第11回地方自治研究全国集会 分科会報告 その3 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、東日本大震災の被災地の復旧・復興が、住民の立場に立った形で、1日も早く実現することを祈念致します。



9月30日に参加した、第11回地方自治研究全国集会の分科会の報告の続きです。

私は第10分科会「誰もが人間らしい生活ができるように~セーフティネットのあるべき姿」を選択しました。そこで報告された5つのレポートの概要をご紹介しています。

本日は3つめのレポートからご紹介します。



3つめのレポートは、「生きる喜び取り戻したい-憲法を暮らしに生かす生存権裁判」というタイトルで、全国生活と健康を守る連合会の前田さんの報告でした。

生存権裁判は、生活保護の老齢加算廃止の取り消しを求めた訴訟で、全国7ヶ所で100人以上の原告が闘っています。

老齢加算は特別なものではなく、「必要即応の原則」によるもので、高齢者に必要な消化のよい食べ物や冠婚葬祭費用の必要性のために設けられていたものです。

厚労省の専門委員会は2003年12月の老齢加算検討の中間まとめで、廃止反対の声が上がるが70歳以上であっても生活費の上昇はないという資料を示し、代替処置を講ずるとしましたが、その4日後に3年間で段階的に老齢加算をなくすという予算案を提出したそうです。

母子加算も廃止されましたが、子どもの貧困が社会問題となり、全国から事例が報告されたこともあり、母子加算は復活しました。

老齢加算の廃止の影響の事例としては、青森からは暖房費がかさむ、秋田からは孫の結婚式に出られなかった、北九州からは家族の納骨ができないなどが報告されているそうです。

裁判の進行状況は、福岡高裁で勝訴しましたが、東京では最高裁で敗訴しており、福岡の裁判は最高裁への上告は破棄、差し戻しとなったそうです。

生存権裁判への支援を広げるために、社保協や労働組合に協力をお願いしたいということが呼びかけられました。



4つめのレポートは、「埼玉県における学習支援の取り組みから」というタイトルで、彩の国子ども・若者支援ネットワークの鈴木さんの報告でした。

埼玉県の生活保護受給者に対する支援はアスポートという通称で、教育支援、就労支援、住宅支援の3つの事業が行なわれています。

その中の教育支援が、彩の国子ども・若者支援ネットワークが行なっているもので、生活保護世帯の子どもへの学習支援です。特別養護老人ホームのスペースを無料で借り、教員OBや大学生のボランティアが中学生を対象に勉強を教えています。

アスポート事業は3事業で約8億9000万円の予算がつき、教育は2億8000万円が割り当てられているそうです。

教育支援の効果としては、子どもの意欲的な参加、貧困の連鎖の防止、子どもの居場所づくり、親への教育相談なごが挙げられます。

こうした支援は江戸川区のボランティアが発症で、現在は国の助成もあり、全国で様々な形で行なわれているそうです。

その効果と限界としては、教育支援参加の子どもの高校進学率が平成23年3月には97.5%となり、全国平均97.9%に追いつくようになったものの、定時制への進学が多く、高校統廃合によって定時制への入学も難しくなっているという現状があるということでした。

生活保護には教育扶助があり、小・中学校の学費が支給され、高校の学費も「高等学校等就学費」が2005年から創設されました。

また、高校授業料無償化を求める運動の高まりなどにより、2010年度から公立高等学校の授業料は不徴収となり、私立高校に在学する生徒に対しても就学支援金が支給されるようになりました。

都道府県による就学補助制度も創設されており、埼玉県では教育局の独自事業として2010年度から生活保護世帯の場合、私立高校授業料についても無償化する補助が実施されているそうです。しかし、東京の私立高校に通う場合は対象外だそうです。こうした制度は都道府県によって様々な違いがあるそうです。

子どもの教育費の現状は、小学生で約35.5万円、中学生で約48.0万円、高校生で62.4万円となっています。しかし、生活保護の教育扶助は約20万円です。

憲法では義務教育は無償とされていますが、現実はそうはなっていません。OECD加盟国で高校の学費が無償でないのは、日本、韓国、イタリア、ポルトガルだけだそうです。

また、都道府県による高校就学計画で高校定員を中学卒業人数以下に調整しているため、高校進学率が100%にならないという問題や、現在は高校を卒業しても将来への展望を直接もたらす状況ではなくなっており、高校進学率を100%にしても貧困の世代間連鎖はなくならないという問題が指摘されました。

単純に勉強を教えるだけでは問題は解決せず、ハンディキャップへの配慮、乳幼児期からの支援が必要ということが指摘されました。



5つめのレポートは、「カウンターを越えて市民の中にを合言葉に」というタイトルで、京都市職員労働組合の南常任執行委員が報告しました。

京都市職員労働組合は、労働組合として住民のいのちと生活を守る活動をしようと、何でも相談会を各地域で開催しているそうです。カウンターを挟んで市民と対立するのではなく、カウンターを越えて市民の中へ入っていこうという取り組みで、2009年から市職労の方針となっているそうです。相談内容は、国保減免の相談が6、7割と一番多いそうです。

相談会以外に、国保料の見習いについての市民アンケートと戸別訪問、公契約条例研究会、シンポジウムの開催、街づくりをテーマとした京都駅前開発研究会なども行なっているそうです。

相談会が始まったのは2009年1月12日のことで、「何でも連帯広場」という名前で生活、労働、健康相談が行なわれました。福祉事務所のケースワーカーが生活相談を行ない、福祉事務所と連絡をとってスムーズに生活保護申請につなげ、高い評価を得たそうです。

その年の2月にも2会場で何でも相談会を行ない、それ以降、「ネットワーク・連帯ひろば」として定着したそうです。

相談会の目標としては、①住民が持つ不安や生活相談に応じて諸制度を活用しながら問題解決への支援を行なう、②住民の生活実態を把握するとともに、制度政策づくりの運動につなげ、国や自治体への要求運動へと広げる、③広く市民に取り組みを周知して相談者の掘り起こしをすすめ、政治に対する怒りを喚起し、幅広い住民との共同につなげる、また、住民の声なき声を拾う、④多くの団体の共同による開催で大規模な宣伝や多面的な相談への対応ができる、各団体が恒常的に行なっている相談活動のネットワークの充実を図る、⑤参加する他団体との共闘を強め要求の前進を図る、市民へ取り組みを広く周知し市職労の運動へ理解と信頼を得て市民との共同につなげる、⑥失業者や未組織労働者等の賃金・社会保障・雇用に対する聞き取り、労働組合が持てる力を最大限発揮させるの6つのです。

これまで、延べ約800人が相談し、約60人が生活保護を申請しているそうです。

京都市は50名の新規採用をしているそうですが、ケースワーカーの人員が足りず、十分な対応ができていないので、人員確保の申し入れを行なっているそうです。

「連帯ひろば」の課題としては、現在は4月と年末の2回を予定しているが、対象が野宿者がほとんどになっていて、ネットカフェ難民などの目に見えないホームレスにどう知らせ、支援するかということが挙げられました。



レポートの報告は以上です。

その後の討論については、個別的な内容になりますので割愛させていただきます。