じこ報告書 -29ページ目

鬼がいた。

そこに鬼がいた。





施設行事『節分会』
司会のオレは、鬼の面をつけてこの任務に挑む。

愛嬌を振り撒きながら、トークを交えてボランティアの演舞を観賞する。

締めに行うは利用者たちによる豆まき。
やはり、これがないと節分という気はしない。

数名の鬼役の職員とともに、体いっぱいに豆打ちをされる。
利用者が喜んでくれるなら、全くもって痛みなど感じはしない。





一人の鬼が、突然こちらを向いた。
面をつけているはずなのに、その表情は心なしか悪い顔をしているように見える。

…何故、鬼が何かを握りしめているのだろう?

…何故、鬼がこっちを見て振りかぶっているのだろう?





そこに鬼はいた。

鬼の面をかぶった鬼がいた。

そこに鬼はいた。

「鬼ー!」と叫びながら走り去る鬼もいた。