港から吹く湿った風が、前髪をゆらした。
おかの まさと
岡野 将斗は屋上の柵に寄り掛かって、尚も開発が続く本牧埠頭を眺め見ている。
本牧埠頭は、日本有数の国際貿易港だ。
コンテナターミナルとしては、横浜港内で最大級の規模と施設を誇る。
大黒埠頭まで伸びる蛇のような道は、横浜のシンボルの横浜ベイブリッジだ。
「入学早々さぼりか。」
後ろから深みのある低音が聞こえた。
張り上げたわけではないのに、存在感の大きさを物語るかのようなよく通る声だ。
皮肉を込めた嘲笑の中に温かみがある。
振り返らなくともわかる。
「水知先輩。」
アッシュグレーのストレートな髪は、いつ見ても整えられていた。
制服は着崩しているくせに、全体的にお洒落に気を配っていることがわかる。
制服のそれすらも演出のように思える。
いや、本人はいたって自然体で、性格からしても格好良く見せたくてわざとしているようには思えない。
みずち はやと
自然に格好良さを醸し出す、水知 隼。
将斗の中学時代の先輩だ。
隼流の入学祝いの言葉に、
「先輩こそ。こんなところで何してるんですか。」
将斗は薄い唇の端をあげた。
揚げ足をとったつもりで勝ち誇った顔をしたが、隼はいたずらな笑みを浮かべた。
クールな表情を一変させた少年のような隼を見て、いやな予感がした。
隼はいつも将斗の一枚も二枚もうわてだった。
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