調べるだけでは、追いつかない? | 特許翻訳 A to Z

特許翻訳 A to Z

1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

昔と比べると、特許翻訳に必要な知識が増えているのではないかと、最近よく思います。

技術知識、法律知識、外国語の知識といった大ざっぱなものではなく、もっと細かいレベルの話として。

 

たとえば、化学分野の明細書に電気や電子の知識が必要だったり、情報(IT)分野に鉄道の知識、バイオ分野に統計学の知識、機械分野に数学・・・という具合に、多岐にわたるからです。

 

20年前にも同じようなことはなかったわけではないのですが、明細書1件の平均的な分量だけでみても、以前より圧倒的に長くなっています。

技術が進歩して境界領域の出願が増えているからか、あるいは別の理由があるのかはわかりません。

でもとにかく、以前にはなかったような角度から発明の説明がなされることが、普通になりました。

 

何らかの技術分野に専門のある人でも、まったく調べ物をせずに翻訳することは、不可能ではないかというほどの多様性です。

 

その多様性に、最低でも2つの言語で対応する必要があります。

 

かたやインターネット上のリソースはというと、信頼できるものと間違っているものとの玉石混淆状態に、拍車がかかる一方です。

 

いまや、相当にしっかりした調査力に加えて、物事を深く考えるスキルを持たないと、インターネットの調べ物は成り立たない。

 

・・・と言い切ってしまっても、過言ではないと思います。

 

こうなると、調べ物だけでは到底追いつかないことも、出てきます。

自分の中にどれだけ蓄積を作ることができるかが、以前にも増して重要だということです。

 

それはつまり、最低2つの言語で、今まで以上に日頃から幅広くアンテナを張り巡らせる必要がある、ということでもあり。

 

10年くらい前、幅広いジャンルでの実体験を増やすために、有志の翻訳者が集まって定期的にいろいろ挑戦していた時期があるのですが、こういうことの意義も、考え直してもよいのかもしれませんね。

 


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街路樹で見つけた、シマトネリコの花。

綺麗に咲いている樹と花のない樹があったため理由を調べてみたところ、雌雄異株でした。

雌雄異株って、英語でどう表現する??

こういう日常のちょっとした問題意識で、蓄積を増やしていくことができますよね。