映画『ホテルローヤル』を観る | さむたいむ2

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今日も元気で

 

昨日久々に映画を観ました。『ホテルローヤル』です。

桜木紫乃の原作を読み、どのように解釈されたのか興味がありました。

監督は武正晴で、彼の作品『百円の恋』『嘘八百』などコメディタッチでありながら、人間の哀しさを巧みに描いています。彼ならたぶん桜木紫乃も安心して任せられたのではなかったか。

 

『ホテルローヤル』は7つの連作短編集です。これをどう組み立てていくか。脚本家の腕の見せどころです。清水友佳子はドラマ『わたし、定時で帰ります。』の脚本を書いたとあとで知りました。また朝ドラ『エール』を書いているひとりです。いま乗りに乗っている作家といえましょう。

 

またこの映画の主演は波瑠ですが、彼女を取りまく脇役が素晴らしい。むしろ脇役たちで作り上げたといっても間違いありません。安田顕が父親で、夏川結衣が母親役です。ラブホテルである「ホテルローヤル」を途中から娘(波瑠)に任せっきりという無責任な両親を見事に演じています。またホテルの利用客として中年夫婦のおやじを正名僕蔵、雨宿りと称して担任と入ってきた女子校生役を伊藤紗莉。そして「えっち屋」(アダルトグッズ)の営業を松山ケンイチ。いや脇役たちのキャラクターにあった演技でこの映画は作られているのです。

 

こうした盛沢山の演出を富貴晴美の音楽が手際よく包み込んでいます。最初はあからさまな音楽が中盤にきて必要不可欠なものとわかります。ホテルの従業員余貴美子の心情を大袈裟ではありますが、その心の動きを如実に表しています。あからさまな音楽とはそのことでむしろ演技の邪魔になるかという瀬戸際なのです。

 

2時間弱の映画が少しも苦痛にならないのです。最近テレビドラマを録画して観ている私は幾度か停止する癖がついています。その私が時間を気にせず見入ったことは、やはり作品の力でしょう。

 

最後に主題歌の『白いページのなかに』を歌うLeojaのやさしい歌声が素敵です。柴田はつみのオリジナルで聴き慣れている私には、まったく新たな歌として心地いい。主演の波瑠は恵まれています。