効率化のためのポイント(5) | 特許翻訳 A to Z

特許翻訳 A to Z

1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

■メーカーが想定した機能にとらわれない
コンピューターに任せられそうな処理を見つけたら、それを実現できそうなソフトウェアを探します。
このとき、メーカーが想定している使い方やメニューに書かれた機能の名称などに対する固定観念を捨てるようにしましょう。

一括置換をするプログラムは一括置換だけのもの、半角文字を全角文字にするプログラムは半角を全角にするだけのものといった見方をしていると、できる応用もできなくなってしまうことがあります。

たとえば、私は機械翻訳ソフトを、「翻訳用」には使いません。翻訳者というのは、翻訳作業の終了後に見直しをするのですが、そのときの「見直し支援ツール」として使ってきました。
「翻訳ソフトは翻訳用の道具」という刷り込みから抜けられないうちは、こういう発想自体が出てこないかもしれません。
でも、ほんの少し見方を変えて工夫するだけで、翻訳ソフトは非常に優秀な「見直し支援ツール」として活躍します。

これはもともと、自分の翻訳文の文法ミスを拾いたいという目的が先にあり、そのための手段を探していて見つけました。
Wordにもスペルチェックや構成機能がついてはいますが、単数形の主語に三単現のsが抜けているといった基本的なミスでも、特定の条件に当てはまると拾うことができなくなります。
このため、Wordだけでは不十分だと考え、併用する別の手段を探した結果です。

見直し支援には、Wordや秀丸エディタも使っています。一例をあげると、英日翻訳の終了後、翻訳文を秀丸に貼り付けて、
[\x20-\x7f]
という正規表現の検索をします。
これは半角文字を「まとめて」探すための検索条件で、翻訳文に余計な半角スペースが残っていたり、本来は全角表記しなければならない英数字が半角になっていたりするときに、すぐに見つけることができます。

こちらは、「不適切な半角文字を拾いたい」という目的から、出発しました。
目視では見落としがち(=人間が苦手なこと)ですが、コンピューターは、一瞬のうちに確実に処理をしてくれるのです。

いずれも、ソフトウェア自体の機能に手を加えるのではなく、使い方のほうで対応しているのです。繰り返しますが、大切なのは「表から見える機能」にとらわれないことです。