じこ報告書 -31ページ目

捜索願

鮭は産卵をするために、大海原を巡ったあと自らの出生の地に戻ってくるという。

しかし、肝心の川が汚い場合、彼らは愛する地に戻ってくることが出来ない。
とかく、無念で心を傷めていることだろう。



産まれてこの方29年。
オレから離れ、旅立っていった心の友たち。
自腹を切って別れを告げた愛息子たち。

彼らは世間の荒波に揉まれ、人から人へと大海を泳いで行く。
そして、数年後、数十年後には、オレの手元へ懐へ、ちゃんと戻って…

戻って…



戻って…



来ない。



金は天下のまわりもの。
オレはいつでも彼らの帰りを待っている。
しかし、彼らは行ったきり帰って来ない。

オレが汚いから戻って来ないのか…?

そんなことは一切考えずに、ただ帰りを待っている。