(あれは誰だったんだろう…)
顔はよく見えなかったけれど、背が高く均整のとれた体に細い指。
かすかな風にも揺れるさらっとした髪。
目を奪われたのも一瞬のこと、はっと思い出して声をかけてしまった。
『あの、すみません、体育館ってこっちでいいですか』
逆光から振り向いたその人物は小さくうなずいたようだったが、すぐにきびすを返して行ってしまった。
***
入学式が終わり、教室についた頃には12時を回っていた。
出席番号順に座るので自動的に仁菜は、窓側の一番前だった。
しばらくすると担任が入ってきて事務的に今後の予定を話し始めた。
20代半ばくらいの黒ぶち眼鏡にあまり容姿に無頓着そうなどこか垢抜けない印象を受ける。
「ちょっと、期待してなのにな。ざんねん。ちぇっ。」
ぼんやりとして一瞬、声に出してしまったのかと、どきっとして後ろを振り向く。
「あれ?同じこと思った?」
薄く化粧はしているが大人びた顔立ちをした女の子が人懐っこい笑顔で話しかけてきた。
「あたし、川北 真衣。なんて名前?」
「い、市浦仁菜」
「市浦さんね、よろしく」
「そこ、静かに。残念っていうならこれから1年間、ガキの面倒みなきゃいけない俺のほうが残念だ。
それじゃあ、今日は、自己紹介でもして解散にするか。じゃ、市浦から。」
冗談が含んだ物言いに微妙に笑いがおきつつ、仁菜を促す。
いくつになっても、人前で自己紹介というが苦手だった。
多少声が裏返りながら、名前と出身校を言ってさっさと座った。
その後に続いて間単に個性を披露しながら各々自己紹介していく。
「次ー、岡野。? 岡野はいないのか?」一番後ろの席がぽっかり空いている。
「せんせー。岡野くんは、さっき帰りましたよー。」他の生徒から声があがる。
「何だ?早速サボりか?」
入学式から大胆な人もいるなぁと仁菜は思いつつ、その時は気にも留めなかった。
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