奏一郎に続いて、涼の運転する自転車は安定して将斗を目的地に運んだ。
学校から北へ1キロほど。
緑が色濃く、港からの湿った風がさらに強くなった。
右手にたくさんの蕾をもったバラたちに出迎えられ、安全に自転車は停止した。
横浜、港の見える丘公園。
山下公園と並んで横浜市の観光地の公園のひとつで、横浜港を見下ろせる高台にある。
横浜のエキゾチックなイメージを代表する山手の丘の海側の顔ともいわれ、ベイブリッジを望める絶好のロケーションだ。
自転車からおりて、将斗は遅れまいと奏一郎と涼に続いた。
小高くなっている丘へ向かう坂道を歩いていると、潮風にのって優しい音色が流れてきた。
丁寧に奏でられるその音は、まるで音符たちがダンスを踊って行進してくるかのようだ。
自然に優しい笑みが零れる。
そんな将斗に涼が気がついて、後ろを振り返り、微笑した。
「長い春休み、おわっちゃうね。」
涼の茶化す声に、
「な。ざーんねん。」
少し距離があるが、良く通る深みのある低音は、将斗まで届いた。
優しい音色が止まる。
夕日の逆光が、隼とギターをオレンジ色に染めた。
「隼先輩!すいま…」
案外、いつもの調子の隼の様子に一瞬安堵したが、
慌てて謝ろうとした将斗をわかっていた様に隼は途中でやんわりとかわした。
見かねて、涼が口をひらく。
「バラード?いいね。」
「ん~、アレンジがあともうちょっとな。」
慣れた手つきでギターを構える隼の姿は、さながらプロのミュージシャンだ。
いや、その気になれば、隼なら可能かもしれない。
将斗は本気で思っていた。
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