じこ報告書 -41ページ目

ランチにて

中華料理店で、一人昼食をとる。

常連と思われる30近い女が、オレの少し後に入ってきた。
女は饒舌な口調で注文を重ねる。

注文後、女はブツブツと独り言を呟きながら何かに納得し始めていた。
その姿に、オレは近付いてはいけないオーラを感じとる。





「あのー」

まさかのアクション。
どうやら、声をかけられたようだ。エビチリを食べているオレは、完全に不意をつかれる。

熱々の海老を飲み込むと、臨戦体制に入った。





「煙草を吸ってもよろしいですか?」

あぁ…また、人を見かけで判断してしまった。
こうやって聞いてくれる人なんて、最後に出会ったのはいつのことだろう。

オレ自身は煙草を吸わないし、喉が悪い為吸ってる人の傍にも基本的には寄らない。

しかし、今回は実に気持ち良く答えさせてもらった。

「どうぞどうぞ」

女は笑顔で「すいません」と言うと、静かに煙草の煙をくゆらせた。



相変わらず、一人呟きながら海鮮鍋を食べる女。
隣で一人餃子を食べる男。
店内は穏やかな空気が流れていた。