じこ報告書 -38ページ目

凍る

職場に近い土地に移った結果、
就業開始15分前に出れば、定刻に間に合う生活を手にした。

早番の今日も、さほど変わらない感覚で、開始20分前に家を出る。

数分後、凍りつく体験をすることになろうとは思いもよらずに。



少し離れた駐車場まで軽く走る。
相変わらずの寒さに、吐き出す息も一層白くなったようにさえ感じる。

車の鍵を開け、何の気無しにエンジンに手を伸ばす。
そこで見た光景…

そこで見た光景…

一面の銀世界。

正確には、フロントガラスいっぱいに、これでもかと広がる氷の結晶。



その幻想たる眺めは、オレの心をしばし日常から引き離しウットリとさせる。
しかし、直後に文字通り冷たい現実を突き付けるのだった。

間に合わない。

焦る気持ちとは裏腹に、車はなかなか温まらない。
家に戻ってお湯を沸かす時間は既にない。

ウォッシャー液が使えることを確認すると、ワイパー共々フル活用しながら何とか氷を溶かす。

祈るように溶かす。
温まらないながらも、送風をあてながら溶かすように祈る。

溶かる。
むしろ、祈す。





…何とか開始時刻2、3分前、同僚と朝の挨拶を交わしたオレは、心の底から安堵の溜め息を漏らし、今日のファインプレーを素直に讃えた。

制服を家から着込んできて本当に正解だった。



だって、寒いし…
面倒臭いんだもの…