潤さん。
俺は潤さんが俺を想ってくれてるよりも、もっともっと深くあんたのことを。
なんて…俺の想いがこんな激重だって知ったらきっとドン引きだよな。
ただでさえどうにもならない年の差がある。
それだけでも潤さんはとてつもなく譲歩してくれていると思う。
それなのに「好きの大きさの相違」なんてクソつまんねぇことで彼を困らせ、挙句にこんな顔までさせて、しかも久々に会えたこんな晴天の日に……マジで俺ってば恋人失格だよ。
だけどさ、あんたに釣り合う恋人になる…なんて、やっぱりガキすぎる俺には少し難しい。
だってただ好きなだけじゃ…駄目なんだろ?
「おまえは、どうしたいの」
「どう…って、」
「もう一緒に住むのやめるか?」
「い、、、」
嫌だ。
無意識にそんな言葉が洩れそうになって、慌てて塞ぎ込んだ。
俺と一緒に暮らそうって言ってくれたこと。
俺と生活を共にしたいって思ってくれたこと。
すげぇ嬉しかったし、すげぇ楽しみにしてた。
だけど…。
だけど…。
こんな気持ちのまま流されてしまったら、
”自滅だけはしないでくださいね?"
きっといつかそうなる自分が容易に想像できる。
暫くの間、嫌だとも良いとも言わないどっちつかずの俺を急かすこともせず、潤さんは黙ってハンドルを握り続けていた。
ひたすら流れる沈黙の時間は、想像していたより遥かに息苦しい。
かといって、なにもなかったかのようになんて今さら出来るはずもない。
ようやく海の見渡せるパーキングに車を停車した潤さんは、シュルシュルとシートベルトを外しハンドルを覆うようにしてそこに身をもたれかけた。
「ごめんな」
は?
思ってもみなかった潤さんからの謝罪に、
「なにが、」
思わず声が震える。
だってどうして、謝るのは俺の方じゃん。
どう考えたって、うだうだしている自分が悪い。
「俺じゃ、ちっともおまえの力になれてないよな」
「潤さ、」
「おまえが悩んでる理由も分からないし、きっと分かったところで…だよな」
「それは」
「頼りない恋人でごめん」
そう言って苦笑いする潤さんの声も少し震えてて、ぎゅうっと胸が締め付けられるように痛んだ。
違うよ、違う。
俺は潤さんに、こんなことを言わせたかったわけじゃない。
「潤さん」
「うん?」
「潤さんは、俺が好き?」
「好きだよ?」
なんだよ、即答かよ。
ちょっとは悩めよ。
じゃないと今俺が悩んでいることが、とてつもなくちっぽけなものに感じちゃうじゃんかよ。
「そうだ。これからちょっと連れて行きたいとこあるんだけどいい?」
「連れて行きたいとこ?」
潤さんは楽しそうに波打ち際ではしゃぐ人達を眺めながら、
「うん」
と、一つだけ頷いた。