し、原発への攻撃は、世界を危険にさらす暴挙であり、決して許されるものではないことを訴えます。

 

2022年は、再起の年です。

総選挙での野党共闘の成果と不十分だった点をもう一度確認し、参議院選挙に向けて再出発し、深刻な医療従事者・介護従事者不足に具体的な対策を講じ、不合理な病床削減をストップさせ、憲法改悪を阻止し、差別やハラスメントのない職場をつくるため、行動し、声を上げることを提起します。

 

 

9月17、18日、第49回中央社会保障学校にオンライン参加しました。

まず、第1講座の概要をまとめます。

第1講座のテーマは「安全保障と国民生活」で、講師は宮﨑礼二明海大学経済学部准教授でした。

 

宮﨑先生は、今の日本は安全保障というと軍事安全保障だとしていますが、軍事安全保障と社会保障は財政の問題で奪い合いの関係にあると指摘しました。そして、社会保障が闘う対象は新自由主義でしたが、これからは軍事政策も闘う対象となると述べました。

日本の防衛費は、2022年度まで10連続上昇しており、2022年度は当初予算では5兆4,005億円でしたが、補正予算7,738億円を加えて初めて6兆円を超え、既にGDP比1%を超えているそうです。前年度比では7.8%増だそうです。

2023年度予算概算要求では、当初予算5兆5,947億円ですが、金額の記載がない事項要求もあり、初の当初予算での6兆円超となる見込みだそうです。

骨太方針2022で防衛力強化が明記されており、防衛費は例外的に支出抑制なしとされているそうです。日米関係では、安倍首相とトランプ大統領の間で日本の防衛力強化が約束され、岸田首相とバイデン大統領の間でも防衛費増大が約束されたそうです。自民党は「政府の安全戦略に対する提言」で、反撃能力の保有を提唱し、対象は相手国の指揮統制機能等、つまりは中枢も含むとしたそうです。反撃能力とは敵基地攻撃能力のことであり、先制攻撃のイメージが強いので言い換えられたそうです。

つまり、攻撃型の防衛戦略を進めるということであり、NATOのGDP比2%以上の目標を念頭に、日本も5年以内に2%を達成するとアメリカに約束したそうです。

2023年度予算の事項要求では、スタンド・オフ防衛能力に関するものが筆頭にあげられているそうです。それは、敵艦船等の防空火力の射程外からミサイル等で攻撃する能力のことだそうです。そのため、12式地対艦誘導弾能力向上が他を量産するとしているそうです。12式地対艦誘導弾は、奄美大島、宮古島などに配備するとしており、射程150~200メートルなものを当面900メートル、将来的に1,500メートルを目指して開発を行なっているそうです。

量産するということは、関係企業の生産ラインを増やすということであり、企業へお金を渡しているそうです。

馬毛島、奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島にミサイルを配備する計画ですが、これは第1列島線と呼ばれているそうです。日本は尖閣諸島防衛のためとしていますが、アメリカは中国の台湾進出阻止のためとしているそうです。

私たちの社会保障を脅かすのは、こうしたアメリカ追随の日本の防衛戦略であり、アメリカは財政的に厳しいので軍事支出を増やしたくないので、日本の軍拡勢力に防衛費を増額させており、その結果、日本の社会保障の予算が削られることになると指摘しました。

中国のミサイルは射程500km超ですが、アメリカはINFで中距離ミサイルを禁止していたので、この射程のミサイルを持っていなかったそうです。しかし、INFを破棄したので、中距離ミサイルを開発、配備できるようになりました。そこで、日本全土に中距離ミサイルを配備することで、中国本土を攻撃することが可能になります。

アメリカが日本を守るのかというと、在日米軍は日本を捨て石にする方針だと指摘しました。

中国と日本がミサイル軍拡競争へ向かうと、ミサイル配備で攻撃される危険が高まり、財政的にも国民生活は厳しくなると述べました。

NATO基準の国防費には、退役軍人恩給、PKO関連経費、海上保安庁予算などが含まれるので、日本の防衛費をNATO基準で再計算すると既に2021年度は6.9兆円となるそうです。GDP比2%は11.2兆円であり、それに到達するには4.3兆円の増額が必要だということになります。

この防衛費の増額分を他の施策に使うと何ができるのかというと、東京新聞の記事によると、大学授業料の無償化は1.8兆円、児童手当の高校までの延長と所得制限撤廃は1兆円、小・中学校の給食無償化は4,386億円でできるそうです。年金受給者全員に1人年12万円を追加支給するのに4兆8,612億円、公的保険医療の自己負担をゼロにするのに5兆1,837億円、現在10%の消費税を2%引き下げるのに4兆3,146億円かかるそうです。

こうした施策は、軍拡と真っ向対立することになります。

生活が苦しくなっても「安全保障」を重視すべきなのかという問いが提示されました。

「安全保障」の定義は、ある集団・主体にとっての生存や独立、財産など何らかの価値を、脅威にさらされないように何らかの手段によって守る事だそうです。

歴史的、伝統的には、「安全保障」は軍事的脅威に対するものが主とされていましたが、近年では、大量破壊兵器・核兵器拡散、エネルギー、経済、環境、食糧、水、貧困、難民、人権、病原菌なども「安全保障」の対象となっているそうです。

時代、使用者、学派、価値観によって「安全保障」の意味は異なるのであり、古い「安全保障」の概念にとらわれていていいのかということが提起されました。つまり、「安全保障」の再定義が必要だということです。

19世紀は個別的安全保障の時代であり、国家間の力の均衡が安全をもたらすとされていたそうです。しかし、第一次世界大戦が勃発し、均衡論は誤りだということが明らかになり、国際連盟が結成されたそうです。

集団的安全保障の時代となりましたが、国際連盟は頓挫し、第二次世界大戦が勃発してしまいました。そこで、国際連合が結成されましたが、米ソ冷戦によって「絵に描いた餅」になってしまったそうです。

しかし、まだ国際連合は存続しており、集団安全保障を実現させていると指摘しました。そして、軍事的手段のみならず、外交、経済力、文化など多様な手段を活用する集団安全保障によって、社会保障に財政を回せる国となることができると指摘しました。

しかし、バイデン政権は「民主主義VS専制主義」という価値による分断をはかっており、中国やロシアに対抗し、軍事拡大へ向かう状況にあると述べました。

アメリカは、実はかつては軍事大国ではなかったそうです。1940年を境に軍事支出が大きく変わり、GDP比も4~5%に拡大したそうです。1950年代は朝鮮戦争、1960年代はベトナム戦争がありました。1957年の「スプートニク・ショック」により、ソ連が先に宇宙へ出たということはアメリカの空軍力は負けているのではないかということから、1958年にNASAが成立し、軍事研究を行なうARPAもつくられたそうです。そして、ソ連の軍事力に対抗するため、民間企業が軍と結託した軍産複合体がつくられ、マクロ経済循環に軍事が組み込まれることになったそうです。そのことにより、軍事産業で飯を食う人が増え、軍事支出と景気、雇用の関連性が生じ、防衛予算の拡大につながりました。

日本では、世界は無政府状態であり、自国を軍事力で守るのが安全だとする現実主義と保守主義が融合していると指摘しました。保守主義とは、伝統的に累積された社会的、政治的、宗教的な秩序を重視する考え方であり、過去にやってきたことが確実だと考えることだそうです。これまでは、国家安全保障とは軍事力であるという考え方でしたが、「考え方」なので選択可能だと指摘しました。

9条の会は憲法9条による安全保障を主張してきましたが、日本政府は法律をつくることで9条を無力にし、軍事国家化を進めてきました。そして、学術会議の任命拒否問題は、大学を軍産複合体へ組み込むためのものだと指摘しました。

「量産化」により、経団連企業に軍事物資を恒常的に生産させ、日本はどんどん軍事へ傾倒してきていると指摘しました。日米同盟を打って出る同盟とし、中国は当然軍事力の強化によって包囲しようとしているそうです。すると、軍拡競争が止まらなくなり、緊張が高まり、軍事衝突の危険も高まります。人間は同じことを繰り返すと指摘しました。

しかし、日本はアメリカと中国の間に立って安定化へ向かわせることも選択できます。「国益」とは何かを考え、アメリカとの「価値観」を共有する同盟を選ぶか、それとも日本国民の生命、安全、財産を選ぶか、今、それを選択することが迫られていると指摘しました。

そして、直近の問題として食糧問題があると指摘しました。

現在、世界の食糧の需要と供給はプラスマイナスゼロだそうですが、何かアクシデントがあれば需要が供給を上回ることになります。日本は食糧輸入国ですが、国民の食糧を確保する政策はないそうです。国内で生産すればいいという意見があるかもしれませんが、新たな危機として、ロシアのウクライナ侵略問題や中国との関係悪化により、肥料が輸入できないという問題が生じているそうです。肥料がなければ、食糧は生産できなくなります。

WFPは、今年まではお金を払えば食糧を入手できるが、来年からは食糧がないかもしれないと指摘しているそうです。ウクライナは農業国ですが、今年は収穫ゼロの恐れがあるそうです。食糧危機意識を持って中国と話し合う必要があると指摘しました。

保守主義とは、自分たちが見出した価値を守ることだと述べました。改憲派は、現状を追認して憲法を変え、中国の軍事拡大に対抗しようとしており、静態的、現状維持だと指摘しました。護憲派は、理念実現のために現状を変えようとしており、動態的、現状変革だと指摘しました。

軍備増強は社会保障の削減、国債発行での国民の借金増をもたらし、新自由主義との親和性が高いそうです。それに対して、社会保障費を増額して福祉国家となるという選択肢があります。そのどちらを選ぶかが、国民に迫られている選択だと指摘しました。

 

以上で第1講座の報告を終わります。