あれから潤さんからの連絡はさっぱりで。
けれどここまで意地を貫いて潤さんからの連絡を待っていた俺だから、そこはやっぱり最後まで彼からの連絡を待ちたい…そう思ってしまう。
とはいえ、まさかこのまま自然消滅…だなんてことはないと思うけど。
え?
まさか…だよな?
俺と俺の誕生日をこっちで一緒に過ごせて舞い上がる俺をあっさりと残してアメリカに戻っていった潤さん。(まぁ仕事なんだから仕方ねぇけど)
それから再度帰国するまでの二週間のあいだに…あっちでいいやつ作ってたりとか……まさかしてねぇよな?
だって潤さんって誰から見たって容姿端麗だし。
そのうえ仕事の腕もさることながら、料理だって洗濯だって掃除だって…なんでもソツなくこなせる人でもあって。
そんな出来すぎた人を、一体誰が放っておくというのか。
バカだ。
俺の考えが浅はかだった。
そうだよ、潤さんはモテるんだよ。
誰もが潤さんに対して憧れを抱く。
俺だってその他大勢の一人で、たまたま家に置いてもらえたのが功を奏して想いを通わせることができたってだけ。
ただでさえガキンチョでなんの取り柄もない俺に、そもそも潤さんのことを繋ぎ止めておけるはずもない。
そんな自信なんて一欠片もない俺のために、俺は彼の気持ちを確かめようとして無謀な策を講じていたわけだけど…だけど当然だよな。
現実、潤さんからの連絡なんて待っても待っても、うんともすんともで。
つまり悔しいけれど、これが答え。
時間が経てば経つほどに、彼が俺を必要とする可能性なんて低くなっていってるだけ。
「いつだって本気なのは……俺だけ、か……」
それでも易々と彼を手放す訳にはいかない。
仮に彼が俺から離れていこうとしたって、絶対に全力で止めてやる。
"今なにしてる?"
あれほど頑なに連絡することを拒んでいたというのに、あっさりとそんな言葉を送信する俺。
だけど以外にもそのメッセージにはすぐに既読のマークが付いて、
"持ち帰った仕事してたとこ。久しぶり"
そんな返事が届いた。
たったこれだけのことでなんでかすげぇ感動して……やば、すげぇ逢いたい。
できることなら今すぐ。
"久しぶり、家でも仕事してんの?じゃあ今夜は忙しいか"
"どうした?なんかあった?"
どうした?じゃねぇよ。
なんかあったとしたらそれは、あんたが俺を放っておいたことだ。
それにやっぱり彼の文面からは……余裕しか感じ取れない。
-逢いたい-
そう打ち込んだ指がピタリと止まり、送信ボタンを押していいのかどうか、躊躇する。
『潤さんって俺が言えばなんでも融通してくれるけど、なんかそればっかっていうか…、』
あの時の自分の声が脳裏に蘇った。
そうだ。
潤さんは俺が逢いたいと言えばきっと、仕事で忙しくても今から逢おうと言ってくれる。
だけどそれじゃ、虚しいだけじゃないか。
それで幸せだって、本当にいえるのか?
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