第11回地方自治研究全国集会 分科会報告 その2 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

まず、東日本大震災の被災地の復旧・復興が、住民の立場に立った形で、1日も早く実現することを祈念致します。



9月30日に参加した、第11回地方自治研究全国集会の分科会の報告の続きです。前・後では終わりそうにないのでその2とします。

私は第10分科会「誰もが人間らしい生活ができるように~セーフティネットのあるべき姿」を選択しました。そこで報告された5つのレポートの概要をご紹介します。



1つめのレポートは「避難生活――緊急時のセーフティーネットを考える」というタイトルで、東京災害支援ネット、とすねっとの事務局長、山川弁護士による報告でした。

とすねっととは、福島第一原発事故による避難者の支援のために、ホームレス支援団体が中心となって2011年3月19日に立ち上げられた組織だそうです。埼玉で「震災支援ネットワーク埼玉」が立ち上げられ、3月16日頃から避難所での相談・聴き取り活動を始めていたことを参考にしたそうです。

しかし、東京都は都職員が行なっているのでボランティアはいらないとして、避難所にボランティアを入れなかったそうです。そこで、煙草を吸いに外に出てきた人に聴き取りとしてみたところ、避難所での食事がカンパンと水だけなど、食事が足りないことがわかったそうです。

2011年3月19日に厚労省は災害救助法に基づく避難所の経費等について特別基準を通知し、1人1日5000円の経費を掛けることも可としていたそうです。よって、1日3食の食事を提供することには何の問題もないはずであり、とすねっとが東京都に強く要望した結果、きちんと食事が出るようになったそうです。

このように、災害救助法は実際の運用を都道府県知事に委ねているため、その方針によって運用が左右されるため、市民が目を光らせる必要があるということが指摘されました。

避難者管理の問題については、厚労省は避難者組織の自主運営が望ましいという方針を示していますが、東京都は管理を厳しくし、2次避難所の元赤坂プリンスホテルでは被災者との面会を制限し、事前の申し込みを必要とし、面会時間の10分前まで避難所に入れないなどのルールを設けたそうです。そして、一般ボランティアの面会は不可とし、被災者自身のニーズがあり、要請を受けて行なっていた育児ボランティアも禁止としたそうです。しかし、東京都の対応は不十分であり、子どもの預かりではなく遊び場の提供をするだけとし、昼休みになると子どもを迎えに行かなければならないという利便性の低いものでした。

とすねっとは東京都に面会制限を止めるように要請書を提出しているそうです。

災害救助法は柔軟な対応を可能とする法律ですが、最大限に活用できるよう、自治体職員も努力してほりいという要望が示されました。

また、避難の長期化によって問題はより深刻になっているそうです。

アンケート調査によると、避難前よりも平均6万3000円生活費が増加しているにも関わらず、52%の世帯が収入が減少しているという結果だったそうです。震災から1年半が経過した今でも状況は改善されていません。生活保護だけでなく、政府の力で具体的な支援をすることが必要であり、自治体労働者も現場から声を上げてほしいという要望が示されました。

避難者の中でも生活保護を申請している人はたくさんいて、弁護士の生活支援チームが対応しているそうです。しかし、義援金、損害賠償、生活再建資金が収入と見なされる問題があり、厚労省は「自立公正計画書」を作成すれば除外可としているそうです。また、夫が現地に残り、妻と子が避難しているというような二重生活となっている場合、世帯収入を合算すると生活保護の対象外になってしまうため、特別な配慮が必要だということも指摘されました。


2つめのレポートは「三郷生活保護裁判について」というタイトルで、吉廣弁護士が報告を行ないました。

三郷生活保護裁判は、夫の白血病発症をきっかけに生活に困窮した一家が、1年半に渡って10回以上も生活保護の申請を拒否され続けた事件です。10回というのは原告の主張であり、三郷市福祉事務所の面接記録では6回となっているそうです。そして、生活保護受給開始後も、親族がいる都内への転居を強制しました。その親族が年金生活者で、援助が得られる可能性がないにも関わらずです。加えて、三郷市に居住していた期間に住宅扶助を支給しなかったという問題もあります。三郷市は、家賃の需要がわからなかった、証明書が提出されなかったと主張していますが、賃貸契約書は提出されており、証明書は他の自治体では必要ないものだそうです。

福祉事務所の面接では、がんばれという精神論を唱えたり、車を所持しているので生活保護は受けられないなどとし、申請の意思表示はされなかったとしています。

夫が白血病で入院したのは2004年12月でした。妻は専業主婦で、看病と心労で精神疾患を発症して働けず、息子はフルタイムの仕事をしていましたが低収入、娘は中学生という家族構成でした。

裁判は2006年から始まり、次回で結審が予定されています。

これまで、ケースワーカーや福祉課課長の証人尋問が行なわれ、面接記録からも原告の要保護性が明らかになっています。

そして、生活保護受給開始後に担当したケースワーカーが「生活保護は受けない方がいい」という信念の持ち主で、転居後は生活保護を受けないように言ったことを「応援」だと主張し、転居後の生活については、「不安はあったが、保護費が10数万円支給されているのでそれで何とかなると思った」と述べています。

こうした、本当の自立によってではなく、生活保護を打ち切って受給者数を減らすことが遣り甲斐になってしまっていることが問題だと指摘されました。

裁判所は、要保護性については理解を示しているが、申請の意思表示については「生活保護法の適用を受けたい」と言ったかどうかが問題だとしているそうです。

そうした申請の意思表示をすることは簡単ではなく、福祉事務所には強力な意思表示があった時に申請を受け付けるのではなく、手を差し伸べる対応をしてほしいという要望が示されました。

そして、現在の社会状況から、家族を養える収入が得られる仕事は少なく、家があり、まともな服装ができなければそうした仕事の面接も受けられません。中小企業の経営も困難になっています。

自治体が公的な就労機会をつくることで、履歴書に書ける職歴をつくることも必要なのではないかという指摘がされました。

親族の扶養義務の強化については、申請権の侵害につながり、親族の負担も大きいと指摘し、国の責任逃れではないかという疑問も示されました。

自治体職員に望むこととして、自分の対応によって相手がどうなるのかを考え、その人を幸せにすることを考えて仕事をしてほしいという要望が述べられました。



今日はここまでとします。

残り3つのレポートについてはまた後日報告致します。