モブ霊 その2~勝手に妄想ジャズストーリー ハンク・モブレイの物語 | 音楽でよろこびの風を

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よろこび製造所へようこそ!
相模の風THEめをとのダンナ
いしはらとしひろです。

「勝手に妄想ジャズストーリー モブ霊」

昨日は記念すべき第一回目。

いかがでしたか?
一回目の大まかなあらすじは。

【モブ霊 1回目のあらすじ】
僕の家に突然現れた、1950年代、60年代に活躍した、

ジャズテナー奏者ハンク・モブレイさんの霊=モブ霊。
せっかく来てもらったんで、一緒に彼の残したアルバムや

音楽のことを聞くことにしました。
ファンのところにお礼を言いに行くとよろこぶって話を

仲間のミュージシャン霊から聞いたらしくて、

僕のところにも来てくれたわけです。


押しが弱くて気のいいハンクさん。
でも残してくれた音楽は素晴らしい。
彼の傑作「ハンク・モブレイ・クインテット」を聴きながら話をしていました。
モブ霊 その1はこちらから読めます


さて、その続きをどうぞ!第二回目です。


勝手にジャズストーリー
モブ霊 その2
 ~素晴らしいテナー奏者ハンク・モブレイとの会話
いしはらとしひろ 作

「実は僕、ハンクさんの音楽をちゃんと聴く前は少し、偏見を持っていたのです」
「ははぁ、ひょっとして」
「ええ、そのひょっとして、です」
 ハンク・モブレイ=いもテナー説、なるものがあったのです、昔。要するに下手なテナー奏者と思われていた、思っている人がいた、ということなのだ。
 音楽するのに、上手い下手は最重要事項ではないと思っているけれど、人前でプロとしてやって行くには、もちろんある程度の技術や知識は必要。当然ハンクさんであれば、上手いとか下手とかも、プロの中でも高いレベルでの話なのだけれど。
「もちろん、僕より上手いテナー奏者、たくさんいたよ。僕も自分のことが世界一上手いテナー奏者とは思っていなかった」
「僕、早く指が動く、とか、でかい音が出るとか、高い音を絞り出す、とか全然興味がないんですよね」
「ははは、いいこと言ってくれるねえ。でも僕に気を遣わなくたっていいんだよ」
 あの、ハンクさんの生の演奏も聴いたことがなくって、アルバムだって10枚くらいしか聴いていない僕が言うのもなんですが。

 ハンクさんの真ん中へんの魅力って、ありそうでなくて、カッコいいと思うんです」
「真ん中へんの魅力。微妙な表現というか、褒められてんのかそうじゃないのか」
「褒めてるに決まってるじゃないですか。でなきゃアルバムもとっくに売っちゃってますから」
「アルバムを売る。ああ、オソロシイ言葉ですねえ」苦笑いしながらモブレイさんは言う。
「音量もでかすぎず小さすぎず。ハンクさんの音色って基本的には柔らかいと思うんです。ブロウしまくるしか魅力がないような人、僕、好きじゃないですし。
 あと、マイルスやセロニアス・モンクなんかもそうですけど、音の間が気持ちいい人、好きなんですよね」
「そうだね、僕はでかい音でもの凄く早いフィンガリングで、というわけではないからね」
「あと、マイルス・デイヴィスさんもいけないと思いますよ」
「マイルス・・・」少しだけハンクさんの顔が曇る。
 僕のジャズの聴き始めはマイルスでした。もちろん今でも好き。ただ、マイルスがハンク・モブレイに対して語ったことには賛同できないな。

 彼は1961年頃、自分のバンドのメンバーとしてハンクを迎えている。

 しかし、マイルスにとっては満足がいかなかったようで、自伝の中で「ハンクとの演奏はイマイチだった。イマジネーションを刺激されない」などと書かれて、要は散々な言われよう。
「まぁ、僕が死んだ後に言われたのはちょっと悲しかったね」
 そうなのだ。ハンクさんが亡くなったのは1986年。マイルスが自伝の中でハンクさんのことを散々に言ったのが1989年。
「あれはちょっとないですよねえ。マイルスさんに言われたら影響力あるし」
「とはいえ、まぁ、マイルスは確かに凄いし」
「っていうか、ハンクさん気が弱そうだったから、結構びびってたんじゃないですか」
「君も痛いこと言うねえ。でも、帝王だしね」
「マイルスににらまれたら恐そうですよねえ」
「そう、またあのしゃがれ声で言われると怖さ倍増」
「ですよねえ」
「あと、ジョン・コルトレーンの後、というのも正直荷が重かったかな。彼は彼、オレはオレ、個性も音楽性も違うんだし、と思うようにしたけれど、彼が凄かったのも確かだったし」


 でも、これはマイルスのそもそもの人選ミスではないかと思うのです。それまでの音楽の軌跡を見れば、合うわけないよなぁ、という気もする。
「あの頃のマイルスさんって、モード方面に軸足を移しかけていたじゃないですか。でもハンクさん、モードっぽいのって好きじゃないでしょ?」
「うーん、答えに困るところだなぁ。でも、大好きかと言われるとそれも難しいかな」
「少なくとも僕の好きなハンクさんの曲は、割と進行感もはっきりしていて、ということはつまりコード進行に基づいていて、メロもちゃんと立っている、わかりやすいというか。
 マイルスさんは、ハンクさんの抜けた後の、ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックとやっているのを聴けばまるわかりですけど、いわゆるわかりやすい歌もの的なメロディからは遠ざかっていくじゃないですか」
「まぁそうだね。僕も一応モード奏法とかにもチャレンジしたけれど、モードでやるといわゆる進行感とか薄くなるんだよね。スタンダードの甘いメロディなんかをモードでやると、なんかメロディ自体の良さも消えてしまうような気がして」
「ああ、その感じ分かります。僕はモードでできている音楽も嫌いじゃないですが、でも甘い感じのメリハリのあるような曲には、向かない気はします」
「君もそう思うだろ?(笑)僕は俗っぽいメロディも好きだし。元々R&Bのバンドとかにもいたし。まぁ、少しやってみてぴったりこないなぁと思ったのは確かだよね。あと、マイルスとはリズムの感覚もちょっと違っていた」
 ああ、それも分かる気がします。マイルスは参加メンバーに対してはもたるのを嫌うところがある。

 ハンクさんの個性として、もたるまでは行かないけれど、リズムの力点がやや後ろ寄り、という傾向はある。そのちょっとのタメがまた魅力的なんだけれど。
「まぁ、いずれにしても帝王マイルスが当時やりたかった音楽に、僕は少しばかりそぐわなかった。そういうことだよ。仕方ない。それも一緒にやってみなければ分からなかったことだしね」
「やめてよかった?」遠慮のない質問をぶつけてみる。
「いや、そんなんじゃないよ。やっぱりあんな凄いプレイヤーと一緒に音楽を作れた、というのは素晴らしい経験だし、学んだことも多かったよ。

 音楽を一緒に演奏するだけで、メンバー全員を別な空間に連れて行ってしまうんだから。まぁ、つまんないことを言うと『ソーホワット?』とにらまれたけど。いやぁびびるのなんの」
 やっぱりハンクさんは、マイルスには相当しぼられたようだ。でも否定の仕方にも、ハンクさんの人の良さが出ている気がする。
 「でも、マイルス+ハンクの唯一のスタジオアルバム『サムディ・マイプリンス・ウィル・カム』(一部 ジョン・コルトレーンも参加)はトレーンよりも、やっぱりハンクさんの柔らかなプレイの方が、曲には合っていると思いましたけど」


 正直に言うと僕は、常に音数の多いコルトレーンのプレイは好きではないのだ。
 そして少なくともあのアルバムの中では、ハンクの演奏はマイルスにあんな風に書かれるようには聞こえない。僕は好きだ。


「僕はハンクさんの優しい感じの音や曲が好きなんです。あとコテコテすぎないブルース感覚とか。小気味いいリフの作り方とか。ある意味都会的ですよね」
 僕はたとえばジョン・リー・フッカーやエルモア・ジェイムスのようなコテコテブルースの人も大好きだけれど、ハンクさんのようにやや抑えめのブルージーさも大好きなのだ………

 

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