接触皮膚炎(かぶれ)の頻度が高いものとして、基剤{ラノリン、セタノール、亜硫酸ナトリウム}、防腐剤{パラベン}、保湿成分{プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール}などが挙げられます。今回は化粧品表示によくあるパラベンフリーで有名なパラベンと、ヒルドイドローションなどの医薬品にも配合されているラノリンについて解説していきたいと思います。

 

パラベン(防腐剤)

低刺激でアレルギー性のかぶれも起こりにくく、低毒性のため比較的安全性の高い防腐剤です。化粧品や医薬品の他、食品にも使われています。実はパラベンにも細かい種類があって、メチルパラベンやエチルパラベン、プロピルパラベンなど数種類あります。

どれも抗菌作用が少しずつ違うので、組み合わせて使われることが多いです。以前、軟膏とクリーム、ローションの違いについてお話しましたが(https://ameblo.jp/sahori0109/entry-12444835162.html)、クリームは水が含まれる分、油でできている軟膏よりも傷みやすいためパラベンなどの防腐剤が入れなければいけません。湿疹皮膚炎、かぶれを治すステロイドのクリームや、一部軟膏にも含まれていることがあり(いつか詳しく説明したいです)、“湿疹にステロイドを塗っているのになかなか治らない、悪化している”という場合は外用薬によるかぶれを疑って変更した方が良いですね。もちろんパラベンアレルギーを疑って薬を変える場合はパラベンが含まれていないステロイドを選んだ方が良いので、そこは皮膚科医の腕の見せどころになると思います。

 

 

ラノリン(基剤)

ラノリンは基剤で蝋の一種です。羊毛の脂から精製されるためwool fatとも呼ばれます。蝋(ロウ)=高級脂肪酸+高級アルコール=エステルという物質です。自然界にある有名な蝋には、ホホバオイルや、蜂のミツロウなどがあります。なんとなく聞いたことあるでしょうか。固形〜クリーム状で、いわゆる〝ワックス〟です。羊の毛はしっとりしており水を弾きます。羊さんたちは毛にラノリンがついていることで、寒暖差や雨、乾燥などから皮膚・身体を守っています。ラノリンは乳化性に優れているので、水の吸収がよく肌なじみが良いという特徴があり、化粧品や皮膚外用薬などに使われています。パラベンにも色んな種類があるのと同様に、ラノリンにも精製ラノリンや加水ラノリンなどがあります。


ラノリンを含む薬剤の代表的なものとしては、一時世間を騒がせた“ヒルドイドローション”“ヒルドイドクリーム”に含まれています。ヒルドイドは肌に合っている人にとっては有効な保湿剤だと思いますが、ラノリンアレルギーがある場合にはヒルドイドでかぶれてしまっている可能性があるので、ヒルドイドは決して万能薬ではないです。大学病院時代のパッチテスト外来で、ヒルドイドローションでラノリンアレルギーが出た方はそこそこ見かけましたね。ちなみにヒルドイドソフト軟膏はラノリンが入っておらず、クリームよりも油分が多いです。


どんな物質でも、皮膚に何度も接触していれば身体がアレルギーと認識してかぶれるようになる可能性があります。美容師さんが薬剤で手荒れしたり、外科医が手袋にかぶれるのと同じです。ちなみにオロナ◯ンなどの市販薬も特に敏感肌さんは気をつけた方が良いですね。色々な成分が入ってる分、かぶれやすい。水虫とかの市販薬も結構かぶれます。

 

覚えてほしいことは、“何かを塗って良くならない場合や悪化している場合、良かれと思っているものに実はかぶれているという可能性があると言うこと。”皮膚科医としていつも頭の片隅に置いておかねばならないことです。私を育ててくれた教授もいつもおっしゃっていました。まぁ防腐剤などの添加物も多少は入れないと品質が保てないので、結局何かしらは入れないといけないんですよね。敏感肌さんは、自分の肌に負担が少ないシンプルなスキンケアがいいと思います。