羅針盤 2025 第四巻
本書は、2025年の一年間に書かれた思考の記録を、新たな視点で再編集したものである。
老い、身体、不安、お金、社会、国家、共生、宗教、死。
これらは本来、切り分けて考えられるものではない。
生活の中では、常に絡み合いながら現れる。
当初は「生命」「健康」「億り人」といった分かりやすい分類で整理してきたが、書き進めるうちに、それだけでは収まりきらない
主題がはっきりしてきた。
そこで本書では、
文章そのものを書き換えるのではなく、
読み取るための枠組みを改めて与えるという方法を選んだ。
本書は、答えを与える本ではない。むしろ、老いの中で人が何を考え、
どこで立ち止まり、どこへ向かおうとしているのかを辿る記録である。
最初から順に読む必要はない。関心のある章から拾い読みしてほしい。
これは完成された思想書ではなく、一人の生活者が世界と折り合いをつけ直していく過程をそのまま残した一冊である。
『社会と国家』
副題:ゆるやかに距離をとるという知恵
社会は、いつも正しい顔をしている。
国家は、いつも必要であるかのように振る舞う。
しかし、その内側にあるものは、必ずしも透明でも、公正でもない。
本巻に収めたエッセーは、
犯罪、国家、家族、経済といった、
私たちが日々関わりながらも、深く考えることを避けがちな領域に触れている。
重要なのは、否定することではない。
盲信することでもない。
少しだけ距離をとり、
少しだけ疑い、
それでもなお関わり続けること。
そのための、小さな視点の揺らぎをここに記す。
第Ⅲ章 社会の中の個人
まえがき
社会問題の多くは、制度として語られる。
しかし、その実態は、極めて個人的な関係の中にある。
家族、介護、親子関係。
そこには正解も、一般解も存在しない。
あるのは、それぞれの事情と、選択の積み重ねだけである。