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相模の風THEめをとのダンナ
いしはらとしひろです。
勝手に妄想ジャズストーリー③
遺作なのにエロいってどういうこと?
~アイク・ケベックのたくましさ 第2話
第1話あらすじ
古いジャズ喫茶でお茶を飲んでいた僕の目の前に現れた、テナーサックス奏者 アイク・ケベックの霊。ちょうど彼の遺作「ボサノヴァ・ソウル・サンバ」のレコードを聴いているところだった。
亡くなる直前に録音したにもかかわらず、エロさと男っぽさをたたえた不思議な作品。そんなアイクさんが語り始めた………
さぁ、昨日の続きです。
オレは快調に車を飛ばしていた。リムジンの後部座席にはハンク・モブレイ、ポール・チェンバース、いつも愉快なピアノ弾きウィントン・ケリー、そして最近ではジャズ・メッセンジャーズで忙しくて、滅多に自分のグループ以外のセッションに顔を見せなくなったアート・ブレイキー。そして大事な楽器たちも。
今日は2月だけど暖かい。行く先はニュージャージーのイングルフッドクリフにあるルディのスタジオ。ハンクをリーダーにしたブルーノートレコードのセッションで、これからレコーディングって訳だ。
オレも吹くんだろって?
いやいや、今日は違う。今日のオレは運転手だからな。古くからの知り合いには時々意外な顔をされるけど、今、ブルーノートレコードで働いている。レコーディングスタジオまでの送迎も大事な仕事の一つって訳だ。
後ろじゃ、ウィントンがまたバカなことばかり言っている。みんな大笑いだ。あまりにもおかしなことを言ったのでオレも笑ってしまって、あやうくハンドルを変な方向に切るところだった。
「おい、ウィントン。面白すぎるよ、お前の言うことは。面白すぎて今、危うくお前さんたち全員を道連れにしちまうところだったぜ」
「ははは、アイク、すまないね。でもこのメンバーで昇天しちまったら、天国で凄いバンド組めるぜ。アイクも吹いてくれるよな?」
「ははは、オレも入れてくれるのかい?ハンクがいいっていうならいいぞ」
ハンクも少しはにかんだように「アイクさんと一緒に吹けるなんて光栄です」なんて言う。
スタジオの駐車場に着いて、みんなの楽器をおろしている時、ウィントンにそっとささやいた。「ハンクをリラックスさせてくれて、ありがとうな」奴はちょっとだけ気が小さいところがある。
「なぁに言ってるんだよ、オレはいつものまんま」と言いながら、ウィントンは軽くウィンクした。
1960年2月7日、ルディ・ヴァン・ゲルダースタジオ。このメンバーで録音された音楽は「ソウル・ステーション/ハンク・モブレイ」と題されて世に出た。ハンクの一世一代の傑作アルバムだ。
この仕事を通じて、こんな場面にもたくさん立ち会ってきたんだ。オレは誇りに思うよ。
オレとアルフレッドの話になるかな、ここからは。
ドイツからやってきてジャズのレコード会社「ブルーノートレコード」を立ち上げた、アルフレッド・ライオンと知り合ったのは1944年だった。まだ戦争中だぜ。オレはまだバリバリの若手。ブイブイ言わせていたよ。
やつはとってもジャズが好きだった。そしてミュージシャンのことを尊敬している奴だった。いいか、これは音楽ビジネスをしている奴では珍しいことなんだ。
ジャズのレコード会社を作るくらいの奴なら、そりゃあ、そこそこはジャズのこと好きなんだろう。だが、ミュージシャンの立場に立ってものを考えられる奴とか、その音楽をより良くするには、なんてことを考えて、きちんとレコードを作る奴はまれだった。まぁ言っちゃなんだが、しょせん金儲けの手段だったんだろう。白人が黒人のミュージシャンを録音する場合は特にな。
「このレコードを売るために、みんなが知っているスタンダードを三曲以上入れろ」なんてこと、アルは一回も言わなかった。それだけで分かるだろ?
アルとは最初から気が合った。
レコーディングの打ち合わせなんかで飯でも食おうなんて時でも、白人向けのレストランなんかじゃなくて、ハーレムのソウルフードを出すようなディープなバーなんかにも、平気でついてきたからな。
お陰様でちょっとはヒットと言える曲も録音できたし(『ブルーハーレム』はヒット曲になった)、ミュージシャンとしての気持ちも満足させてもらったが、それ以外のことでもウマがあった。アルにしてみれば何かと頼みやすかったのかもしれない。
40年代の半ばから自分のレコーディングをする傍ら、ブルーノートのことも手伝い始めた。タレントスカウトというか、A&Rというか。レコーディングにまつわるいろんなことも手伝ったり。録音したいメインのミュージシャンが決まったら、そのバックを務めるミュージシャンはオレが決める、なんてこともあったし。
当時ブルーノートのレコーディングアーティストは、シドニー・ベシェやニューオーリンズ系のジャズなんかのクラシカルなジャズが多かった。もちろん素晴らしい音楽だ。でも時代はビバップに向かおうとしている。その辺の状況にはアルもフランシスも詳しくなかった。いわばオレが水先案内をして、彼らを新しい流れに導いたたんだ。
セロニアス・モンクやバド・パウエルなんかを、アルフレッドに紹介したのもオレだ。バップの輝けるヒーローたち。
アルはオレのミュージシャンを見る目を全面的に信頼してくれていた。オレも自分で飛び入り歓迎オープンマイクなんてのを主催してたから、ミュージシャンには顔が広かったんだ。
50年代の始め頃、キャブ・キャロウェイのバンドをやめたあたりから、演奏の機会が減ってきた。ちょうど西海岸のクールジャズなんてのが流行り始めた頃で、そのあおりでニューヨークじゃジャズの店もつぶれたり、食いっぱぐれるミュージシャンも増えてきてたんだ。あのケニー・ドーハムでさえ、一時はエンジニアとして就職してたって言うんだからな。
アルの会社は上り調子だったけど、自分の音楽活動もイマイチだったせいで、なんとなく足が遠のいちまって。ブルーノートに顔を出す機会も減ってきた。
その上。
ただでさえ仕事が減っているのに、そんな時に麻薬に手を出しちゃったんだな。それでダメになったやつ、山ほど見てるのに。アルフレッドは麻薬には厳しい人だったから、余計顔を出しづらくなった。
時々入ってくる演奏仕事や、まあバイトみたいなちょい仕事をするくらいで金だってギリギリだ。いや正直に言えば借金だってしていた。はっきり言って、だいぶ落ちぶれちゃったわけだ。
たまにジャズクラブに顔を出しても、知らないミュージシャンばかりになってたしな。オレもこの凄い音を出している奴が誰か知らないし、向こうも当然、アイク・ケベック?誰?ってことだ。結構キツかったね。
4年くらい超低空飛行を続けた後。やっとの思いでヤク中からも抜け出したある日、町でばったりアルに出会った。1958年の春先のことだ。最近どうしてる?って聞かれて、あのうそのう、なんてモゾモゾしてたら、一発で見破ったんだろうな。お洒落で知られていたオレが、身なりもちゃんとしてなかったし。
「もしよかったら、また、レコーディングしないか?」
「いや、最近あんまり吹いていないし、一緒にやるやつもいない」
金もないヤク中の中年がレギュラーバンドを維持できるほど、世の中甘くない。
当時はブルーノートがバンバン伸びている頃で、とは言っても社員をどかどか入れるほどの儲けがあるわけでもなくて。
「じゃ、ブルーノートの仕事を手伝ってくれないか。やってほしいこと色々あるんだ」
「いいのかい?」別に前もケンカ別れしたわけじゃないけど、少し後ろめたい。
「だってアイクは、なんでも気持ちよくやってくれてたじゃないか」
へえ、そんな風に見てくれてたんだ。
雲間からパッと日が射した。嬉しいじゃないか。オレはまた、アルフレッドと一緒に仕事をすることにしたよ。
自分の演奏もしたいけど、あいつの役に立ちたかったんだ。
今日はここまでです。
快調に行くかと思われたアイク・ケベックのミュージシャン生活。
ヒット曲だって出したのに、気がつけば仕事にあぶれた上にヤク中。
踏んだり蹴ったりです。
でも、ブルーノートレコードのアルフレッド・ライオンと再会して、道は開けるのか?
次回をお楽しみに!
この勝手に妄想ジャズストーリー。
アイク・ケベックさんはよく喋る。僕の妄想の中では、と言うことですけど。
気持ちの中でアイクさんと同化すると、もう色々なことを語り出すのです。書いていて楽しくてしょうがなかった。
世間的には有名ではないアイク・ケベックさんですが、サックスの音色がとても良いのです。もちろん曲もね。
これを読んで聴いてみたいな、と思ってもらえたら最高に嬉しいです。
勝手に妄想ジャズストーリー
①優しさのテナーサックス ハンク・モブレイの物語
②グラントグリーンの物語
【相模の風THEめをと情報】
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料金は当日精算で大丈夫です。
*有料配信
ツイキャスより配信します。
観覧方法は後日お知らせします。
18時30分より開演
映像はアーカイブとして当日より2週間保存しますので、
当日見られない方も後日鑑賞できます。
今年になってたくさんできた新曲の数々と、ライブができない間に練り上げたサウンドとネタ(笑)あなたの耳と体がよろこびます。
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