以前、卵を中心に見た生物の進化を紹介したことがある。『卵――その誕生がすべてを変えた』――ジュールズ・ハワード著、平沢達矢監修、喜多直子訳――である。
その後書きとして、私は次のように記した。
「過去三回にわたり、卵という視点から生物の進化を俯瞰してきた。一言で進化と片づけるには、生殖という責務を担う卵の世界は、あまりにも奥深い。自然環境の変化に対して、多様化と共存という戦略を重ねながら生き抜いてきた生物たちの健気さと逞しさに、改めて驚かされた。
現在、地球では温暖化が大きな課題として語られている。しかし生物史を振り返れば、地球はこれまでも幾度となく大規模な環境変動を経験してきた。そのたびに姿を消した種もあれば、新たな環境へ適応した種もあった。今回の変化に対しても、生物たちは長い時間をかけながら、それぞれの方法で向き合っていくのだろう。」
卵そのものは壊れやすく、化石として残りにくい。しかも、生体を保護するという重要な役割を担う、いわば陰の存在でもある。そのため、進化の歴史を考える際には、やや目立ちにくい存在だったのかもしれない。
しかし、卵の進化の過程を追っていくと、そこには細胞の分化や共生とも深く関わる世界が見えてくる。
生命科学という広大な領域を理解するには、一つの視点だけでは不十分なのだろう。卵、細胞、遺伝子、そして生体そのもの。それぞれの角度から生命を眺め直す必要があると感じている。
さて、引き続き読んでいるのが、
『マスター・ビルダー 体は細胞が建設する』(角川書店)――アルフォンソ・マルティネス・アリアス著、佐々木紀子訳、吉森保監修――である。
https://note.com/saekiworld/n/n4f306cb100ed