SEOと海外の国公立デジタルアーカイブ | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

一昨日の朝日新聞朝刊一面のトップに、「検索順位 強制下げ続々」という記事が出ていました。
不適切なSEOがあまりに多いというので、グーグルが検索順位を下げる対応に出たというものです。

このSEOは翻訳者にとっても需要で、大学をはじめとする有用なコンテンツがSEO対策をしている販売サイトなどの影に隠れて埋もれてしまう、という現象がいくつも生じていました。

実際、SEO会社の人に直接確認すると、きちんとした(有名な)大手企業が検索の上位に全く出てこなくなったキーワードがいくつもあるそうです。

1994年にインターネットの商用利用が始まって最初の10年は、検索エンジンが非常に便利かつ有用な「調べもの」の手段でした。
ところがブログが登場し、ツイッターが登場し、誰でも手軽にウェブショップを作ることのできる仕組みが登場し・・・とインフラが変化するにつれて、ネット上にある情報もあまりに玉石混交になりすぎて、いかに信頼性を確認するかという新たな問題が生じるように。

最初の10年を経て、次の10年は、コンテンツの信頼性とは切り離されたところで、SEO対策をする側とGoogleとのイタチごっこが繰り返されています。

インターネットの登場によって、かつての書積から検索エンジンに移行した翻訳者の調べ物も、さらに次の10年は、書積に戻る方向に動かざるを得ないかもしれません

こうした中、ここ数年で、国内外のデジタルアーカイブの整備が急速に進んできました。

日本には、国立国会図書館デジタルコレクション国立国会図書館サーチをはじめとして、国やその関連団体が運営するデジタルアーカイブが、いくつかあります。

海外でも、同じようなデジタルアーカイブが次々と登場し、整備されてきているのです。

たとえば米国のDigital Public Library of America
米国内の図書館や博物館にある書籍、画像、映像、音声などを横断検索できるようにと、2013年の春に約200万のデータを積んでスタートしました。

これがわずか2年後の2015年の春には1000万件を超えています。
内訳としては、公共図書館と大学図書館、歴史資料館のデータが約半数を占めていました。
そしてさらに2年を経た現在、1500万を超える数(今日の時点で15,482,760)になっています。

 

ほかにも、イギリスは大英図書館のDigitised Manuscripts、ドイツはDeutsche Digitale Bibliothek、フランスは国立図書館のGallicaという具合に、先進諸国で類似のアーカイブのない国はもはや存在しないのではないかと思うほどの勢いです。

そして最近つくづく思うのは、大使館や各言語の専門図書館の職員は、こうしたアーカイブの存在と使い方を良く知っている、ということです。

たとえば私が上述のGallicaを最初に知ったのは、恵比寿にあるフランス語の専門図書館でした。

カナダ大使館の図書館でもスタッフに有用な情報ソースを教わったことが何度かありますし、スペイン政府設立のセルバンテス文化センターにある図書館でも、同様です。
言語に限らず、印刷図書館で印刷関係の有用なデジタルデータについて教わったり、そういうこともありました。

昔は、調べたい内容そのものを知るために「人的リソース」を頼ることが多かったのですが、最近は、調べたい内容ではなく「情報を得るための手段」を知るために人的リソースを頼るというのが最も確実だということが、だんだんわかってきました。

特に、国公立のデジタルアーカイブは、収録される情報が(ある程度)吟味されています。
今後は、専門図書館でスタッフからできるだけこの類の情報を引き出し、翻訳者の方々とシェアしていければと思います。

 



 


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