効率化のためのポイント(1) | 特許翻訳 A to Z

特許翻訳 A to Z

1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

現在、市場には翻訳に役立つ「可能性のある」ソフトウェアが山のように存在します。
翻訳ソフトや翻訳支援ツールといった分かりやすいものだけでなく、テキストエディタ、表計算ソフト、ワープロソフトなども、効率化に一役買ってくれることが、よくあるのです。

ただ、そういうソフトウェアを活用しようとしたとき、ちょっとした考え方(視点)次第で、結果が大きく左右されるのも事実。
押さえておきたいポイントには、たとえば次のようなものがあります。

・やりたいことを明確にする
・ソフトウェア先行の視点を捨てる
・メーカーが想定した機能にとらわれない
・すべての機能を使おうとするのをやめる
・「完璧」を求めすぎない

各々について、数回にわけて説明します。

■やりたいことを明確にする
翻訳者の方々から、「スピードをあげるにはどうすればよいか」ということを非常によく聞かれます。
でも、これでは何の問題解決もできません。
何のスピードをあげたいのか、やりたいことが不明瞭だからです。

「何の?」

そう、何のスピードなのかです。
翻訳に決まっているではないかと思うかもしれませんが、「翻訳」なんていう大雑把なくくりは、何もないのと同じこと。
「翻訳」とひとくちに言っても、原稿を受け取ってから納品するまでには、いろいろな作業をしています。

最近はデータ納品が普通だと思いますので、必ずするのは「キーボードで文字を入力する」でしょう。
あとは、外国語から日本語への翻訳なら、入力した文字をカタカナや漢字に変換することもしています。
表を作ることもあれば、フォントを変更することも、あるかもしれません。

このテーマでセミナーをすると、翻訳者の作業として共通することを50項目はあげることができますから、個人レベルに落とし込めば、もっとあるでしょう。
こういうレベルまで細分化し、そのひとつひとつに対して、「どうすれば今より短時間で確実に作業できるか」を考えます。

もうひとつ、例をあげましょう。

「品質を上げるにはどうするか」

これも、よく聞かれることです。
でも、具体的に何をしたいのか、どうなったら品質が上がったと言えるのか、はっきりしませんよね。
訳抜けがない、用語の訳が適切、表現がこなれている・・・。
まだまだあります。
品質というのは、このような複数の要素の組み合わせであって、十把一絡げにコンピューターで何とかしようというのは、無理があるでしょう。

もしかしたら、ひとつの課題だけをみれば、手作業でする場合とソフトを使う場合で数分程度しか違わないかもしれません。
でも、たとえば100項目で各々5分短縮できれば、500分=8時間以上浮く計算になります。

翻訳のような人海戦術的な仕事では一般に、ある程度以上に速度を上げると品質は落ちると思われがちですが、きちんと考えて工夫をすれば、速度と品質を同時に上げることも可能です。
結果として、作業効率がそれまでの4倍、5倍になるということも、十分に有り得るというわけです。