氷の朔日 | sabのゆったり茶館

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佐武と市捕物控といえば、ワタシ的にこのあたりの話を思い出します。





ご存知、石ノ森章太郎の傑作時代劇マンガです。




ワタシのハンドルネームも、ミュータント・サブや、この佐武と市捕物控から来ています。

(本当はサイボーグ009が好きだけど、「ジョー」はカッコよすぎ。佐武は日本的でいいかなと。それなりにカッコイイけどね( ̄▽ ̄)。)




このページの写真は、すべて講談社デジタル版。




佐武と市捕物控は、その根強い人気のせいか、幾度も出版され、コミックスのバージョンは多種雑多。



しかもどれも全話網羅していないという、うれしくない状態。



かく言うワタシも、小学館文庫版、ビッグコミック版、豪華版とバラバラ。しかもコンプリートなし。





そもそも佐武と市捕物控は、いつどの話が掲載されたのか、出版社のサイトをみても、掲載情報がほとんどない。



ビッグコミック掲載号現物を確かめるしかない?





だれか調べてないの?とググってみたら、ありました。




この方の労作リストによると、ワタシが好きだった本話や、晩い夏、などは連載が始まったころの初期作、と分かりました。

(ありがとうございます!)







佐武と市捕物控の何が魅力的かと言えば、その情景描写です。




こうした江戸時代の町並みや、風俗、人々の生活の営みが、淡々と描かれる。




もちろんストーリーは秀逸だし、キャラクターも存在感があって、時代劇、ミステリー、探偵もの、人情噺と、どの分野に納めても優れているとは思いますが、何よりもそのシーンごとの美しさが、印象に残ります。



ワタシだけが、このように場面ごとの情景描写にこだわっているのかと思っていましたが、上記サイトの管理者さまも、佐武と市捕物控はその情景描写が美しいので、文庫版ではなくなるべく大きな判型で、と書かれていて、我が意を強くしました。






ほかにも注目すべきは、そのコマ割り。




市やんが、その盲目にほとほと嫌気がさす過程が、細かなコマ割りで丁寧に描かれます。



特にこの、市やんの斜めプロフィールが少しずつズレて心情を語る場面は、説明の冗長さを避けながら、市やんの苦悩の表情も多角的に描き出す、出色の演出。


続くページも、


市やんと佐武のやりとりを右側3分の1に圧縮し、左側3分の2に広々と雨中の将棋を、実際には室内なんだろうけど雨中に置くことで、二人の心情までも雨天とリンクさせて強調する、絶妙な構成、レイアウトです。





その雨のシーンの延長上に、人の腕をくわえた野良犬が登場。

そのクロースアップの仕方で、若い女の手ということも暗示。



さらに、その手を巡る佐武と市のやり取りも、

横に細長いコマ割りの連続で、しかも右と左の交互配置で、まるでドラマの切り替えシーンのように、ストーリーを説明しつつ謎解きが展開する。





こうしたコマ割りの妙で繰り出されるストーリー展開が素晴らしい。






その上、要所要所に配される、写真のコピーを駆使したような、リアルな建物や自然の描写が、リアリティを添えると同時に、えもいわれぬ日本的情緒をかもしだす。



これは単なる捕物時代劇ではない、いわゆる劇画なんだけれども、その情緒性と情景描写の美しさで、ゴルゴ13に匹敵するけれども、それとは全く異なる世界を創始したと、言えるのではないでしょうか。






何度でも読み返したく理由は、そんなところかなと思います。



(^_^)☆