

山尾しおり「公認取り消し」の真相
「今回参議院の選挙、突然いろんな政党が『日本人ファースト』だとか、私の古巣の国民民主も『日本人の税金は日本人の政策に使う』とか『保守しぐさ』を始めています」
7月8日、新橋駅で演説をした山尾しおり元衆議院議員はこう語り、古巣の国民民主党を批判した。
山尾氏は国民民主党から全国比例での公認が内定していながら、一方的に取り消された。「記者会見で説明させろ」という声に押されて山尾氏に会見を開かせた挙句、その翌日に公認を取り消すというやり方には、国民民主党や代表の玉木雄一郎氏に対しても批判が集まった。
玉木代表は6月11日の記者会見で「過去様々なこともあったが、どんな人にもチャンスを与えるというのが私たちの政治姿勢だった。だが正直、有権者や支援者から十分な理解と信頼が得られないと判断した」と語った。
そして、山尾氏は公示2日前に東京選挙区から無所属での出馬を表明した。東京選挙区で2議席獲得を目指し、2人の候補者を擁立した国民民主党にとっては大きな脅威となっている。
その山尾氏の公認取り消しをめぐって、新たな疑惑が生じている。
玉木氏は山尾氏を公認する際、Xにこう投稿していた。
「国民民主党としていかなる基準で候補者を選定しているのか、その基準を明示し、党員・サポーターや国民の皆様と広く共有しておくことが、党としての意思決定の透明性や党のガバナンス観点から重要と考え、参院選の候補予定者として公認決定する場合の確認書を公表します」
公表された確認書には、「組織人として、党として合意した事項について反する行動は取らない。国会議員に当選後、万が一国民民主党を離れる場合は議席を返上する」、「エネルギー安全保障の観点から原子力発電の必要性を認め、議論をすすめる」など3項目があった。
玉木代表が示した確認書には「裏面」があった!
ところが、このような証言もある。
「実は確認書には裏面もあったんです。それなのに玉木さんがそのことは言わないままなのは、いくら何でもひどいのではないか」
こう語るのは山尾陣営の関係者だ。
今回、本誌はその確認書を入手した。そこには参院選において国民民主党から公認を受けるにあたり締結した覚書が書かれていた。
特に異様なのは第3条だ。
「乙(山尾氏)は愛知県第7区(以下「7区」という。)から3期にわたり衆議院に送り出していただいたが、その後離れるに至った経緯等を踏まえ、以下を確約する。
①愛知県内に選挙事務所ならびに後援会事務所を設置しない。
②7区内の名簿を使用せず、7区内の関係者に協力依頼や働きかけをしない。関係者は、公職者・党員・サポーター、連合愛知に加盟する産業別労働組合、組合役員OB・OGのことである。
③愛知県での記者会見、在愛知県のメディア等への出演、個別の取材依頼等には、一切応じない。
④愛知県内で行われる党公認候補の集会や個人演説会等には、参加しない。
前出の関係者が憤る。
「全国比例で公認したにも関わらず『愛知県には入るな』『愛知県には関わるな』という約束をさせるというのはめちゃくちゃです。これは一部で報道されていたように愛知県選出の伊藤孝恵参院議員の意向が強く反映されているようです。そんないち議員の理不尽な主張がまかり通るなんて、国民民主党のガバナンスはどうなってるのかと疑問を持たずにいられません。それでも山尾さんはこの理不尽な要求を飲み込んで公認となったのに、公示直前でハシゴを外されたわけです」
「山尾は愛知県には立ち入るな!」
山尾氏の公認取り消し後、山尾氏から党の対応を批判する声明が出されると、玉木氏はXに次のように投稿した。
「今回の件では、私は当事者でもあります。より客観的に、私に対する忖度なくあるべき姿を模索するため、浅野さとし青年局長にガバナンスコードの導入検討を指示しました。指摘された内容を無駄にするつもりはありません。何より期待された政策を実現するため、足下のガバナンスを見つめ直し、強化を図っていきたいと思います。大変反省しています」
だが、なぜこの文書にあるような理解に苦しむ要求を山尾氏にしたのか。まさか本当に「一議員の伊藤孝恵氏が強く要求したから」なのか。そこまで踏み込んだ説明をしない限りはガバナンスがある政党とは言えないだろう。
