韓国って、インターネットの取り組みは早かったけど、電子本はいまいち?
●電子書籍 国が支援 (大韓民国2010年9月11日)
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201009110123.html
インターネット普及率の高さから「IT(情報技術)先進国」と呼ばれる韓国。だが、電子書籍に限っては日本より遅れ気味で、i(アイ)Pad(パッド)が未発売など、電子書籍市場をめぐる状況も違う。利益配分や図書館問題など、韓国の出版業界には、日本と共通の課題も見え隠れする。
「鈍い市場 46億円投入」
韓国で販売される書籍の約15%を扱う国内最大の書店チェーン「教保文庫」。その旗艦店とも呼べるソウル市内の江南店は総面積約1万平方メートルで、常時200万冊をそろえる大型書店だ。その一角に電子書籍の巨大ディスプレーが飾られていた。
過去5年間に約7万点を電子書籍化し、販売してきた。金成龍(キム・ソンヨン)代表理事は「来るものは必ず来る。避けられないなら早く始めた方が良いと判断した」と、電子書籍販売に踏み切った理由を語る。本は読まないがデジタルには関心が高い層を、読者として取り込む狙いもある。
しかし、市場拡大の動きは鈍い。ネット書店やチケット販売で有名な韓国最大級のインターネット・ショッピングモール「インターパーク」。年間総売り上げは1兆5千億ウォン(約1079億円)に及ぶ。同社は今年4月、「ネット書店はモールの入り口」と考えて、電子書籍端末「ビスケット」を販売し始めたが、販売は毎月1千台ほどにとどまっている。
iPad待ちの消費者心理や、出版社がヒット作提供に消極的なことが背景にある。それでも、書籍部門の代表、崔大奉(チェ・デボン)氏は「将来は200万人が電子書籍端末を使い始める。その半分を取りたい」と強気だ。
「新設デジタル図書館」
韓国の「2008文化産業白書」(文化体育観光省発行)によれば、韓国の電子書籍の市場規模は09年の予測で1323億ウォン(約95億円)。09年に574億円に達した日本よりはるかに小さいものの、出版業界内には電子書籍への「不安」が広がる。
要因の一つは出版市場の縮小だ。文化体育観光省などの統計によれば、書籍、新聞、雑誌、印刷、流通を含めた市場規模(マンガは除く)は、07~08年で2.5%減少。09年には、新刊発行も点数、部数ともに減少に転じた。電子書籍が新たな縮小要因にならないか、懸念する声は多い。
著者が出版社を通さずに電子書籍を出す「中抜き」への警戒感も強い。大韓出版文化協会の白錫基(ペク・ソッキ)会長は「利益配分も含め、著者、出版社、電子書籍業界の三者で話し合いが必要」と語る。
市場規模は違うが、出版不況や「中抜き」は日本と共通する問題だ。
昨年9月、大手出版社、書店、新聞社などによる共同出資で「韓国ePub」という新会社が生まれた。読者を囲い込まず、すべての端末に電子書籍を提供すると強調するが、曹裕植(チョ・ユシク)CEOは「出版社は保守的で、本音では電子書籍に消極的」とも語る。
しかし、市場拡大をうながす韓国政府は、電子書籍の納本・認証システムの構築、付加価値税免税などの推進策を進めてきた。今年4月には電子出版産業育成法案を発表。5年間で総額635億ウォン(約46億円)を投じ、市場を現在の5倍に拡大する計画だ。
電子書籍推進の柱になるのが昨年、国立中央図書館内に建設されたデジタル図書館「ディブラリー」だ。地上3階、地下5階建てで総面積3万8014平方メートル。デジタル化された所蔵資料や電子書籍を閲覧できる。全国738の公共図書館のうち567カ所と結ばれ、地方からも電子書籍が閲覧できる。地方の公共図書館や地域図書館のハブになり、知識情報の格差を解消することが目的であり、情報過疎地や農山漁村など、約3千カ所の小さな図書館までつなぐ構想がある。
だが、電子書籍の蔵書40万点のうち60%は著作権があるもの。サービス向上が出版業界を圧迫しかねない。大韓出版文化協会の朴益淳(パク・イクスン)事務局長は言う。「電子書籍の納本制度も始まったが、法律は未整備。著作権や出版社の版面権保護は不十分だ。今こそ議論が必要です」。電子書籍をめぐる課題へどんなアプローチをするのか。韓国の状況は日本を映す鏡でもある。

