瀬尾まいこ 『幸福な食卓』 | 流れに任せて雑然と

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日々の出来事や読書について、雑然と綴っていきます。

またしても初挑戦の作家さん。この方もヒット作、たくさん出している印象がある。


中でも有名な作品『幸福な食卓』を読んでみた。映画化もされているそうな。



これ、「文章は平易で読みやすいけど、中身は深い」っていうやつですね。


一見、「ほのぼの系」で、「家族って大事だね」っていうメッセージが込められた、ありがちな小説かとも読める。


でも、そういうのとは違うと僕は思った。


一言で示せば、「役割って何だろう?」という疑問を追っかけ続ける話かな。



書き出しの一文が、「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」という、父親の言葉から始まる。それがまさに、作品全体に通じるテーマを示している。


ここで言っているのは、「父さんという役割」のことだ。


父親は教師という仕事を辞め、フリーター兼浪人生になる。小説が進むにつれて、この家族の異質さが徐々に開示され、はたから見ればおかしいのだが、家族自身は受け入れている。


父親が自殺未遂をはかり、それがきっかけで母親は精神的に追い込まれ、最終的には家を出た。それでも母親は毎日のようにやってきては家事をして帰っていく。


兄・直は、勉強もスポーツも抜きん出てできる天才。音楽だけは苦手で(好きだけど)、性格的にはいつも穏やかで前向き。飛び抜けた優等生でありながら、大学進学をせず、無農薬の農業をやっている。


そして主人公・佐和子。彼女は最も普通感がある人。。。こういう設定の家族が中心のストーリー。佐和子が中学から高校ぐらいまでの数年間を描いている。


事実だけを見れば、既にこの家族は破たんしている。「家族」として当然と思われる役割が、果たせていない。母は家を出て、父も父を辞めた。兄は優等生を辞めた。


じゃあ、この家族が不幸なのだろうか?佐和子はわずかにそういう疑問を持ちつつも、それは違うと認識している。


「本来的な家族という役割を果たしていないこと=家族は破たんしている」という図式は成り立つのか??


何かそういうことを、佐和子を通してずっと考え続ける話だったように思う。


最後の方に、凄く凄く悲しいエピソードがあって、そこでこの「役割を巡るお話」は結末を迎える。結局、「役割」というカタチはそれほど重要ではなくて、家族であり恋人であり、自分が心から寄り添える人がいることが大事なんだ・・・そういう結論か。


役割を果たせば家族は成立するのではなく、役割が果たせなくても家族はやっぱり家族・・・。



人はみんな、自分の役割っていうのに敏感だと思う。家族であったり友人関係であったり、所属している組織の中で、自分の役割を考え、それに沿った行動をしようとする。


ただ、本当にそれが大事なんだろうか。そうしないと破たんするんだろうか。


そんな表面上の問題ではないところに、本当の関係性があるんじゃないだろうか。



とまあ、いろいろと考えることができたのです。



読みやすいのに、とても深い小説だと思うが、そこまで深読みしようとしなくても、登場人物も魅力的で、どんどん読み進む良い作品。


年齢層によって、いろんな読み方がありそうで、それもまた良いところ。


食卓がタイトルにあるように、食事に関係する描写も多く、また小道具として効いているので、その辺も見どころの一つかな。。。


北乃きいさんが主演という映画も是非チェックしよう!!



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