「おまえの真っすぐ過ぎなところとか、真面目過ぎなところとか、なのにどこか真逆なところとか、…そういうの全部ひっくるめて俺はおまえのことが好きだから」
潤さんに出会って、そして一緒に暮らすようになって、潤さんのことを凄く好きになって。
だけどどうしたって自分に自信が持てない日々を過ごしていて。
苦しくて、もがいてばかりいる俺に潤さんが言ってくれた言葉だった。
俺は、そんな潤さんの気遣いにすげぇ安心したのを昨日のことのように覚えてる。
潤さんはきっと、良くも悪くもあの頃と変わってない。
だからこそ不安でもあって。
そう、気持ちをどんどん膨らませてしまう俺に、潤さんはいつしか嫌気がさしてしまうんじゃないかって。
「翔」
「潤さん」
潤さんの手が、腿の上で拳を握っていた俺の手にそっと触れる。
相も変わらずアーモンド型に縁どられた綺麗な瞳が、真っすぐに俺を見つめていた。
潤さん、怖いんだ。
あんたのその底なし沼みたいに人を惹きつける魅力に溺れてしまいそうで。
そして気が付けば、死んだことに気が付いていないゾンビのように、いつしかあんたを傷付けてしまいそうで。
だけどあんたはきっと、それでもいいよって笑って言うんだよな。
俺にだったら殺されたっていいって。
そして、その後もゾンビとして一緒に生きていけばいいじゃんって。
俺の悩みなんて、自分で思っているよりきっとちっぽけなものに過ぎない。
この人と一緒にいれば、段々とそんな気持ちになっていくんだから不思議だ。
互いの唇と唇が、あと数ミリで触れる。
そんな時。
「潤~~~~~!車があったからいるんだと思って来たのよ!今日仕事お休み!?」
潤さんの部屋の扉が開くのと同時にそんな豪快な声が響いて、その瞬間俺と潤さんはめちゃくちゃ不自然に跳ねた。
***
「ごめんな」
「うん?」
「あれからずっとあんな感じで」
「いや、なんだかんだ楽しかったよ」
再び潤さんの運転する車に乗り込むとすぐに、潤さんはそう言って申し訳なさそうに小さく頭を下げた。
ほぼ網羅したんじゃないかというぐらい、潤さんの親戚や近所の人たちが次から次へと押し寄せて、そん時の潤さんの困ったような顔と、来客のテンションの高さの落差が激しくて。
だって潤さんって常に冷静っていうか、どっちかというと”陰”な感じなのに、潤さんの周りはみんなそれとは真逆で”陽”って感じで朗らかで、そのギャップが面白くて。
思わぬ一面を見られたことに、ちょっと気分までホクホクしてる。
「実は日本に戻ってきてからずっとあんな感じでさ」
「うん?」
「今後はおまえと一緒に住むからそれまでの繋ぎのつもりで実家に戻ってたんだけど、周りはそれが嬉しかったみたいで…。飽きもせずあんな感じでひっきりなしにうちに来るんだよ」
「そうなんだ?」
「だからなかなかおまえにも連絡できなくて…マジでごめん」
「そう……だったんだ」
潤さんから連絡が来ないのは、俺への気持ちがないからだって勝手に決めつけて。
それで気持ちを量ろうとして俺からも連絡を絶ってて。
勝手に絶望して勝手に落胆して。
はぁ……、俺ってばマジで駄目なやつ。
「あ、そうだ。翔……一緒に住むって話だけどさ」
「うん?」
「おまえが嫌なら別に俺は、」
「住む!」
「え?」
「住むよ!当たり前じゃん、そういう約束だったじゃん!」
「いや、そう……だけど、おまえ乗り気じゃなかったんじゃ」
「そんな訳ねぇじゃん!」
「いや、それなら……いいんだけど」
とりあえず潤さんと別れたらソッコーで事務所に確認しようと心に決めた。
マジで……我ながら単純な男だな俺は。

さっしープロデュースのコスメがめちゃめちゃ気になってる