昨日1月19日、昨年末の日本航空によるパイロットと客室乗務員計165名の解雇は無効であるとして地位確認などを求める裁判が東京地裁に提訴されました。
何紙か新聞報道をチェックしてみましたところ、東京新聞の記事が争点がコンパクトにまとまっているうえに当事者の発言も盛り込んでいてよいと思ったのですが、残念ながらサイト上にはまだ掲載されていないようです(2011年1月20日午前10時現在)。
基本的な情報はお伝えしたいと思いますので、紙面から引用してご紹介します。引用部分は青で表記します。
「解雇 合理的理由ない」
日航元機長ら無効訴え提訴
東京新聞 2011年1月20日(26面)
日航を昨年末に整理解雇されたパイロットと客室乗務員計百四十六人が十九日、解雇は合理的な理由がなく無効だとして、日航に地位確認などを求める訴えを東京地裁に起こした。
原告は機長十七人と副操縦士五十七人、客室乗務員七十二人で、パイロットと客室乗務員に分かれて二つの訴訟を行う。
訴状によると、日航は昨年末に百六十五人を整理解雇した。対象は機長が五十五歳、副操縦士が四十八歳、客室乗務員が五十三歳以上で、病気休職者なども含まれた。
原告側は「昨年四~十一月の連結業績で営業利益千四百六十億円を計上しており、人員整理する合理的理由はない。部分就労の導入など解雇を回避する努力も尽くしていない」と主張。ベテランを解雇対象としたことについて「安全の維持、知識経験の伝達に問題が生じる」としている。
(後略)
当事者双方の主張の部分は割愛しますので、関心の高い方はご購読ください。
少し申し添えますが、病気休職者は年齢条件に当てはまる人の中に含まれていたといういことではなく、一定の日数以上休職した経歴がある人が整理解雇の対象となったということであり、若い人も含まれています(「しんぶん赤旗」が2011年1月1日の紙面 で、30代の女性がアトピー性じんましんによる休職を理由に解雇対象となったことを報じています)。
安全運航のために航空労働者は一般の労働者よりも厳しい身体検査基準によって業務を制限する必要があり、休職するのも義務のうちだということですので、休職歴を基準とした解雇には問題があるということが内外の航空関連団体から指摘されています。
また、一定年齢以上という条件で整理解雇対象者を指定することも、年齢による差別は違法であるということだけでなく、安全運航のために問題があります。
医療分野も同じく安全が重視される分野です。若手を育てていくためには、安全を確保しながら経験を積ませるために若手にベテランの医師が付き、指導しながら業務を行なっていくことが必要です。いきなり若手にすべてを任させて経験を積ませることはできません。つまり、若手とベテランの双方が同じ職場にいることが、安全と育成を両立させていくには必要なのです。
ベテランの方が給与が高いのだからベテランからリストラしていくのが当然という意見もありますが、そうした意見をお持ちの方にはベテラン医師のフォローもなく初めて手術を経験する若手医師に自分の手術を任せられるかどうか考えてみていただきたいと思います。
裁判闘争開始に当たっての日本航空乗員組合の声明文がホームページに掲載されていますので、関心のある方は合わせてお読みください。
日本航空乗員組合
「不当な整理解雇を撤回させるため、裁判闘争を開始する」
日本航空乗員組合声明(2011.1.19)
http://www.jalcrew.jp/jfu/57sokuhou/no57183.pdf