「ぼけますから、よろしくお願いします。」信友直子 | よさこいの夏

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2023年12月からこちらへ引っ越しました。

Img_20221229_0001 3年前に話題になった本ですが、1年ぐらい前に図書館に予約を入れて、やっと順番が回ってきました。
80代半ばで認知症になった母を自宅で支え続ける90代半ばの父親。
東京でフリーのディレクターとして働きながら、父母を映像で撮り続けた娘・直子さんのエッセイです。
タイトルの「ぼけますから、よろしくお願いします。」は87歳の母親・文子さんがお正月の挨拶で家族に言った言葉だそうです。

 

切なくて、これだけでも泣けてきそうです。
認知症を患った人が、どんな思いで日々を過ごしているのか・・・。
妻がどんな風になろうとも、自分が支えていこうと決めた夫の強さ。
一人娘の直子さんが、大好きだった母親と父親を、どんな思いで支え、またカメラを回し続けたか、細やかに綴られています。
一人娘の生き方を心から応援し、娘がやりたいように仕事を続けて行けるように、応援し続ける両親の姿勢にも感服させられます。
家族であっても、こんなにもお互いを尊重し合い、生き様を応援し続けることは、本当はなかなか難しいことでしょう。
 

 

まして認知症の混乱の真っ只中にいて、時には感情が嵐のように揺れ動き、家族にも当たり散らしてしまうお母さん。認知症は、ただ物忘れがひどくなること以上に、心の嵐に翻弄される姿の方が家族には辛いものだということが改めて分かりました。本人は自分がなんだかおかしくなってきていることがわかっているのです。そのことで家族に迷惑が掛かっていることも分かるから余計にしんどくて辛くて仕方がないのです。

 

私は自分の母をグループホームに入れる前のことをいろいろと思い出してしまいました。
テレビやエアコンや電灯やのスイッチ操作ができなくなり、エアコンは温度の高い低いが逆になってしまいます。
お風呂のボイラーのスイッチも、お湯の温度の高い低いの操作も分からなくなります。
一日に何度もスーパーに行って、さっき買ったものをもう忘れてしまい、同じものばかりを買ってきてしまいます。

介護サービスを受け入れるまでにまたひと悶着あります。
家に他人が入り込むのがイヤだとか、
自分のことは自分でできるだとか・・・。

ホームドクターを決め、病名を診断してもらい、手続きをして、介護認定調査員にきてもらい、
ケアマネージャーを決め、受けたいサービスを決めていく。
この道のりは、本当に覚悟のいる、心の葛藤のある大変な作業です。

母には私がいたからこそなんとかできたし、
信友家には娘の直子さんがいたからこそ、できたことですが、
身寄りのない一人暮らしの人は、いったいどうやって介護サービスを受け入れるところまで進むことができるのでしょう。

両親の心の尊厳を守りながら、なんとかやっと少しずつ前に進む様子がよく分かります。
母を叱ってばかりいた自分を反省せずにはいられませんでした。

 

グループホームに入りたては、私への恨み言ばかりを口にしていた母です。
そんな中でも「幸子に迷惑かけるから仕方ないなあ」と言ってるということをスタッフから聞かされると、
自分の状況を受け入れて、なんとか自分自身を納得させようとしている母が可哀そうでもあり、申し訳なく思えて仕方がなかった。

 

入所して4年が経ちました。
コロナ禍になり、通院時にしか会えなくなった母です。
夏前から歩けなくなり車椅子移動になりました。
すぐに自分でトイレに行けなくなり、オムツになってしまいました。
最近では私のことも分かったり分からなかったりです。
それでも、食べることだけはちゃんと自分でできるようで、
「食べる=生きる」なのだなあと、母を見ると思うのです。

この本を読んで、いろんなことを思い返しました。
映画にもなっているようなので、どこかで機会があれば観てみたいと思います。
家族の絆の強さと脆さが心に刺さる一冊です。