サンドバック社員 1 からの続きです。
新入社員G君の面接のとき、私の第一印象は
「これはまた随分な子だな…」でした。
背が低く痩せた体型で、突飛ばしたら簡単に向こうの壁まで吹っ飛びそうな貧弱さでした。
椅子をすすめても、オドオドしていて
「さっさと座って!」と突っ込みたくなるような愚鈍さです。
表情は不細工どころか、知能に疑問を持たれるような顔で
「悪気はないです、攻撃しないでください」と最初から謝っているような卑屈な笑いを浮かべていました。
「何か夢中になっていることはありますか?」
私が質問すると
「す、すい、水族館が、す、好きです」
「へぇ、どこの水族館が良いですか?」
「き、近所の、近所のトコのです」
G君の声は高く細く、喉が絞られた喋り方で
「ワレワレハウチュウジンダ…」
の宇宙人の声そっくりでした。
その後もとりとめのない質問をする私を、一緒に面接していた人事部長は
「???なぜ食いつく?」という顔をして何度も見つめてきました。
G君には彼女どころか友達すらいないのは一目瞭然でした。
私も嫌われ者で友達なんかいません。
触れ合う孤独の魂が万有引力のように私たちを結び付けた…
わけではなく、全然別の理由で私はG君の採用を決定しました。
続きます。