「別に、何も。1人でぼーっとしたいときにここに来るんだよ」
将斗と同じように柵に寄りかかり、空を見上げる。同性の自分から見ても整っている、かっこいい人だ。
「おまえこそ、いいのかよ?入学早々こんなところで油売ってて」
「どうせ、自己紹介か何かやって今日は帰宅でしょ。いてもいなくても同じですよ」
これから毎日顔を合わすんだし、と付け足す。
別に嫌々進学した訳だけじゃない。ただ、どうしてもこういったイベント事が苦手でついつい避けてしまうのだ。そう言うと隼は不意を突かれたように目を瞠って笑った。
「相変わらずだなあ、本当に。将斗らしいけどね」
中学時代からかわいがってもらっただけに何を言われても素直に受け取れてしまう。
まるでインプリンティングのようだ。
雛が、一番初めに見たものを親だと覚えこんでしまう現象を、印刷されたかのようだという意味で名付けられた刷り込み、imprinting。
将斗は雛の自分が、隼を追っている姿を想像して思わず失笑してしまった。
そこで、はたっと気がついた。
隣では相変わらず少年のような笑顔を見せる隼。
隼の後ろでは、部活動に勤しむ在校生が校庭を占拠していた。
屋上に来るまでに、在校生らしき生徒とはすれ違わなかった。
「先輩って後輩思いなんですね。」
「だろ。」
ようやく気がついたのか。との含み笑い。
つまり、部活のない生徒はまだ春休みということだ。
隼の尖った顎がしゃくられた。
やはりこの人には勝てない。と将斗は改めて思った。
いつも将斗の行動の先の先まで読んでいる。
「で、何すればいんですか。」
「お。成長したね。」
親が雛を愛でるように、隼は将斗の頭を軽く叩いた。
将斗はゆっくり前を進む隼の後を追った。
まるで、雛が親を追いかけるように。
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