核兵器禁止条約 一歩進めた意義はある(毎日新聞より) | 労働組合ってなにするところ?

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2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、熊本、大分を中心とした地震の被害に遭われた皆さまにお見舞い申し上げます。

合わせて、避難不可能な状況下での原発災害を防ぐために、川内原発の運転停止を求める署名への賛同を呼び掛けます。


 

https://www.change.org/p/%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%82%92%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84?source_location=discover_feed
 

 

そして、戦争法廃止に向けてたゆまず行動し、憲法に違反する政治を推し進めようとする策動を許さず、医療・介護を国の責任で充実させることを求め、最低生活基準を切り下げようとする動きに抵抗し、労働者のいのちと健康と働く権利を守り、東日本大震災の被災地の復旧・復興が住民の立場に立った形で1日も早く実現することを目指して、声を上げていくことを提起します。

 

 

8月16日に当ブログでご紹介した、オバマ大統領の核先制不使用政策について安倍首相が反対の意見をハリス米太平洋軍司令官に伝えたという報道を、当の安倍首相は否定しているそうです。ですが、国連作業部会での核兵器禁止条約の2017年からの交渉開始を勧告する報告の採択を日本は棄権したというニュースを聴くと、核兵器廃絶に対する日本の役割を果たすよう政府にう要求しなければならないと思います。

毎日新聞の本日の社説にこのことが取り上げられていたので、引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。

 

社説:核兵器禁止条約 一歩進めた意義はある

毎日新聞 2016年8月23日

http://mainichi.jp/articles/20160823/ddm/005/070/140000c

 

 「核兵器のない世界」の実現に向け一歩前進した。

 スイスのジュネーブで開かれていた国連の核軍縮作業部会が、核兵器禁止条約の締結交渉を2017年中に開始するよう国連総会に勧告する報告書を採択した。

 具体的な年を盛り込んだ報告書の採択は、核兵器の非人道性に着目して禁止条約の締結を求める国際世論が、かつてないほど高まっていることを反映したものだ。

 ただ全会一致にはならなかった。投票で多数決により、賛成68、反対22、棄権13で採択された。日本はスイスやスウェーデンなどとともに棄権した。核兵器廃絶への道の険しさを見せつけたとも言える。

 賛成したメキシコやオーストリアなどは、作業部会の設置を主導した国々だ。昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の決裂を受けて、核軍縮の停滞に業を煮やし、禁止条約の早期締結を目指している。

 一方、日本や豪州、北大西洋条約機構(NATO)諸国など、米国の「核の傘」に依存する国々は、安全保障を考慮しながら段階的に核軍縮を進めるべきだという立場から、禁止条約は時期尚早と考える。

 これら段階的な核軍縮を求める国々の間でも、豪州、韓国、ドイツなどは反対、日本などは棄権と、対応が分かれた。非核保有国の間にも幾重にも溝がある。

 非核保有国と、米露英仏中の核保有5カ国の分断状況はさらに深刻だ。核保有国は禁止条約に反対し、2月、5月、8月と開かれてきた作業部会に一度も参加しなかった。

 報告書は秋の国連総会に提出される。メキシコなどが勧告をもとに、禁止条約の交渉開始を求める決議案を提出すると見られている。国連加盟国の過半数の107カ国が交渉入りを支持しているとされ、決議案が採択される可能性は十分にある。

 「唯一の戦争被爆国」として核廃絶を訴えながら、「核の傘」に依存する日本は、核保有国と非核保有国の「橋渡し役」になると言ってきた。だが、その姿は見えず、棄権が象徴するように苦しい立場にある。

 禁止条約は、内容が定まっているわけではない。メキシコなどが考えているのは、非核保有国だけでも核兵器の使用や保有を禁止する条約とされる。だが他にも、核廃絶の大枠をまず条約で定め、具体的内容はその後の交渉で決めていくという、枠組み条約などの考え方もある。

 日本は、米国など核保有国を動かし、核廃絶の理想と安全保障の現実を結びつける議論にもっと積極的に参加する必要がある。報告書採択という意義ある一歩をいかす道に貢献すべきだ。

 

 

核兵器の非人道性が世界の常識として認められるようになったのには、広島・長崎の被爆者の方々の被爆体験を伝える活動が寄与するところが大きいと思います。

核兵器廃絶を目指す世界の流れは、この非人道性を強調し、核兵器をなくすことが核兵器の脅威から免れる唯一の道であるということを共通認識とすることで進められてきました。核兵器禁止条約締結交渉の開始は、この流れの結実したものと言えます。

本来、日本政府は唯一の戦争被爆国として、核兵器の非人道性を先頭に立って訴え、核兵器廃絶の流れを進めるために尽力すべきです。しかし、日本政府はアメリカの「核の傘」の下に留まろうとし、唯一の戦争被爆国にふさわしい役割を果たすことができていません。「核保有国と非核保有国の「橋渡し役」になる」という言い分も空々しく感じられます。

本当に日本政府が「橋渡し役」になろうと考えるのであれば、核保有国とその「核の傘」の下にいる一部の非核保有国に対しては、「核抑止」を見直すことを呼び掛けるべきであり、そのための非核地帯条約の拡大に尽力すべきです。しかし、日本政府はこの問題に関しては極力目立たないように振る舞っているという印象を受けます。

核兵器の先制不使用は、「核抑止」政策を見直す第一歩となると思います。安倍首相が反対を表明していないならばそれでよしとするのではなく、では、オバマ大統領に対して先制不使用政策をとることへの支持を伝えるべきだと思います。

それでは北朝鮮の脅威に対応できないという考えもあるでしょうが、既に述べましたように、核兵器の非人道性は世界の常識として認められるところとなっています。国際社会において、いかなる状況であれ、核兵器を先に使用した国が批判の対象となることは明確であり、世界的に孤立したくないならば、決して核兵器は使用できないのです。先制不使用政策をとったからといって、敵対する国がそう簡単に先制使用できるような世界情勢ではないと理解すべきだと思います。

何はともあれ、核兵器をめぐる採択に棄権し続けるばかりでは、日本政府は何もやっていないとのそしりを免れないと思います。橋渡し役」になるというなら、その役割を果たすために具体的に何をするかを示し、実行べきだと思います。